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百花繚乱~一日一作短編集~  作者: 飛鳥井 作太


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微睡みを抱いて思い付く(歳の差薔薇。年上×年下。菓子職人×元塾講師。トーリー×颯太)

「颯太《そうた》さん」

「はい?」

「ちょっと来て下さい」

 晩ごはんのあと。

 洗いものを終えて居間に戻ると、ちょいちょいとトーリーさんに呼ばれた。

 彼は、居間の机にメモやタブレットを並べ、新作レシピを考えているところだった。

 ……邪魔になるといけないから、お茶を差し入れたら、もうシャワーを浴びて先に寝室へ行っておこう。

 そんなことを考えつつ、傍へ寄ると。

「わっ」

 優しく、けれど強くぐいっと引き寄せられ、腕の中に囲われた。

「トーリーさん……?」

「じゅうでん、じゅうでんです」

 はふー……と気の抜けた声が、頭の上から聞こえる。

 すり、と頬を寄せられる感触。

 トーリーさんから薫る、焼き菓子の甘い匂い。

「颯太さん」

「何でしょう?」

「このあと、おひまですか?」

「そうですね……あとは、シャワーを浴びて寝るだけですね」

「読みたいご本などは」

「特にないです」

「では」

 ぎゅ、と抱き込む力がまた強くなる。

「こよいは、ちょっとこうして私のおまもりになってくれませんか」

「おまもり、ですか?」

「はい。名案をおもいつくための、おまもりです」

 ダメですか……?

 ちょっと身体を離して、顔を覗き込まれる。

 眉尻の下がった顔は、十も年上なのに、可愛く見えて仕方ない。

「いいですよ」

「! ありがとうございます!」

 パッとトーリーさんの顔が華やぐ。

 すると、部屋の中の明るさが一段上がったように感じるのだから、僕もたいがい末期だと思う。

「それでは!」

 彼は、僕を抱えたまま、鼻歌まじりにタブレットをいじり始めた。

 ごり、とたまに顎で僕の頭をマッサージする。

 僕は彼の温もりに包まれ、うとうとと微睡《まどろ》みながら。

(こんな僕をお守りにするなんて……トーリーさんもたいがいだよね……)

 そう思った。

 くすぐったく、甘い微睡みだった。


 END.



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