「1」外周ヒーロー
悲鳴が轟いた。
家が半ば爆ぜ飛んだ。
散ったガラス片と瓦礫が空を優雅に舞った。
火砕流の様に道路を貫き家を破壊した。
たった1匹の一挙手一投足で急拡大していく被害模様。
しかし急行するヒーローの姿も、影も、色も、見えない。
いや、正しくは急行できるヒーローの人員が足りていない、これに尽きる。そしてそれによって生じた現状は、壁外で暮らす所謂外周民の定めでもある。
怪人や怪獣の襲撃に対応するアンブレイカーズ。
その定期巡回の手を逃れ外周より外の世界からやってきた3m超えの赤色の猿の怪人。
磯巾着の様な体毛を激しく上下に揺らめかせながら縦横無尽に家を道路を電柱を蹴り走る。
送電線はカシュカシュッと言う音と火花をあげ千切れていく。
瓦礫に圧し潰される者、長く赤い体毛に撫でられ全身の骨を複雑に砕かれた者。怪人が颯爽と走り、口を血生臭く染めるよりも自分勝手に走られる方が被害は拡大していっている。
壁内と違って高い建造物が少ない外周は、つまりは中小企業や住宅地ばかりと言う事で、貧民から中流までに属する家計保有者がほとんどを占めている。
生産活動も活動安定性も壁外より格段に劣る外周民の守護は人手不足の今あと回しにされやすい。
「作戦の確認。静流の【長距離転移】で[猿の怪人]の真正面に三月を配置。三月は【無敵】を使いつつ注意を引いて反撃を伺う。その間に俺が静流の能力を活用しながら背後から接近。【意識反転】を使って錯乱させてる間に四肢をもぐ。静流は即時目標を空へ殴り飛ばして、三月の【無敵】の力の解放で怪人の首を切断する」
長身の男の確認に顔が似ている2人の女性は頷き、そうして黒色の外套を羽ばたかせ、先の作戦を速やか且つ被害を極々最小限に抑えながら10秒足らずで怪人を討伐した。
住民達の慣れた避難行動によって野次馬も悲鳴も足音もない。そこにいたはずの3人は路地裏に入ると白い光に包まれて姿を消した。
そうして、ただそこに静けさだけが残った。
可能な限り速やかに騒ぎの火元を消化する。
本来その役を買っているアンブレイカーズの活動を秘密裏に代行する組織。
非公式活動を行うその者達を人はこう呼ぶ。
外周ヒーローと。
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