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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: 朔夜
第3章 空中都市と空飛ぶ請求書

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教皇は、無慈悲なゲームマスターです


『――やれやれ。少し目を離した隙に、随分と派手に散らかしてくれたね』


鈴を転がすような声が降ってくる。

完全に修復されたホールの虚空に、一人の少年が浮いていた。

透き通るような白髪。宝石のような瞳。

背中には、天使の羽ではなく、無数の「モニター」が後光のように展開されている。

アガルタの支配者。教皇メサイア。


「貴様が……教皇か」


アルトは鉄パイプを突きつけた。

だが、メサイアの反応は予想外だった。

彼は空中で気だるげに胡座をかき、モニターの一つを指先で弾いた。


「あー、はいはい。……『侵入者検知』のアラートね。確認しましたー」


抑揚のない、マニュアルを読み上げているような声。

神の威厳など欠片もない。そこにあるのは、深夜のコンビニバイトのような「ダルそうな」雰囲気だけだった。


「システム・オールグリーン。……損壊エリアの『再構築ロールバック』完了っと。……あー、めんどくさ」

「……は?」


アルトが眉をひそめる。


「おい、何とか言えよ。俺たちはここを……」

「あー、お客様ー。困りますー」


メサイアが、棒読みで遮った。


「現在、このエリアは『関係者以外立入禁止』となっておりましてー。許可なき侵入は『利用規約(EULA)』違反なんですよー」

「あぁ!?規約だァ!?」

「はいー。お客様のIDは既に『凍結(BAN)』されておりますのでー、速やかにご退場くださーい」


ピロン♪

空中に【AccessDenied】のウィンドウが表示される。

完全に、話の通じない「カスタマーサポート(サポセン)」の対応だ。


「ふざけんな!こっちは世界を救いに来たんだぞ!話を通せ!」

「あー、そのご要望につきましてはー」


メサイアは、虚空から分厚いファイル(マニュアル)を取り出し、パラパラとめくった。


「……えーっと、『世界を救いたい』、と。……はい、検索結果が出ました」


彼はニッコリと、営業スマイル(貼り付けたような笑顔)を浮かべた。


「大変申し訳ございませんが、そのご要望は現在のバージョンの『仕様外』でしてー。サポート対象外となりますー」

「仕様外……だと……?」

「はいー。世界の滅亡は『確定事項(仕様)』ですのでー。変更をご希望の場合は、次回の『天地創造アップデート』をお待ちくださーい。……あ、予定は未定ですけど」


あまりの塩対応。

人類の存亡を、アプリのバグ報告くらいにしか思っていない。


「この……役立たず運営がァッ!!」


アルトの堪忍袋の緒が切れた。

彼は鉄パイプを振りかぶり、メサイアに向かって投げつけた。


ヒュンッ!!

鉄パイプがメサイアの顔面を捉える――直前で、ピタリと止まった。

見えない壁に阻まれたのではない。メサイアが「カーソル」を合わせて、鉄パイプを摘まんだのだ。


「おや?……削除デリートできない?」


メサイアが首をかしげる。

彼のナノマシンは、この世界の「設計図」にあるもの全てを管理・消去できるはずだ。

だが、アルトが投げた鉄パイプは、スラムのゴミ山から拾ったガラクタ。

設計図に載っていない「管理外のゴミ」だ。


「ふうん。……『未登録アイテム(バグ)』か」


メサイアは興味深そうに鉄パイプを眺め、そしてポイ捨てした。


「ま、いっか。バグ報告として処理しときますねー。……修正パッチが当たるまで、放置でーす」

「放置すんな!仕事しろ!」

「あー、お客様ー。大声を出されますと『威力業務妨害』で通報しますよー?」


暖簾に腕押し。糠に釘。

アルトは頭を抱えた。こいつはラスボスじゃない。

もっと厄介な、「思考停止したマニュアル人間(AI)」だ。


「……社長。会話が成立していません」

「ああ、分かったよ。……こいつには『言葉』も『理屈』も通じねえ」


アルトは、鉄パイプを拾い直し、冷徹な目でメサイアを見据えた。

クレーマーの魂に火がついた。


「おい、サポセン。……責任者を呼べ」

「えー?私が最高管理者アドミンですけどー?」

「なら、お前の『本体サーバー』はどこだ?……電話じゃラチが明かねえ。本社(中枢タワー)に乗り込んで、直接クレーム(物理)を入れてやる」


アルトの殺気に、メサイアが初めて反応した。

営業スマイルが消え、少しだけ人間らしい、意地悪な笑みが浮かぶ。


「……へえ。面白いクレーマーだね」


メサイアは指を鳴らした。

すると、床の一部が透過し、奈落へと続く巨大な穴が出現した。


【Invitation:TheDungeon(処刑場への招待)】


「本来、正規ルート(エレベーター)はIDがないと動かないんですがー。……特別に『裏口』をご案内しますー」


メサイアは穴を指差した。


「これは『廃棄ルート』。……いわゆるデバッグ用のダンジョンです。ここを通れば、私の中枢(本社)まで直通ですよ?」


彼は悪びれもせず、事務的に付け加えた。


「まあ、死亡率は99.9%ですけどー。そこで死んでいただければ、この案件チケットも『解決済み(クローズ)』として処理できるんで、どっちでもいいでーす」


正規の手順がダメなら、裏技を使えという挑発。

そして、死ねば事務処理が楽になるという、究極のお役所仕事。


「……上等だ。案内ご苦労」


アルトはセレスの手を引いた。


「行くぞセレス!……このふざけた運営に、『詫び石(賠償金)』を吐かせてやる!」

「はいっ!……あの方、接客態度がなっていませんね(怒)」


ヒュンッ。

メサイアが指を弾くと、二人の足元が消失した。


転送。

光の粒子となって吸い込まれていく中、最後にメサイアのダルそうな声が聞こえた。


『あ、アンケートへのご協力お願いしまーす。……星、一つかなぁ』

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