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言葉選びのやさしいあなた(百合。同棲中)
「……熱出してるやつがなーにやってんの」
「詩織……おかえりぃ……」
振り返ると、サッシを開けた詩織が立っていた。眉を吊り上げ、怖い顔をしている。
「買い物ありがとー……」
「いいからほら、さっさと中入る! そんなフラフラでベランダ居たら、落っこちちゃうよ」
「うんー……」
ぐいと引っ張られ、位置を交換。せめて、お洗濯ものくらい手伝いたかったんだけどな。……駄目だ。私、役立たずだ。せっかくのお休み。熱なんか出して。予定潰して。本当、駄目。
ああもう。顔も思考も、どんどん下がって──……
ぽん
と。
優しい手が、頭に置かれる。
「風邪っぴきは、寝るのが仕事! はい、さくさく仕事行く!」
顔を上げると、やさしい目をした詩織と目が合った。
ふわ、と心に風が吹く。
「詩織」
あたたかな涙で視界が滲む。
「ありがとね」
詩織はニカッと笑って言った。
「お安い御用だ」
END.




