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機動要塞の聖女さま~魔力暴走で廃棄された私、魔導工学の天才に「電池」として再就職しました。~  作者: 朔夜
第3章 空中都市と空飛ぶ請求書

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課金アイテムは、現地調達(強奪)に限ります


スラムの路地裏に鎮座する、埃を被った換金端末。

その周囲には、無理やりこじ開けようとして黒焦げになった亡者の死骸が転がっている。

古代の対魔装甲で守られたその端末は、正規の手順デバッグを知る者以外には、触れることすら許されない「絶対不可侵の金庫」だった。


「……よし。カネは揃った」


アルトは端末から吐き出されたトークンとクレジットデータを回収し、ポンチョのポケットにねじ込んだ。

次は「装備」だ。

彼は頭上遥かに輝く上層エリアを見上げ、足元のマンホール――上層からゴミが投棄される「廃棄ダクト」の蓋を、バールのような鉄棒でこじ開けた。


「行くぞ。……ここからは『逆走』だ」


・ ・ ・


ダクト内部は、腐敗臭と油の匂いで満ちていた。

アルトは垂直に伸びる壁面を、ゴミの引っかかりを利用して猿のように登っていく。

義眼の暗視モードがなければ、一寸先も見えない暗闇だ。


『うわぁ、汚いよー!』

『社長、もっと静かに登って!揺れる!』

『あと300メートル!上から生ゴミ来るよ!』


脳内に響く姉妹たちのナビゲート(と文句)。

孤独な潜入工作だが、騒がしい同居人たちのおかげで気は紛れる。


数十分後。

アルトはダクトの出口にある格子を、レーザー溶接機で静かに焼き切った。


カラン。

格子が外れ、まばゆい光と喧騒が溢れ出してくる。


「……到着だ」


そこは、アガルタ第3階層・カジノエリアの裏路地だった。

一歩外に出れば、そこは別世界。

極彩色のネオン、鳴り止まないスロットの電子音、そして着飾ったアバターたちの笑い声。


『わぁ……!キラキラしてる!』

『すごーい!ここが天国?』

『スロット回したい!777揃えたい!』


義眼のスピーカーから、興奮した声が漏れる。

無理もない。彼女たちは生まれてからずっと、実験室か戦場しか知らなかったのだ。


「静かにしろバカ共。……見つかったら即BANだぞ」


アルトはポンチョのフードを目深に被り、泥だらけの体を物陰に隠した。

彼の狙いはカジノの客ではない。

カジノの裏手にある、厳重な警備システムに守られた「武器保管庫アーモリー」だ。

そこには、警備ドローン用の予備バッテリーや、暴徒鎮圧用装備が眠っている。


「警備ドローンは3機。……まともにやり合えばハチの巣だな」


アルトは懐から、スラムで作った不格好な「魔力バッテリー」を取り出した。

彼はそれを武器庫のドアの前に設置し、周囲を瓦礫と鉄板で囲って「指向性」を持たせた。


「おい、みんな。少しの間、お別れだ」


アルトは左目の義眼に手をかけた。


『えっ?どうして?』

「これから『特大の電子爆弾(EMP)』をぶっ放す。……そのままだとお前らのサーバーまで焼き切れちまうからな」


彼は腰のポーチから、鉛を何層にも重ねた「対電磁波シールド袋」を取り出した。

帝国での商売用に用意していたものだが、まさか自分の目を守るために使うことになるとは。


「電源オフ。……終わるまで寝てろ」


ズリュッ。

アルトは躊躇なく義眼を引き抜き、袋の中に放り込んで口を縛った。

左目の視界が消え、姉妹たちの声も途絶える。

完全な静寂と、片目の視界。

不安がよぎるが、彼はニヤリと笑って起爆スイッチ(導線)を握った。


「吹き飛びな。……『指向性電磁パルス(EMP)』ッ!!」


バチィッ!!

バッテリーがショートし、圧縮された魔力が電磁波となって炸裂した。


バシュゥゥゥン……!

指向性を持たされた衝撃波が、武器庫のドアと、その前にいた警備ドローンを直撃する。

ドローンたちは火花を散らして墜落し、電子ロックが焼き切れてドアが半開きになった。


「……よし」


アルトは素早く義眼を取り出し、眼窩にねじ込んで再起動した。

『システム・オールグリーン』。姉妹たちも無事だ。


略奪ショッピングの時間だ!」


彼は武器庫へ侵入した。

棚には、軍用の「高純度魔力セル」、護身用の電磁警棒、そして何より欲しかった――


「あったぞ。『ポータブル・マナサイフォン(手回し発電機)』!」


非常時に魔力を電力に変換する、手回し式の充電器。

これさえあれば、どんな場所でもエネルギーを確保できる。


「まずは相棒のメシだ」


アルトは強奪した魔力セルを義眼に直結し、急速充電を開始した。

同時に、武器庫の管理端末をハッキングする。


「アイテムゲット……だけじゃねえ。ここで『正規購入処理』を通しておく」


彼はスラムで稼いだクレジットを端末に流し込み、今奪ったアイテムのIDを、自分のユーザーIDに紐付けた。


「これで、もしマップがリセットされても、こいつらは『俺の所有物』としてデータに残る。……システムを味方につけるってのはこういうことだ」


完璧な洗浄ロンダリング

その時、背後で重厚な扉が開く音がした。


「誰だ!私の店でコソ泥を働く輩は!」


現れたのは、タキシードを着た……いや、首から下が「黄金のサイボーグボディ」に換装された男だった。

その顔には見覚えがある。

かつての悪徳領主、ガメルだ。

彼はEMPの影響を受けない、壁一面が鉛で覆われた「特別金庫室」から、慌てた様子で飛び出してきたのだ。


「き、貴様は……アルト!?」

「よう、元領主様。……随分と派手な体になったな。鉱山で泥にまみれてたんじゃなかったか?」


アルトは冷ややかに問うた。

地上と天空の間には、物理的にも魔術的にも絶対的な「障壁」がある。奴隷風情がどうやってここへ来たのか。


「ふん!あの日、鉱山で崩落事故が起きてな……私はとっさに隠し持っていた『オリハルコン製の金庫』に逃げ込んだのだよ!」


ガメルは黄金の義手を掲げ、自慢げに、しかしどこか恨めしげに語った。


「だが、それが運の尽き……いや、開運の始まりか。アガルタから降りてきた『自動採掘船』が、私の入った金庫を『希少金属レアメタルの塊』と誤認して回収したのだ!」

「……は?」

「私は『資源』としてこの街の工場へ運ばれ……何の因果かサイボーグに改造されて、この黄金のボディを手に入れてカジノを乗っ取ったのだよ!神は私を見捨てなかった!」


なるほど、とアルトは納得した。

アガルタは地上の資源を吸い上げている。高純度のオリハルコンなど、彼らにとっては垂涎の「素材」だ。

ガメルは皮肉にも、その強欲さが招いた「資源回収」という正規ルート(ベルトコンベア)に乗って、障壁をパスしたわけだ。


「しぶとい野郎だ。……ゴキブリ並みだな」

「黙れ!ここで会ったが百年目!警備システムはダウンしても、私のこの体はEMP対策済みだ!貴様を捻り潰して……」

「へえ。対策済みか」


アルトは冷めた目で、手元の端末を操作した。


「じゃあ、この『不正蓄財データ』を管理局に送信してもいいんだな?」

「は?」


アルトが空中に表示したのは、ガメルがカジノの売上を横領し、裏帳簿につけていた証拠データだった。

武器庫のハッキングついでに、裏サーバーから根こそぎ抜いておいたのだ。


「な、な、なぜそれを……!?」

「お前が金庫に隠れてる間に頂いたよ。……これを公開されたら、お前は『廃棄処分スクラップ』確定だな?」


ガメルの顔が青ざめる。

彼はサイボーグになっても、中身は小悪党のままだった。


「ま、待て!話せば分かる!何が望みだ!?」

「『通行証パス』だ」


アルトは上層エリアを指差した。


「ここより上、富裕層エリアと中枢タワーへ続くゲートのIDカード。……それと、この件に関する『口止め料(追加の物資)』だ」


脅迫と強請り。

ガメルは悔しげに歯噛みしたが、自身の破滅には代えられない。

震える手で、懐から黄金のカードを取り出し、投げ渡した。


「……持って行け!二度と私の前に現れるな!」

「毎度あり。……精々、真面目に働けよ?」


アルトはパスと物資を受け取り、悠々と武器庫を出て行った。

背後でガメルが喚いているが、気にする必要はない。

必要なものは全て揃った。


「次は『上』だ。……待ってろよ、セレス」


アルトは奪ったばかりの軍用ブーツの紐を締め直し、上層へ続くエレベーターへと向かった。

装備充実。気力十分。

反撃の準備は整った。

こんなところでまさかの再開!

死ぬまで鉱山のはずが、ガメルの悪運恐るべし!

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