明智光秀
敵を前に、信長は嗤っていた。視界を埋め尽くす敵の大軍勢を相手に信長は大笑していた。そんな信長に勢いよく接近する敵が一人。その敵に、信長は見覚えがあった。
いや、見覚えがあるどころの話ではない。彼は・・・奴は・・・
「信長ああああああああああああっ!!!!!!」
「ふはっ、よくぞ来た。光秀えっ!!!」
明智光秀。彼の振るった刃を信長は自らの刃で防ぐ。刀と刀が火花を散らして鍔迫り合う。
そう、本能寺にて信長に謀反を起こし、反逆した明智光秀である。何故、彼がこの世界に居るのかは全く解らないがこれだけは解る。光秀はまたしても、信長を討つ為に刃を向けたのである。
信長は嗤う。魂が昂揚してくる感覚を覚える。
「またしてもわしに刃を向けるかっ、光秀えっ!!!!!!」
「織田信長、お前だけは・・・貴様だけはああっ!!!!!!」
血を吐くような憤怒の絶叫が、戦場に響き渡る。それは、明智光秀の魂からの叫びだ。
光秀は憤怒に任せて刃を振るう。しかし、それを信長は嗤いながら受け止める。
信長は嗤い、光秀は憤怒の形相で刃を交える。剣技の腕は互角。しかし信長には異能がある。一見光秀の方が不利に見えるだろう。しかし、それでも信長と光秀は拮抗している。
信長には魔物を産み、従える異能がある。しかし、光秀は三十万の魔物を従えている。
光秀には将としての才能がある。数多の魔物の軍勢を率いる事で、信長の産み出す強力な魔物達を次から次へと蹴散らしていく。一方、信長の方は光秀との戦いに集中しており、存分に指揮を飛ばす事が出来ないでいるのだ。これではいくら魔物が強力でも意味がない。
そして、魔王アロウとの戦いで見せた魔物との同化もこの場合下策だ。もし、この場で自身の軍勢を自分自身の強化に回せば、三十万の魔物達が一斉になだれ込んでくるだろう。
更に言えば、此処で新たな魔物を産み出そうとすれば。その隙を突いて信長は斬られるだろう。
つまり、半ば詰みの状態である。
「・・・・・・・・・・・・ふはっ」
「?」
・・・しかし。しかし、だ。
「っ、くく・・・ふはははははははははははははははははははっ!!!!!!」
「っ!!?」
信長は盛大に哄笑を上げた。それは、決して敗北を悟ったからではない。心底から愉しいからこそ織田信長は嗤うのである。魂が昂揚するからこそ、嗤うのだ。
この状況を、信長は未だ不利とは考えていない。それだけの事だ。
・・・故に、信長は本気を出した。今まで抑えていたそれを、ついに解放する。
瞬間、その場に赤が舞った。




