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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: 朔夜
第3章 空中都市と空飛ぶ請求書

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決算は、光の彼方へ


「死ね!死んで、私の糧となれェェェッ!!」


地下空間を埋め尽くす「寄生根」が、無数の槍となって襲いかかる。

グリードはもはや人の形を留めていなかった。

星の地脈に寄生し、無限のエネルギーを吸い上げ続ける、醜悪な癌細胞。

いくらシスターズが根を焼き払っても、傷口からさらに太い根が再生し、肥大化していく。


「チッ、しぶといな!さすがは星を食う『親』だ!」


アルトは強化鈍器で根を弾き飛ばしながら、舌打ちした。

こちらの攻撃力は足りている。だが、相手の回復力(供給量)が異常すぎるのだ。

星そのものをバッテリーにしているようなものだ。


「無駄だ!私は不滅だ!この星が死ぬまで、私は何度でも蘇る!」


グリードの高笑いが響く。

絶望的な持久戦。

だが、その時、後方で戦況を分析していたメサイア(元教皇)が叫んだ。


「いや、不滅ではない!……見ろ、根の脈動を!」


メサイアは古代端末を操作し、ホログラムを展開した。


「奴の再生能力は、中心にある『コア』からのエネルギー供給に依存している。……そこを断てば、無限再生は止まるはずだ!」


彼の指差す先。

膨大な根の中心、グリードの融合体の奥深くに、一際強く脈打つ「核」が見えた。

地上のエネルギーが集まる結節点。あそこが、無限再生のポンプだ。


「でかしたぞ顧問!……在庫リスクを抱えすぎた企業がどうなるか、教えてやるよ!」


アルトの号令が、戦場に轟く。


「総員、連結攻撃コンボだ!!ラビ!先陣を切れ!奴の『時間』ごと動きを止めろ!」

「……ん。任せて」


瓦礫の陰から、銀色の影が飛び出した。

ラビだ。

彼女は重力ハンマー(杵)を振りかぶり、グリードの本体――再生核の直上に向かって、全力で叩きつけた。


「――ぺったん(重力プレス)ッ!!」


ズドォォォォォォン!!!


空間が歪むほどの重圧。

無限に再生しようとしていた根が、見えない鎖に縛られたように動きを止める。

再生能力ごと、時間を押し潰す一撃。


「ぐぉっ!?う、動けん!?」

「今だセレーネ!『装甲(守備力)』を剥がせ!」


続いて、月光蛾に乗ったセレーネが舞う。

撒き散らされたナノマシンの鱗粉が、グリードの硬質な樹皮に付着し、分子レベルで分解していく。


「ふふっ!私の推し(世界)を汚した罪、万死に値するぞ!」


パリパリパリッ……!


グリードの防御力が、紙のように薄くなる。

だが、それでもグリードはまだ動こうとしていた。


「ま、まだだ……!私はCEOだぞ!こんなところで……!」

「往生際が悪いぞ、元社長」


その時、瓦礫の影から、もう一つの影が飛び出した。

巨大な魔獣、ケルベロスだ。

その背中には、アルトが救出した「ポチ」の意識が宿っている。


「グルルルルッ……!」


ポチは、かつて自分を改造し、自爆装置として使い捨てようとした飼い主に向かって、牙を剥いた。


「ポ、ポチ!?貴様、私に歯向かう気か!?」

「ガァァッ!!」


ポチが飛びかかる。

その牙が、露出した再生核の根元に深く食い込んだ。


「ギャアアアアッ!?」


物理的な拘束。そして、飼い犬に手を噛まれるという、因果応報の劇痛。

ポチの噛みつきにより、核へのエネルギー供給ラインが完全に断たれた。


「よくやったポチ!仕上げだセレス!『光』を叩き込め!」

「はいっ!……悪しき穢れよ、消えなさいッ!!」


セレスが杖を突き出す。

彼女の全身から放たれた極大の浄化光が、グリードの核を焼き焦がし、再生能力を完全に焼き切った。


「再生停止!核、完全露出しました!」


メサイアが叫ぶ。

千載一遇の好機。


「しつこいぜ、悪徳社長。……これがトドメの『決算(監査)』だ!」


アルトは、上空の要塞へ向かって叫んだ。

照準は、露出した再生核、一点のみ。


「ヴォイド!……『捕食いただきます』の時間だ!!」

『――ゲプッ。……オナカイッパイ……』


要塞のスピーカーから、ヴォイドの拒絶の声が響く。

だが、アルトはニヤリと笑った。


「安心しろ。……今度のメシは『別腹』だぞ!」

『……ベツバラ?……ッ!美味シソウ!!』


ヴォイドの声色が変わる。

高純度のエネルギー塊である「親の核」。それは幼体にとって、満腹でも食べたくなる極上のデザートだった。


『パパ、タベル!ゼンブ、タベル!!』


要塞の主砲が変形する。

それは砲身ではなく、巨大な「顎」のような形状へと展開した。

凝縮されるのは、ヴォイドエンジンの全出力。

星を食う怪物の力を、「消化酵素」としてビーム状に圧縮した、捕食光線。


カッ!!!!


光の奔流が、地下遺跡の天井を貫き、グリードの核へと降り注ぐ。


「な、なんだこの光は……!?熱くない、なのに……体が、食われていくぅぅぅ!?」


グリードが絶叫する。

それは破壊ではない。「消化」だ。

彼を取り込んでいた親ヴォイドの細胞ごと、空間そのものが咀嚼され、胃袋(虚数空間)へと飲み込まれていく。


ジュルルルルッ……!!


「い、嫌だ!私は神に……星に……!」

「お前はもう『経営者』じゃねえ。……ただの『栄養分カロリー』だ」


アルトは冷酷に告げた。


「ば、バカな……!私の資産価値が……私の効率化が……!ただの餌だとぉぉぉ!?」


ズオォォォォォォッ!!!


光が収束する。

グリードの断末魔は、ヴォイド(子)の無邪気な「ごちそうさま」の声にかき消された。

本社ビルごと、地下の根ごと。

星を蝕んでいた癌細胞は、再生する間もなく跡形もなく消滅(完食)した。


「……ふぅ。業務終了だな」


アルトは噴き上がる蒸気の中で、武器を下ろした。

圧倒的な勝利。

競合他社は物理的に倒産し、アルト商会がこの星の最大勢力となった瞬間だった。


だが。


ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!


勝利の余韻に浸る間もなく、地面が激しく揺れ始めた。

先ほどまでとは比較にならない、星全体が悲鳴を上げているような揺れ。


「な、なんだ!?まだ敵がいるのか!?」

「違います社長!……地脈の数値が、異常上昇しています!」


セレスが顔面蒼白でモニターを覗き込む。


「グリードが無理やり吸い上げていたエネルギーが、彼がいなくなったことで逆流しています!このままだと……!」


地下の裂け目から、制御不能になった「星の血液(マグマと魔力)」が噴き出し始めた。

病巣を急激に切除したショックで、星の心臓が発作(ショック状態)を起こしたのだ。


「……クソッ。癌を取ったら、患者がショック死しそうってか」


アルトは舌打ちした。

敵は倒した。だが、星の寿命が尽きるカウントダウンは止まるどころか、加速してしまった。


「警報!星核コアの臨界まで、あと30分!」


崩壊する遺跡の中で、アルトは空を見上げた。

そこには、まだ希望(要塞)が浮いている。


「……上等だ。ここからは『時間』との勝負だぞ」


彼は叫んだ。


「総員、緊急オペを開始する!……この星を、無理やり『蘇生』させるぞ!!」


企業戦争は終わった。

ここからは、星の命運を賭けた、最後にして最大の「大工事」が始まる。

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