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第48話 ドラゴン その2

今回は、ドラゴン対アポロ一行の決着です。


ゆるく読んで頂けると嬉しいです

アポロたちの前に現れた、ドラゴンは漆黒の翼を羽ばたかせていた。その姿は尊大にして雄大で、見る者に畏怖の念を抱かせるものだった。


シグリ

「ドラゴン君?」


エンキ

「あれが、お前の言ってたドラゴン?」


シグリ

「うん…ちょっと大きくなって雰囲気変わったけど…間違いないよ」


アポロ

「…あれが」


シグリ

「うん」


アポロたちと対峙するドラゴンは、名乗りを続けていた。


ドラゴン

「我は、地獄より出でし…」


シグリ

「ドラゴン君!!!」


ドラゴン

「む?我の魂の咆哮を遮りし者…あ!!!」


エンキ

「おいみんな!『あ!!!』って言ったぞ!」


ティア

「…キャラがちょっとブレましたね」


シグリ

「あなた…ドラゴン君だよね?」


ドラゴン

「…シ…グリ?」


ドラゴンは、瞳を大きく見開いた。


ドラゴン

「何故ここに?」


シグリ

「ドラゴン君に会いにきた…謝りたくて」


ドラゴン

「ぼ…我に?」


シグリ

「そう」


ドラゴン

「…」


シグリ

「…」


ドラゴン

「…………我は邪竜リン」


シグリ

「一人称『我』にしたんだね。悩んでたもんね。「俺」にするか『我』にするか」


ドラゴン

「我は悩んでなど…」


一人と一体に微妙な空気が流れた。


シグリ

「ごめんね…『ドラゴンは飼っちゃ駄目って言われた』なんて言っちゃって。ドラゴン君を傷つけちゃって…」


エンキ

(…あいつそんなこと言ったのかよ)


ティア

(…酷いわ)


アポロ

(…ちょっと酷いな)


シグリ

「私、最低だよね…」


ドラゴン

「謝る必要などない…」


シグリ

「…ドラゴン君」


次の瞬間、ドラゴンの怒気が大地を震わせた。


ドラゴン

「我は悟った! シグ…主との関わりで、魔物と人間は相容れぬと! 我は邪竜リンドヴルム。貴様らを屠る者だ!!」


アポロたちは少し間の抜けたやり取りに油断していた。竜の咆哮は、その油断を吹き飛ばすものだった。


アポロ

「みんな!やるぞ!」


シグリ

「待って!もう少し話させて!」

シグリは、身構えるアポロたちを手で制し、ひとりドラゴンの眼前へと進み出た。

ドラゴン

「ぐおぉーーー!」


シグリ

「…ドラゴン君」


ドラゴン

「ぐおーー!」


シグリ

「ドラゴン君!!!」


ドラゴン

「ぐお…」


シグリ

「聞いてほしいの……」


ドラゴン

「…」


シグリ

「…二人で冒険楽しかったよね…悪代官を懲らしめたり…龍神ドラゴンオブドラゴンの加護を貰いにいったり…村を救うために、呪いの杭を抜きにいったり…」


ドラゴン

「別に…」


シグリ

「私は…暗い女の子で…自分の心の扉に鍵をして…閉じこもってた…そんな私を、変えてくれたのはドラゴン君なの!私の目の前に急に現れて、外に連れ出してくれた!いろんな世界を見せてくれた…でもそんなドラゴン君に酷いことを言って…傷つけた…」


ドラゴン

「シグ…リ」


シグリ

「…許してなんか言わない…ただ、謝りたかった…ごめん…ごめんね…うっうぅ」


シグリの大きな瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


ドラゴン

「シグリ…泣くな…そんなに泣くと…ぼ…我も悲しく…うぅ…うえーん…うっう…えーん」


アポロ

「!?」


エンキ

「ドラゴンが泣き出した!?」


ティア

「子どもみたいな泣き方…」


シグリ

「ひっく…ひっく…ごめんなさい…ドラゴン君」


ドラゴン

「シグっ、シグっ…うっう…本当は…シグリに会えて嬉しかった…嬉しかったんだ…うわーーーーん」


次の瞬間、ドラゴンの身体から眩い光が放たれた。


エンキ

「うわ!何が起きるんだ!?」


ティア

「き、聞いたことがあります…ドラゴンは成長する時、光を放つと…」


アポロ

「このタイミングで?」


やがて光が収まると、ドラゴンの姿が露わになっていった。アポロたちは、その姿を見て言葉を失った。


アポロ

「…」(変わってない!?)


エンキ

「…」(何も変わってない!?)


ティア

「…」(変わってないわ)


何も変わっていなかった。


ドラゴン

「シグリ!泣かないで!僕はもう怒ってないから!」


否。ドラゴン性(人間性)が成長していた。


シグリ

「ひっく…ひっく…ドラゴン君」


ドラゴン

「シグリ…僕に謝るためにこんなところまで来てくれてありがとう。また会えて本当に嬉しいよ」


シグリ

「ひっく…私も嬉しい」


困難を経て一人と一体は晴れて仲直りすることとなった。

そんな感動的な一幕に、ティアが口を挟んだ。


ティア

「すみません…さっきと口調が…さっきは自分のこと、『我』とか『屠る』とか…」


ティアは気になったのだ。


ドラゴン

「成長したからね。やめたんだ。ほら、思春期になる病みたいなアレさ」


ティア

「…あ、あぁ…なるほど、ありがとうございます」


エンキ

「…なんか、あれだな。戦うって感じじゃなくなっちゃったな…どうするんだ…これは」


ドラゴンは少し考えて答えた。


ドラゴン

「この門は通らせてあげるよ」


アポロ

「いいのか?」


ドラゴン

「うん。だけど…一つ条件がある」


アポロ

「なんだ?」


ドラゴン

「シグリは連れて行かないでくれ…君と魔王様の戦いに巻き込まれないためにね」


シグリ

「ドラゴン君…私は」


アポロは、シグリの言葉を遮った。


アポロ

「わかった。シグリは連れていかない。それでいいのか?」


ドラゴン

「ありがとう…シグリは安全な場所に僕が連れて行く」


シグリ

「アポロ…」


アポロは、シグリの肩に手を置き語りかけた。


アポロ

「シグリ…君はこの旅の目的を果たしたんだ。だから、この先は僕たちに任せてほしい。いいね」


アポロの澄んだ眼差しに、シグリは首を縦に振ることしか出来なかった。


シグリ

「みんな、絶対に…絶対に…無事に帰ってきてね」


エンキ

「当たり前よ」


ティア

「大丈夫です。安心して待っていてくださいね」


アポロ

「さぁ、リンドヴルム。シグリを連れて行ってくれ…」


ドラゴン

「あぁ…人間の勇者…一つだけ言っておく…魔王様は負けない」


アポロ

「…そうか」


三人は、シグリを背に乗せて空の彼方へ飛び去っていくドラゴンを、見えなくなるまで見送っていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます



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