019 延長戦・思惑の交錯する夜
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ローズは、廊下で待機していた女性に促されるままに、やや覚束無い足取りで部屋へと向かった。
彼女は、討伐を通じて話をするようになった、ペトルという名の女性冒険者だ。二人の王子とも割と頻繁に会話をしている姿を目撃していて、印象に残っていた。
今、何故彼女がこの場にいるのか。気にしなくてはならない事もあったが、今のローズは頭が上手く回っていなかった。
ローズの有り様を心配したのか、ペトルの方から気を使って話し掛けてくれるのだが、殆んど生返事をすりばかりである。
これまでは、リリー、アイリス、デイジーと四人部屋で過ごしていたが、今夜からはローズとオーキッドの二人部屋と、リリー、アイリス、デイジーの三人部屋に分かれる事になった。ただ、公爵令嬢同士という事で、ローズとオーキッドの二人部屋の方が広い造りになっている。
夕食を摂った後、大分時間は経っていたが、ローズが戻って来ない為に、四人は二人部屋の方に集まって、お喋りをして過ごしていた。
部屋に入ってきたローズの様子に、怪訝な表情を浮かべる友人達。オーキッドは思わず、ローズをペタペタとあちこち触り、着衣に特別の乱れが無い事で安心して、席を勧めた。
ローズは言われたまま着席して、勧められるままお茶を飲む。
やはり様子のおかしいローズに、友人達は言葉巧みに何があったのか聞き出そうとする。
予め借りていた道具で、火属性魔石を磨り潰しながら、ポツリポツリと質問に答えるローズ。
味方の増援が難しい事に顔色を悪くし、原因となった宮廷政治に頭を痛め、元婚約者だった男の“ゲス野郎発言”に青筋を立てる。
関係者として話を聞いただけでも、様々な事を考えさせられる。当事者として、討伐の最大戦力を担わなくてはならないローズには、更に負担が掛かっているのだろう。
友人達は、休息を、就寝をローズへ勧める。
それに対してローズは、手を休める事なく返事をする。
「作らなくてはならない物があるの」
「魔道具ですか?」
「そう。私は(花火)『職…人…』だから」
「あの、ローズ様?」
「私達もお手伝い致しますわ! ね、皆様」
「ええ、勿論です」
「この……珍しい、薄い紙? を使うんですか?」
「そうです。包みます」
イマイチ本調子でないローズを見守りつつ、作業を手伝う面々。やがて、友人達にとっては外見も作用も全く見当がつかない物体が出来上がる。
ローズにとっては、納得のいく見た目に仕上がったのだろう。一つ頷いて、作った物を手に徐に立ち上がる。
「ローズ様どちらへ?」
「これは室内でやっていい物ではありません。外です」
ローズはなんだか無性に、あのスチルを再現したくなっていた。以前の“ローズ・カーティス”を慰めて、思いっきり泣かせてやりたかった。
その為に試作した『線香花火』だ。
ローズの「外に出る」発言に驚いて、四人は必死に説得して、止めようとするが、相手は常になく頑固で退こうとしない。仕舞いにはアイリスの闇属性魔法を用いて寝かし付ける。精神に干渉する副作用もあるので、幸せな夢を見られるように調整を試みる。
四人は顔を見合せ、オーキッド、リリー、アイリスの三人でリンデンの部屋を訪ねて、ローズの様子を報告しに行く事を決める。
この時、アイリス的には気をきかせたつもりで、『リンデン王子との恋物語』の夢をみる事になったローズは、一人、様子見の為に残ったデイジーの前で、妙に魘されているような寝姿を晒す事になり、却って、デイジーをやきもきとさせるのであった。
★★★
説明に耳を傾けながら、ローズを自分のベッドへ保護したいリンデンと、反対するローレルの無言の応酬が繰り広げられる。それを何となく把握しながらも、話を続けるオーキッド。
“誰”とは言わないが、一頻り腹違いの弟に関する苦言を呈した後、ローズの生家であるカーティス公爵家に次ぐ家の令嬢として一言。
「宜しければ(件の侯爵家を)潰しましょうか?」
と、ニッコリと微笑みながら二人の王子に提案するオーキッド。
ローレルは苦笑い。
リンデンは真っ向からオーキッドの微笑みを受け止めて、更にイイ笑顔を浮かべる。
「もう、動いているから」
「勿論、そうですわよね。何かあればお申し付け下さいませ。助力は惜しみませんわ」
「ありがとうございます。今はまず何よりも、皆さんと協力しあって、無事に討伐を為し遂げていきたいと思います」
「リンデン王子?」
「はい?」
「本音は?」
「ローズ嬢に関する情報のアレコレを流して欲しいです。後は事あるごとに二人きりにして」
「兄上!」
「ローレルをどっかにやっくれると、尚いいです」
「まあ! うふふふふふふ……」
「ハッハッハッハッハッハ……」
「ローズ様が欲しいのであれば、『相応の状況を整えて下さいませ』としか、申し上げようがございませんわ。悪いムシが付かないようには、目を光らせますけれど。ご安心下さいませ。ローズ様の名誉を傷付けようとする輩は、土壁で速やかに隔ててしまいますわ。譬え、それがリンデン王子であったとしても」
「是が非でも頼む!」
「ローレル。……まぁ、今のところは私の方からもお願いしておきましょう」
「今のところ、ですか?」
「今のところです」
互いに笑みを深める、リンデンとオーキッド。ローレルは頭を振り、リリーとアイリスは、二人の応酬を、ただ黙って見守るのみである。
退室の挨拶を交わして、部屋を去っていく三人の女性達。
適度なところで切り上げて、リンデンとローレルも、翌日に備えて休むのであった。
読んで下さって、ありがとうございます。
今回は短めでした。
20151123
本日、友人と食事を共にして、歓談中にアドバイスを貰いました。爆笑しながら友人に使用許可を取ってタグを追加しました。
セクハラ・ファンタジー、略してSF!
やったね、リンデン。タグ《警告》追加だよ。
新ジャンル、爆誕なるか!?
次話からいよいよ、セレステブルー湖での決戦へと、場面が移ります。
『“乙女ゲーム要素”は…………逃げ出した!』
『作者は“乙女ゲーム要素”を見失ってしまった!』
後で連れ戻す予定ではあります。あくまでも“作者的に”ではありますが。
ずれているだろう、自覚はあります。




