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義妹が向けてくる好意がLikeかLoveかわからないからどう応えたらいいのかわからない件  10話 

毎回不定期更新で読んでくださる方々にご迷惑おかけして申し訳ありません。

もし読んでくださり、続きが楽しみ、と言って下さる方には、また気長にお待ちいただけると嬉しいです。

 雲一つない晴れ渡った空の下、義妹と一緒に帰路に着いていた俺だったが。

 正直、舐めていた。


 「あ、暑いです……」


 「俺だって暑いよ……」


 この町一番の大きさを誇る橋の上を、夕嬉と歩く。

 今日は特に暑いのと、橋の上という陽の光を遮るものが何もない、というのが辛かった。

 お互いにすごく汗をかいて、とてもではないが俺は夕嬉の方を見れないほどに。


 「お、お茶……」


 夕嬉が鞄から水筒を出して、お茶を飲む。

 そういえば自分も水筒のお茶は残ってるな、と俺も鞄から水筒を取り出し、その蓋を開けた。

 

 「はー!生き返りますねー!」


 「親父かお前は」


 まるで飲料水のCMのように水筒のお茶をゴクゴク飲む夕嬉。

 見ていて気持ちいいほどの飲みっぷりだ。

 

 「まぁ、俺は少しずつ飲んでいくことにしようっと……」


 同じく鞄の中に入れていたタオルで汗を拭きながら、飲み過ぎないよう注意しながらお茶を喉に落とす。

 太陽の光によって暖められた体を、心地よい冷たさが通っていくのを感じた。


 「兄さん、早く帰りましょうよ!もう橋も半分過ぎましたし!私待ちきれないですよ!」


 気づくと夕嬉は、俺を置いて先に歩き出していた。

 しかも、歩くペースはさっきよりも早くなっている。


 「あ、おい!待てよ夕嬉!」


 慌てて、水筒を手に持ったまま夕嬉を走って追いかける。

 夕嬉は笑顔でこちらを見ながら、ジッと俺を待っていた。

 俺が夕嬉の隣まで追い付き一息つくと、俺の右手をギュッと握ってきた。

 

 「あの……夕嬉。汗だくの兄貴の手を握って嬉しいか?女子ってそういうの気にするもんだろ?」


 「何言ってるんですか?家に帰るまでは手を繋ぐって約束ですよ?」


 「……そうだったな……」


 橋を渡って帰る生徒は元々数が少ない上に、今日から活動を再開する部活も多いため、俺と夕嬉の他に橋には人影はなかった。

 ……まぁ、こんなクソ暑い日に日傘も帽子も無しに橋を歩いて渡る人もいないだろうけど。

 さっさと家に帰って涼しい所でゆっくりしたい……。

 そう思いながら、もう一度水筒の蓋を空けてお茶を飲む。


 「兄さん」


 「え?」

 

 突然の声に俺はドキッとして夕嬉の方を向く。

 夕嬉は真剣な表情でこちらを見ていた。

 

 「ど、どうしたんだ?夕嬉」


 「……」


 夕嬉はジッとこっちを見ていた。

 この暑さの中なので、夕嬉の額にも汗がにじんでいる。

 目を合わせてくるので、なんだか気恥ずかしくなってくる。


 「あの、兄さん……」


 「お、おう。」


 ようやく夕嬉が口を開く。

 一体、彼女に何があったのか。

 心配しながら夕嬉の言葉を待つ。

 答えはすぐに明かされた。


 「喉乾きました」


 「お前さっきがぶ飲みしてただろ」


 いきなり歩くペースを上げたからだろうか。

 いや、それでも多く見積もって百メートルくらいしか進んでいないのだが。

 

 「兄さん……飲み物持ってませんかぁ……」


 夕嬉のダルそうな声。

 

 「うーん、俺も自分の分しか持ってきてないし、家まで我慢しろよ」


 俺がそう言うと、夕嬉は「えぇ~……」と力のない声を上げた。

 しかし、この調子だと熱中症になってしまうかもしれない……。

 いや、もしくはもうなっているのかも。

 だが、もう夕嬉の水筒は空になっていた。


 「あ、そうだ兄さん。それ下さいよ、それ!」


 「え?」


 いきなり夕嬉が何かを指差した。

 

 「それってどれだよ……」


 俺は夕嬉が指差した方向を向く。

 橋の下に通っている河の水が、太陽の光を反射させて、キラキラと輝いていた。

 それは、この橋から景色を見たときはいつも見れる光景そのもの。

 何も変わってはいない、いつも通りの風景だった。


 「何もないじゃないか」


 俺がそう言うと、夕嬉は顔を赤くして。


 「違いますって!兄さんの右手にあるものですっ!」


 「右手?」


 俺は、自分自身の右手を見る。

 持っていたのは、俺の水筒だけ。


 「俺の水筒しかないじゃん……ま、まさか!」


 「兄さん……暑くて倒れそうです……そ(・)れ(・)、下さいよ」


 夕嬉が手を伸ばしてくる。

 俺の水筒を受け取ろうとする仕草。

 でも、俺はさっきこの水筒のお茶を堂々飲んでいた訳で。

 それを夕嬉が飲むということはつまり。


 「間接キス……」


 俺が思わず口にすると、元から少し赤くなっていた夕嬉がさらに赤くなって。


 「い、いいじゃないですか!お互いが気にしなければいいんですよ!私は気にしませんし!」


 「俺が気にするんだよ……」

 

 俺が渋っていると、夕嬉が急かすように言う。


 「大丈夫ですって兄さん!これは人命救助ですよ、人命救助!兄さんは今にも倒れそうな妹を見捨てるんですか!」


 「そんな元気なら大丈夫だろ……」


 でも、実際学校を出てすぐよりかは体調が悪そうだ。

 熱中症はいつなるかわからないし、そのためにも水分補給は必須……。

 いくら間接キスになっても、命には変えられないし、夕嬉も気にしないって言ってるし……。

 俺が気にしなければいいだけなのだろう。


 俺は自分なりの結論を出した結果、夕嬉の前に水筒を差し出した。

 夕嬉は「えっ……?」と驚いた顔をしていたが、すぐに差し出されたそれを受け取り、まじまじと見つめている。

 

 「ほら、それ飲んでさっさと帰るぞ。親父に頼まれた買い物済ませなきゃいけないし」


 「私とのデートはっ!?」


 夕嬉が泣きそうな顔でこちらに言い寄ってきた。

 体が近くなり、思わず明後日の方向を向く。


 「わかってる、覚えてるから!」


 「本当ですか?」


 疑り深く聞いてくる夕嬉。

 

 「本当だって。ほら、早く帰ろう」


 夕嬉から視線を外して先に歩き出す俺。

 彼女も少し遅れて、俺についてきた。


 「今日のメインはあくまで私とのデートなんですからね!」


 と、中々にご立腹の様子。

 俺は「わかってるって」と返し歩き続ける。

 すると、夕嬉は歩いている俺の右腕に抱きついてきた。

 柔らかい感覚を右腕に感じる。


 「……夕嬉。それやめてくれってついさっき言ったよな」


 「いいじゃないですか、ちょっとくらい」


 俺の意見を無視してくっついてくる夕嬉。

 可愛いんだけど、やめたほうがいいと思うんだが……。


 「あ、そういえば夕嬉」


 「はい?どうしたんです?」


 「そんなに元気なんだったら水筒返してくれよ」


 まっすぐ前の道を見ながら言う。

 俺だって暑いのだ。

 お茶が手元にないと飲みたいときに飲めなくて辛そうだし。

 

 「た、倒れそうな妹から水分を取り上げるなんて、私に死ねと言うのですか!」


 「だって渡したけど飲んでないじゃん」


 「そ、それは……」


 多分だろうけど、夕嬉自身も恥ずかしいのだろう。

 まぁそれもそうだ。

 間接キスなんて意識したら普通の精神状態ではいられないだろう。

 

 「ほら、夕嬉、早く返して……」


 俺が夕嬉の方向へ向き直ると、さっきまでのためらいはどこへやら、水筒にがっつり口をつけてゴクゴクと飲んでいた。


 「え、ちょ、夕嬉!?」


 俺が慌てていると、夕嬉は勝ち誇ったような顔で


 「どうかしましたか兄さん?間接キスなんて私気にしないって言いましたよね?」


 その発言にもその度胸にも感嘆し、俺はただ「おう……」と頷くしかなかった。

 

 「あ、そういえば兄さんも飲みたいんですよね。ありがとうございました、お返しします!」


 夕嬉が笑いながら俺の水筒を返してくる。

 これを飲んだら……夕嬉と間接キス……。

 いや、夕嬉は気にしないって言ってたし、俺だけ気にしたら恥ずかしいというか……


 「兄さん?どうしたんですか?これ兄さんのでしょ?」


 小首をかしげながら、夕嬉が俺の顔を覗き込む。

 

 「いや……もうそのお茶、お前にあげるよ……。あと俺より前に出てこっちを振り向かないでくれるか」


 「え?なんでですか……?」


 「自分で自分を見てみろ」


 夕嬉は自分の姿を訝しげに見下ろす。

 そして俺の言いたいことに気づいたようで、一気に顔が赤くなった。

 この暑さのせいで俺も夕嬉も汗をかいていたのだが、そのせいでシャツが肌に引っ付いて、下着がうっすらと透けて見えるのだ……。

 

 「に、兄さん見ないで下さい、恥ずかしい!」


 今日は朝からこの快晴だったので、暑くて上着を持ってきてないので、ここから家までこのままということになる。

 正直、こんなことになるなんて思いもしなかったのだが。


 「……ほら、お前のカーディガン。暑いだろうが家帰るまで我慢しろ」


 俺がカーディガンを夕嬉に差し出すと、夕嬉は若干引いたようで。


 「おい、なんで後ずさる!?」


 「なんで兄さんが私のカーディガン持ってるんですか!変態ですか!」


 「違う!義母さんがこうなるかもしれないから持っていってあげてって言われたんだよ!」


◆


 実は、今朝夕嬉が用意を終えて二階から降りてくるまでに、義母さんに渡されていたのだ。

 しかも、義母さんは夕嬉が汗で下着が透けて見えてしまうであろうことを予想して、俺にこれを渡したのである。

 

 「こんな天気のいい日だけど、あの子きっとそういうのに気づかないから。持っていってあげて」


 「え、でも夕嬉に直接渡せば」


 「こんな恥ずかしい渡され方したら、あの子も二度と忘れないだろうから」


 「はぁ……なるほど……?」


 「うふふ、お願いするわね」


◆

 

 「という訳だ」


 結局夕嬉は恥ずかしさに負け、この炎天下の中カーディガンを着ている。

 家まではあと少しだ。


 「うう……じゃあなんでもっと早く渡してくれなかったんですかぁ……。他の人がいなかったからいいものの、気づいた時すごく恥ずかしかったんですからね……」


 「……それはごめん、俺も忘れてた」


 「ひ、酷いっ!」


 夕嬉が涙目になりながら俺をポカポカ叩いてきた。

 まぁ今回のは俺も悪かったし、おとなしく叩かれていよう……。

 

 その後、家に着いた瞬間、ダッシュで自分の部屋に戻り、着替えを持ってきて「シャワー浴びてきますっ!」と言って風呂場に閉じこもってしまった。

 夕嬉が戻ってくるまで俺はインスタントコーヒーを作って、氷を入れてキンキンに冷やして飲んだ。

 先ほどまでの外の暑さと屋内では暑さが全然違い、冷たいコーヒーが一層美味しく感じる。

 俺はすぐにそれを飲み終えてしまい、もう一杯ついでに夕嬉の分も作っておいた。

 俺がその二杯目を飲み終えるのとほぼ同時に夕嬉も戻ってきたのだが、


 「せっかくだし兄さんもシャワーどうですか?汗かいてたし、気持ちいいですよ」


 と勧めてくれたので、お言葉に甘えて、俺もシャワーを浴びることにした。


◆

 

 十分後。

 俺たちは玄関のドアの鍵を閉め、屋根下に立った。

 今からもう一度、この炎天下の中を行くことになるのだ。

 だがもう準備は万全である。


 「さぁ、行きましょう兄さん。私とのデートに!」


 ……あくまで目的は買い物なのだが。

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