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平穏に暮らしたい俺は、いつしか騒動に巻き込まれる。  作者: 夘月
CHAPTER4 怪しき瞳とココロの鏡
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調査を開始せし

 泰牙と別れた後、俺は小松主任に電話をかけた。忙しいかもしれないと考えたが、すぐに報告できるならそうするほうがいいのではないのかと考えた故だ。



『私だ。どうした黒宮』

「小松主任。今お時間よろしいですか?」

『構わんが。何かあったのか?』

「はい。主任は最近起こっている、連続失踪事件についてどう思っていますか」

『気になってはいたところだが……。しかし急にどうしたんだ』

「山水にいる執行班の友人から事件の詳細について聞きました。他のメンバーに伝える前に、主任に報告したいと思いまして」


『成程。なら月曜日の放課後、皆がいる場でお前の口から直接報告させてくれ。正直今は、ゆっくりと話を聞けるだけの時間はないんだ』

「わかりました。提供されたものこそ多くはないですが」

『最初はそういうもんだ。ではまた後日に』

「はい。失礼します」



 電話を切った後、俺は一つ溜息をついた。


「にしても。俺こういうの得意じゃないんだけどなー」


 レポートとかまとめる作業って、好きじゃないんだよ。まぁあれこれ言っても仕方ないし、鞭入れて何とかしようか。自分にそう言い聞かせながらレジ袋をごみ箱に捨て、バイクにまたがって帰路についた。




 そして月曜日。もらった情報を、休日の間に何とかデータにまとめて学院に持ち込んだ。しかし何というか、珍しく徹夜していたもんだから疲れが残っていて仕方がない。すぐにでも欠伸が出そうだ。


「どうしたの蓮。珍しく眠そうな顔して」

「報告書というか資料をまとめていてな。普段やらないことするとどうも疲れるみたいでな」

「あぁーわかる」


 いつもの三人で登校しているときも、眠くて仕方がない。このまま歩いて眠ることさえできそうだ。

「お兄ちゃん普段パソコンで作業することってあんまりないからねぇー」


「まぁ基本はネットサーフィンだからなー」

「で、その辺は何とかなったの?」

「何とか。今日持ち込むものだからな」

「お疲れ様ー」


 流石に時間が経てば目も覚めてきたが、一限目の苦手な古典の授業で俺としては珍しく、少しばかり居眠りしてしまった。なんとも情けない。



 でもって放課後。応接室にメンバー全員が集まった。こうしてメンバーの全員が集まることってあんまりないような気がする。俺が執行班に入ったときと、以前の任務の報告があったとき…。けっこう少ないような気がする。


「にしても急にどうしたの蓮。君から報告あるなんて」

「山水にいる執行班の友人から情報をもらってな。報告しておく必要があると思ってな」

「あぁ。成程」


 用意されたパソコンにメモリを差し込んで、慣れない手つきで用意を進める。二、三分程してやっと完了した。


「お待たせしました。報告を始めさせていただきます」

俺の方に、主任を含め七人の視線が集まってくる。なんとも言えない緊張感が突き刺さってくる。一呼吸置いてから説明を始めた。

「まず最初に言っておきますが、急ごしらえで作成した資料と貰った情報も少ないので、あまり期待はしないでください」

「黒宮くーん。そんなにぎこちなくしなくてもいいよー」


 ありがとう。と心の中でそう言いながらこくんと頷き、口元をにんまりと動かして見せた。一息はいてから報告を始めた。


「で、では始めさせていただきます。今回取り上げるのは、女性の連続失踪事件。皆さんもニュースなんかで耳にしたことはあるかと思います」

「初耳だ」

「え?」


 そう答えたのは、班長である天王寺さんであった。


「あまりニュースとかそういうものは見ない」

「天王寺、お前なぁ…」

「それでも執行班の班長ですか…」

「ま、まぁともかく。報告を続けます」


 正直なところというか、それ以前の問題な気もするが、これ以上このことで話していてもどうしようもないと思い、無理やりに報告を続けた。

 リモコンを操作してスライドを切り替える。今度は四人の女性の写真が載ったものだ。


「この事件についての情報提供は山水高校にいる執行班の友人、桐生泰牙からいただきました。先に言ったとおり、これまでの被害者はこの写真にある通り四人全員が女性。十代後半から二十代の若いという点以外には、髪型がポニーテールであるというのが、現時点での共通点です」

「えっ、マジで?! どうしよどうしよ!?」


 崎田さんが慌てて自身の頭を両手で抑えながらおろおろしだす。そらそうだよな。ポニーテールの人物ばっかり襲われているって聞いたら、同じ髪型している自分も狙われるかもしれないって不安にもなるよな。


「ともかく今は落ち着いてください。ここで慌てたとこで何にもならないですから」

「そうだ崎田。今は大人しく黒宮の報告を聞くべきじゃないのか」

「うゆうー……」


「次に今わかっている各被害者の詳細について説明します。まず向かって左上から渡辺美鈴。この事件の最初の被害者で、兼城大学で理工学を学んでいる三年の二十一歳。実家の有る長野から進学してきたそうです。続いて右上が絢瀬愛乃、左下が松浦菜々香。二人は俺達と同じ高校生。月陵高校に通う三年生です。四人目の被害者、山科京子は信用金庫に勤めている二十七歳。大学時代からの付き合いの旦那さんと、もうすぐ二歳を迎える娘との三人暮らしだそうです」


「こうしてみると、かなり特色にばらつきがあるわねぇ。何かつながりはあるの?」

「それなんですが、この四人に接点があるのかということになると、二人目、三人目の被害者である絢瀬愛乃と松浦菜々香が同じ高校に通っているという以外には現時点の調査ではないとのことでした。また、二人に交友関係はないそうです」

「こうなると、犯人の目的が読めませんね」

「愉快犯の犯行ではないかというのが、山水側の現時点での推測です」

「愉快犯か……」


「それとこの事件の調査に関して、山水高校の執行班一同が近く伺うかもしれないということを聞いています」

「その件については、俺のほうからいいか」

「はい。お願いします」


主任から話があるとのことなので、俺は一歩下がる。


「土曜日に黒宮から連絡があった後、山水のほうから電話が来てな。今週の水曜日、すなわち明後日に合同会議を開けないかという申し出があったんで応じることにした。場所はうちの応接室、時刻は十六時半からだ。各自予定を開けておいてくれ。黒宮、報告を続けてくれ」

「はい。と言いましても俺から話せることは以上です」

「そうか。ご苦労だった。この一件についてはうちでも重要事項として調査にあたることに決めた。今日は各自この事件について今一度確認しておくように。何か聞いておきたいことはあるか」


 手を挙げたものはいなかった。


「そうか。では今日はこれで解散だ」



 報告が終わるや否や、崎田さんのほうに目をやると、彼女はそわそわしていて落ち着かない様子であった。そうだよな。心配になったので、俺は崎田さんのほうに近づいた。


「なんだ。お前が居眠りとは珍しい」

「徹夜で作業してて……あべやぁ!?」

「目、覚めた?」

「お陰様で(あのデコピン結構痛てぇ)」


無理に起きようとするよりは、逆に少し寝てしまった方がいいとも聞く。

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