魔王の見つめるその先は
超久しぶりの更新です
楽しみにしていた人がいたらいいなと言う希望を込めていいます、お待たせしました!
いろいろ迷ったりもしましたがやっぱり俺はこの作品が一番気に入っているのでこれからもよろしくお願いします!
三日前のあの騒動から僕たちはまず急ピッチで彼らのために簡易的な家を用意などの用意を進めた。彼らとは先日僕たちを襲ってきた偽の使節団のことである。彼らに処分を伝えると面食らった顔をし何度も本当かと聞かれ、二度と僕たちに剣を向けないと誓っていた。心を読んでいたフィールに確かめると真実だったようなのでこうして善良な対応をしているのだ。もし嘘だとしたら……それはその時、考えよう。
今僕は規格の要とも言える彼らの住居づくりの作業縁場をひとりで散歩している。
城とその周辺にある町を囲う様に作られた壁のすぐ近くに新たに地面をならし、開拓村を作ることに決まったのは一昨日だ。それから一日と約半日、およそ三十六時間で村の役八割が完成している。すばらしい成果と言えるだろう。
まず魔法を使うことに優れた魔族が土系統の魔法を使い土地を平らにする。そして力に長けたオーガやミノタウロスなどの魔族が木材を運び、技術に長けた人が設計と指示をし建物をくみ上げていく。まだ両者とも警戒心が解けていないのか僕に言われたから嫌々協力しているようだ。
人と魔族。両者が互いに打ち解け合い協力するような光景を思い浮かべる。なんだ、いいじゃないか。
どちらも種族関係なく接し、お互いを認め合い信頼している。そんな国、作ってみたいな。
作業場を遠めに見ていると二つの影が猛スピードで走ってきた。片方は藍色の髪に眼鏡をかけた青年、アルヴァーナくんだ。そしてもう一人の橙色の髪で同じく眼鏡をかけた青年が偽の使節団で代表を務めたアーヴィス=ラーキィくんだ。彼は王国で平民でありながらその文官としての実力を買われすさまじいスピードで出世したが、それを快く思わなかったお坊ちゃん達の策略により彼直轄の騎士団と友人の勇者と共に音階の遠征に参加させられたそうだ。なぜはめられたと気づきながら参加をしたのかと彼に聞いたところ、参加しなければ彼の弟や妹、さらには騎士団の皆の家族を殺すといわれ泣く泣く参加を決意したらしい。
実際彼の能力は素晴らしいもので、アルヴァーナくんの補佐に任命したのだが……
「何度言ったらわかるんですか! 魔族はこれ以上このことに対して出せる予算はありません! イクリース様からも、こいつに何か言ってください!」
「私達が働くにはあとこの程度の施設は必要不可欠です! どうかご慈悲をミザリクス様」
どうやらこの二人はとても仲がいいようだ。雰囲気や見た目も似ているし、この二人なら会うんじゃないかと思ったけど正解だったみたいだね。
「アルヴァーナくん、もうちょっと予算出せない?」
「無茶言わないでくださいよ! こんな人数の生活を保障するだけで精いっぱいですよ!」
「ラーキィくんは、もうちょっとコスト削減できないかな?」
ラーキィくんは眼鏡をクイッと押し上げてから、手に持っていた書類に何やらいろいろ書きこんでから顔を上げた。
「わかりました。木材を安いものにして削減するとこのようになります」
「だってさ。どう? アルヴァーナくん」
ラーキィくんから書類を受け取ったアルヴァーナくんが、眼鏡を掛けなおしてから書類に目を落とす。眉間にしわを寄せながら書類をラーキィくんに突っ返しため息をついた。
「これくらいなら少しはやりようがあります。まずあなた方の稼ぎが出るまでの食料支給の肉や魚類を少し削ります」
「そ、そんな!? 我々に餓死しろと!?」
「動物を狩り川で魚を得ればまかなえるはずです。あなた方は元騎士なのだから獣程度は狩れるでしょう? それで浮いた分を追加の木材代に割り当てます。それでどうです? それとも、元騎士でもそんなことはできないと?」
「ぐっ……わかりました、それで手を打ちましょう。それと、一つだけ訂正があります。我々の心は、元でなく今も騎士であると。では失礼します」
踵を返して去っていくラーキィくんをアルヴァーナくんが鼻で笑い、顔をしかめて去っていくラーキィくん。こらは仲が……いいのか?
それからしばらくアルヴァーナと事務的な会話をしていると、アルヴァーナくんがこちらをじっと見つめていた。
「イクリース様、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「ん? 何かな?」
「何故、人間風情をこんなところで働かせるんですか? しかも、この間まで剣を向けてきた相手を」
「うーん、何でだろうなぁ」
僕が空を見上げてそういうと、アルヴァーナくんは唇をかみしめて拳を握りこんだ。
「ふざけないでください! 皆、表では言わないようにしていますが恐れているのです! いつ背中後ろから切りかかられるかわからない相手と共に暮らすなんて……! それに、よりによって何で王国の人間なんてものを……!」
王国では何代も前から魔族の差別が行われてきた。ひとつ前の国王はそれを良しとせず、魔族の差別撤廃に力を注いでいたが、その息子に王権が譲られてからというもの、さらに激化した差別により王国では奴隷やさらにひどいことをされている魔族が山ほどいる。だから魔族の大半は王国に良い印象を持っていなかった。
「アルヴァーナくん、僕の理想について少し話そうか。僕はね、戦争ばかりを起こしているこの世界をばかばかしいと思うんだ。だってさ、今争っている全部の種族が助け合えば、とってもいい世界になると思はない?」
「そんなの……無理ですよ、そんな夢物語……」
「確かに途方もなく難しいかもしれない。けどさ、目標はでっかく持った方が人生楽しいもんだよ? 何の目標も持たずにただ生きて、死ぬよりはさ、でっかい目標にひたすらに突き進んだ方がかっこいいじゃないか。僕はそうやって生きたいね」
アルヴァーナくんを見ると、どうしたらいいんだというようにひどく混乱していた。恐らくは、上に立つ僕の言葉と自分の感情の間で混乱しているんだろう。大きく深呼吸をし、まだ拳を握りしめたままだが少し落ち着いた様子のアルヴァーナくんがまっすぐな目でこっちを見てくる。
「イクリース様の言うことは分かります。ですが、僕はまだ自分の経験した過去を忘れることはできません。これからかかわっていく中で、自分の目で確かめてみようと思います」
「そうだね。ゆっくり分かり合っていけばいいと思うよ」
「それでは僕はこれで」
そう言ってから頭を下げて作業場に戻っていくアルヴァーナくん。彼は優秀だ。しっかり自分の答えを見つけれるだろう。
「さてと。それじゃあここはしばらくアルヴァーナくんに任せて僕は僕の仕事をしようか」
青い空を見上げてぽつりとそうつぶやくと、僕は城に向かって足を向ける。
まぁ、仕事と言っても昼寝なんだけどね。