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後悔しているから、僕は全部殺す。  作者: 鬼羅
4日目、中央戦線。
39/39

道化よ去れ、幕は降ろされた。




……散乱した肉片を見ながら、ライラはライラだったものの真ん中に立つ。

「………………」

その後ろで、リチャードは静かに見つめる。

「もう、大丈夫です……」

「……そうかよ」

小さく返答し、寄りかかっていた岩から離れる。


「ウィリアムと合流するぞぉ……俺は流石にキツイ」

ITEMの精神的消耗が非常に重いリチャードは脂汗を流しながらライラの手を取る。




―――Lyla(ライラ)Saleh(サレハ)

―――16歳、女性

―――所持武器:詐術師の人形トリックスター・ジャグリング 装飾型 死因:轢死




「……っし、ちゃんとお前も情報が見えるようになったな」

目を細め、口角を少し持ち上げる。

「ありがとうございます……何もかも、お世話に」

「打算だよ、俺もあいつらも……ま、俺は打算無い関係は信用しねぇがなぁ……」

邪悪に笑みをこぼしながら頭を撫でつける。


「頑張ります……私も……」

その彼につられるように、ライラも歯を見せて気丈に笑う。

……消滅していく自分の死体を後に、二人はその場を去る。




―――★―――




「やったやった勝った勝った!」

狂笑しながら彼女は背後を振り向く。

「このぉぉぉ!」

「無駄ぁ!」

即座に反転しベディの突進をいなす。


「このっ、お前っ、アリサに何をしたのっ!」

「えぇ? わかんなーい」

クスクスと笑い、アリサの首を抱く。

「私はぁ、ただやれって言われたことを無理やりやらされているだけなの、被害者なんだってばぁ」


(……あのピンクの矢……もう消えた……どうしよう、解除方法は……)

目を細め、解決策を考える。

……炎の巨人の本体……カリンが起き上がり、疲労困憊ながらも戦線に加わろうとする。

(殺さなかった、様子がおかしい……あの矢はもしかして、意のままに操るITEM……?)

そう判断し、彼女はカリンへと走り出す。


(アリサはダメかもしれない……なら、最善はそれ以外の二人に私のITEMを発動させれば……)

「お見通しなんだよねぇ!? 『白く淡く(ホワイトリップ)』ッッ!」

「あ、ぐああああ!?」

雪の下に潜んでいた巨大な口が開き、足首から下に歯が食い込む。

「傷をつけなければ……いだだだだだだだ!?」

足首に走る激痛に9thは絶叫する。


「く、そ……傷、だけじゃ、ないのかよッ!」

脂汗を流しながら、膝を屈し涙を浮かべる。

(本気でやってくれたら、足を飛ばせたのに……ッ! やっぱり、透明化で私のITEMがばれて……!)

食い込んだ歯を見下ろしながら、引き抜こうと足を抜こうとする。

「む、無茶すんなって! やめっ! いぃぃだだだだだだ!?!?」

皮膚のずる剥ける痛みに絶叫しながら、彼女は傍のアリサの首を掴む。


「動くなっ! そ、それ以上っ、動いたら……この女を殺すっ!」

その言葉とともに、二つ目の口が雪を裂くように現れる。

閉じた歯の上に虚ろな表情でアリサは立ち尽くす。

「………………」

人質にとられ、彼女は目を細め抵抗を止める。


「忌々しいなぁ! 殺しても意味ないなんてさぁ!」

そう毒づきながら、傍に来たカリンに肩を担がせる。

(……あ、そういえばどこまで離れたら口って解除されるんだろ……撒けるかな)

そう不安を抱きつつも、彼女は森のエリアへと歩き始める。

「追ってきたら、今度はマジで殺すかんね……」

「…………」

足を挟まれたまま、彼女は悔しそうに歯噛みする。




―――★―――




「……よう、こいつが新生ライラだ」

背を叩き彼女を紹介する。


「初めましてライラさん、文枝です」

「王だ、前のよりは仲良くやろうぜ」

礼儀正しい彼女と、気さくな彼はそれぞれ挨拶する。

……辺りは血の海で、その中心にウィリアムが斃れていた。


「ウィリアムさん!?」

「……んぃ……生きてるよぉ」

片手を力なく上げる。

「……俺もこいつも動けねぇな」

ボソリとリチャードはつぶやく。


(ここでしてはいけないのは……フミエとワンを合わせて行動させることだな)

アリサのところに向かわせるのも、ウィリアムやライラの護衛も任せるには厳しい。

そして、自分とウィリアムは戦力にならない。

(無茶をすりゃ俺も何とかなるが……問題は、こいつらに勝てるか)


最悪なのはライラを連れ去らわれること。

(動かしにくい駒だが……)

「ウィリアム、こいつらに枷つけろ」

「はい、よ」

その言葉とともに、フミエの手を握る。


「従え」

「…………」

その様子を、ワンは目を細め眺める。

「洗脳かい?」

「これはそう長いもんじゃねぇよ、俺らがアリサに合流するころには、自然と解けてるだろ」

そういい、リチャードはワンに向く。


「出せ、お前のITEM……ライラの自衛に使う」

「わ、私は……」

「くく、いーよライラ、当然の処置だぜ、俺らは裏切りもんなんだしな」

快諾した彼は、チョーカーをライラに投げ渡す。

「……ウィリアム、お前はライラとこの男と留守番だ」


「おう、けぇ……」

力なく返答する彼を見ながら、二人は雪原へと駆けだしていく。

「……さてと、ライラ! そのITEMの使い方を教えてやる、まずは首につけな」

「はい」

「結局は生きててもらわないと困るからな! 本気で自衛してくれよな?」

気さくに笑いながら、彼は自分のITEMに関しての話を始める。




―――★―――




目を開け、彼女は血の気が引く。

「アリサァァッ!?」

「落ち着けベディ」

押さえつけるようにリチャードが手を伸ばす。


……日が暮れ、辺りは暗くなっていた。

「この女と来た時にはもう気絶していた、血を流しすぎで一回死んでたぞ」

「一瞬で全身嵐化で逃げ切るのは、流石だよねぇ」

茶化すようにウィリアムは笑う。


「……その後は多分お前と同じだ、脅されて動けなかった」

歯を剥き、悔しそうに顔を歪める。

「操ってんのか、あれは」

「うん、桃色の矢を刺していた……これからも気を付け……誰」

不思議そうに背後に立つワンとフミエを指差す。


「よろしくなぁベディちゃんよ、ワンって呼んでくれ」

「フミエです、よろしくお願いします」

「よ、よろしく……」

ぎこちなく、彼女は頭を下げる。




「はい、カリンちゃんとアリサちゃんでーす」

虚ろな表情の二人を9thは突き出す。

その二人に触れ、静かにエレナは単語帳に名前を書く。

「気を付け!」


「ッ!?」

「はひ!」

……意識が戻った瞬間、アリサはITEMを……。

「き、を、つ、け」

へらへらと笑い、額を指で突く。


「戦力は増強したなぁ、あはは!」

「そうだね……一人ちょっと変だけど……」

ちらりと5th……ドールがカリンを見る。

先程まで普通だった目や口、鼻や耳から炎が燃えている。


……別段、彼女は焼かれている苦しみを感じているようには見えない。

「……しまったー……」

「この、女……」

忌々しそうに9th、エレナ、カリンをアリサは睨む。


「仲良くしようぜ彼女、肝心要は生き残ることだろ? 俺らは手足として手ぇ繋いでた方が生き残る確率は高いと思うぜ?」

そう笑いながら4th……バレットが説得にかかる。

……二人の名前はエレナが単語帳の書き換えでより直感的なものに変えた。

「そうそう、バーナーにエッジ」


「あぁ? もしかして私の事かよ? っち、だっせぇな」

「……あ゛ぁああ……」

彼女の暴言に反応したのか、前髪が異様に長い……いや……。

「ヴゥゥゥウウウ……」

「……最悪だお前ら」

顔の前後ろが逆のライラが、アリサの……エッジの喉を掴む。


「いーひひひ、そうだよー、私達は悪の集団さ、生存競争に善悪はナンセンスだと思うけどさぁ?」

「楽に勝てる方が最高だと思うけどぉ?」

ヘラヘラとエレナと9thは笑う。

「……まあ俺も騎士様ってがらじゃねぇ、アウトローはアウトローだって割り切った方が楽だぜ」

「そ、そうそう、頭良く戦いおう!」

「……うあああ……」


趣味の悪いホラーショーだと思いながら、彼女は残してきた仲間を思う。

……滅多なことではベディは死なない、ウィリアムやリチャードも。

ふと、隣に立つカリンを見上げる。


「…………ねえ、熱くない?」

「いいや、別に」




―――★―――




……目を開けると、満天の星空が彼女の目に飛び込む。

「わぁ……綺麗……」

「呑気でよろしいことだな」

脇腹を蹴られ、少しせき込む。


少しだけ睨み、そして顔を綻ばせる。

「トーキ」

「よお、砂風呂はどうよ」

「ヘソまで砂まみれ」

そうか、と言い彼は左手をさし伸ばす。

……そこで彼女は、自分の折れた腕に添え木が当てられていると認識する。


「今五枚張りで骨の治りも早めてる、それ折るなよ、枯れてるから脆いし、そもそも砂漠にそんなにない」

「うん、ありがと」

喉を鳴らし、彼は大きく息を吐く。

「……負けだな、俺は……あんなにでかい場所でスコアはゼロだ」

自虐的に笑い、砂に大の字に寝転がる。


「沙夜って彼女がいたんだ……中学校から付き合ってたんだけど……自殺、しようとしてたんだ、沙夜が」

「……どうして……?」

「理由は一個じゃない、だが……ま、一番の原因は……俺が最低だったところだろうな」

「浮気?」

「ばーか」


立ち上がり、ズボンについた砂を叩く。

「で、こいつで手首を切った女の子ともつれ合って、首をな」

「ふふ、ドジ」

「うるさいな」

そう笑い、彼女はもう一度星を見上げる。


「……萎えちゃった?」

少しだけ、返事が遅れ……。

「ああ……最低限、俺は二日前に戻れる……それでどうにかするさ、まずは刃物を取り上げるところからだな」

「うん、それがいいよ……本番はあくまで、生き返った後、なんだしね」


軽くリサの頭を小突き、彼は森へと歩き出す。

「ありがとな……お前だけは、生き返らせてやりたいよ」

「ふふ、私も」

……男女の愛、にしてはお互い純にすぎた。

人間としての好悪、彼らはお互いに……強い尊敬を向け始めていた。


「他人の為に動けるお前のほうが、きっと有意義なんだろうな」

「恋人を助けるなんて、それこそヒーローっぽいよ、このこのぉ」

二人は久しぶりに、年相応の笑顔を浮かべる。




―――★―――




「一人の参加者のプレゼンを聞いてみたけれど……やっぱり僕も動いたほうがおもしろいよね」

放し飼いじゃ、ダメだ、グルグルグルグル、掻き回さないとねぇ。

殺すのも生かすのも、ほどほどにほどほどに、みんなを傷つかせないとね。

全員に闘志と意味を与えないと。


「堆積も上澄みも作るのはもーちょっと後、序盤はずっとずっと混沌になってもらおうじゃあないか!」

そのためにはやっぱり参加者を使うのなんかダメだ。

今回はもう少しで拍子抜けな結果になるところだった。


「計画は始まる直前がピークだね」

反省反省、ポーズだけでもしていこう。

否、するべきは反省じゃない……次の計画を立てることだ。

楽しいのは計画している段階、ああ、なら矢継ぎ早に計画を立ててショボい花火でも数うちゃ空の華じゃないか。


「だはははは、みんな存分に振り回されてくれ!」







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