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アンブレイカーズ  作者: MRプロジェクト(詳しくはプロフィールにて)
第2章「強敵」

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「16」能力の代償

[影怪人]との対峙から1週間と1日が経った。


1年360日、ひと月30日、1週間6日、1日24時間。大怪獣に合わせて作られた暦には、4日働き2日休むという動きが取り入れられていて、それが割と人間に合っていた。


俺が過ごした7日間は、文字で起こせば早く感じるがその実、604,800秒の間に行った呼吸は地獄を味わう為の息継ぎの時間でしかなかった。


あの一件から翌日。俺は手作りのいなり寿司を100個、ガリ1キロを櫃に収め、玉露の茶葉と10本の魔法瓶にお湯を詰め込んで遠い山奥にある寂れた神社の御社殿に入った。


そうしてカビや木が降らす緑緑しい毒素の香りに肺を染めれば、後は九尾狐様に体をお譲りした。

その日は丸一日いなり寿司とお茶を食す時間となった。


翌日はトイレフレンズだ。

出す物が出ない程高効率な体は良い事なのだけれど、ほんとずっといなりの油分と甘さが舌から抜けて出てってくれない。


それで言えば翌々日の3日目。

大蟹様に体をお譲りした時、用意した蟹を殻ごとたらふく食べていた。そもそも大蟹様の生まれが生きたまま乱暴に食され、身が残った状態で廃棄されて山となった蟹の残留思念達だ。だから大蟹様の食事は死んだ蟹を余すとこなく食べる事であり、蟹を食すことは共食いではない。


それはそうと蟹が好きなのは事実。

お陰様で俺に体の主導権が戻ってからは寝ても覚めても蟹の臭いにやられて死んだ方がマシだと泣いた。


6日目は唐傘様だ。

唐傘様のご要望は大量の荏の油で作ったお風呂に入る事。

お肌や傘のハリが出るから入りたいらしい。

しかし唐傘様が十分に堪能した後は俺の体へと戻ってしまう。


つまり油の中に俺が投入された事と変わらない訳で、油臭いしヌメヌメは取れないし耳の中の油がしつこく残って大変で仕方なかった。


そんなこんなの1日おきのお礼参り。

ついぞ来た7日目は金城さんだった。


金城さんとは契約をするつもりはない。本人もその意欲もない為成仏の為雀ちゃんと贔屓にしている情報屋の案内の元、彼のご家族の元へと向かった。


「初めましてぇ…あっすみません佐伯という者です。実は……」


警戒されないよう、そして警戒されても話を聞いて貰えるよう可能な限り下手に言葉を連ねた玄関口。

奥のリビングにあるベランダから見える、陽が夜のパレットに滲んでいく夕景色。


初めこそ酷い顔をし追い返されそうになったが次々と過去の話を言い当てて、最後にプロポーズの言葉を伝えれば「覚えてないわよ、一言一句なんて」と涙を流した奥さん。

俺の常なる態度と金城さんに似た顔、体つき、動きや喋り方の癖、訪問動機からご自宅に招き入れてくれた。


そうして出して頂いた茶や菓子を啜る暇もなく2人の生活空間を覗き見て回り、奥さんと話をし、アルバムや日記を開いて過去を訪ね、笑いを重ね合った。

その後娘さんが帰宅した。


「あい子……ほんとに、大きくなったな……」


当時7歳、小学校に上がったばっかの小さな子だった。

だからこの11年の歳月が育てた変化に彼は涙ぐまずにはいられなかった。


が、しかし彼女自身は気味悪るがる様子を崩さなかった。まぁそりゃあそうだ。

その理解を元に、通報をしてもいい事や拘束しても構わない事、娘さんと金城さんしか知り得ない話をすれば怪訝な姿勢を崩さないものの、成仏するまでという約束の元この家にとどめ置いてくれる事となった。


そうやって家族団欒と話す中で、バトルブレイクダンスを続けさせてくれた事への感謝と謝罪。

胸中で雑草塗れになって繁茂していた気持ちを全て刈り取る様に、悔いを話し、嘆いた。

2人が生きていてくれた事を泣きながら感謝し、愛を伝えた。


結局晩には帰る予定だったのだけれども、ベランダのカーテンを払い引けばこの頬に朝日が抱き着いて離れなくなっていた。


「いるべき所に帰るわ」


その一言に娘さんは歳不相応に涙を零し、当時のように泣き叫んだ。


「お父さんの家はここだよ!!」

「……ありがとうな。けど、俺はまたお前たちに会いたいから、行くな」


金城さんは背を向けたままはっきりと大きな声でそう言った。

縋る娘さんの影を振りほどき、奥さんの指手をすり抜けていく。


「墓参り、毎年来てくれよな」


玄関の鉄枠。それを跨ぎ、超え、その先にあったハルキゲニア。俺の頬を明るい涙が伝った。


『これは男の約束ってことで内緒にしてくれ。……本当にありがとう、陽介君』


……そんな気がしただけだ。

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