私は叶わぬ恋をした(百合。片想い)
私は、恋をした。
始まりは、大学のサークルで人気の絵師さんを教えてもらったこと。
その人のイラストは、どれもすべて、わかりやすくえっちな要素はほぼ無いが、どこかしらに艶かしさがあった。
それゆえかはわからないけれど、私は恋に落ちた。
その絵師さんにではない。
彼あるいは彼女の描いた、ある一枚のイラスト……そこに描かれた、少女にだ(大人っぽい眼差しをしていたから、もしかしたら大人の女性かも知れない)。
石造りの教会。
ステンドグラスから射した光が彼女を照らす。
深い色のロングワンピースに、流れるような黒髪。
こちらを見抜くような眼差し。
露出は殆ど無いのに、何故か強烈に色気を感じる。
衣服が身体の線に沿っている所為か。それとも、黒曜石の瞳が大きく濡れているからか。
とにかく、そんな艶めいた彼女に、私の心は射貫かれた。
ダウンロードした画像は、まずスマホとパソコンのホーム画面に設定。
次に、ポストカードサイズで印刷、手帳に忍ばせた。
さらにA3サイズでも印刷して、部屋の壁に飾った。
ちなみに、個人利用だったらダウンロードも印刷も自由だったことは明記しておく。
そうして、生活のありとあらゆる面で彼女を感じられるようにした。
そうすれば、流石に飽きるかと思ったのだけれど。
「一向に飽きない……」
部屋の壁から、聖母のようにこちらを見下ろす彼女を見上げ、ため息を吐いた。
彼女が好きだ。
彼女に触れたい。
彼女と、お話がしてみたい。
そのまろやかな頬は、どれほどすべらかで柔いのか。
隣に立つと、どんな香りがするのか。
どんな声で喋り、何を思うのか。
──彼女に、会いたい。同じ世界で。
毎日、気が狂ったみたいにそう願う。
「はあ……」
これを恋と呼ばずして、何と呼ぶ。
私は、絵の中の彼女に、真剣な恋をした。
END.




