出逢って六度目の春(百合。全寮制の中高一貫校。後輩×先輩)
二月。寮の個室にて。
積み上げた段ボールを尻目に、スマホを睨みつける。
発表の時間から暫く、なかなかサイトに繋がらない。
回線が混み合っているのだろう。仕方ない。
じれじれとした気持ちを募らせ、繋がるのを待つ。
と。
ぱっと切り変わった画面。そこに書かれた内容を確認して、息を吐く。
別のアプリを起動、恋人に電話をかける。
『もしもし、ひーくん? どったの?』
こちらはすぐに繋がった。自然と口角が上がる。
「……今日、合格発表」
『あ! そっか。もうそんな時期か!』
それから。
『ど、どうだった……?』
電話口のトーンが、少し下がった。内緒話でもするかのように。
こちらよりも緊張してるじゃないか。
可笑しくて、思わず「くっ」と笑いが漏れた。
「合格してなきゃ、連絡しない」
『そーれもそうか!』
あはは、と気の抜けた笑い声が耳を擽る。心地好くて、また頬が緩む。
『いやー、おめでとう! 春からまた一緒だ』
そう、やっとまた一緒になれる。離れていたこの一年、どれほど長く感じたことか。
喜びはひとしおだが、ほんの少し過ぎった不安がある。
「……嬉しいか?」
果たして年上の恋人は、追い掛けて来られることをどう思っているのか。
以前、同じ学校を受けると伝えたときには「楽しみにしてる」と笑っていたけれど。
心臓が嫌な音を立てた。が。
『嬉しいに決まってるっしょ』
そんな疑心暗鬼を笑い飛ばすよう、彼女が明るくそう言った。
途端に翳は去り、目の前が明るくなる。不思議だ。
そうか。嬉しいに決まっているのか。
外から聴こえる小鳥の声すら、祝福の音に聞こえる。
おめでとう、おめでとう、と囀る声。
『卒業式、明後日だっけ?』
「ん」
『遊びに行くから、待ってろよ~』
「待ってる」
中高五年間。ずっと一緒だった恋人。
この春から、また一緒だ。
もう二度と離れるものかと、決意も新たに六度目の春を迎える。
END.
カクヨムの一日一作でたびたび出ているカップル。全寮制の中高一貫校で長いこと付き合ってる百合ップルです。生意気な後輩と大らかな先輩。こちらでもそのうち、出会い編を載せたいなあと思いつつ、この一日一作で載せるか、別に一つの話として載せるか悩み中です。




