第5話:最適化の失敗——世界樹の悲鳴
翌日。
「前世の俺」は、最適化計画を実行した。
世界樹のマナ循環を、完全に制御下に置く。
無駄を一切排除し、効率を100%にする。
その結果——
世界樹が、悲鳴を上げた。
『警告:世界樹の異常を検出』
『マナ循環:完全停止』
『活性度:87% → 12%(急降下)』
『枯死までの推定日数:412日 → 3日(!)』
「何が起きている……!?」
「前世の俺」が、叫んだ。
「計算では——こうなるはずが——」
「カイ!」
若きレオンが、駆け寄ってきた。
「世界樹が、死にかけている……! お前の『最適化』のせいだ……!」
「馬鹿な……俺の計算は完璧だった……」
「完璧……?」
レオンが、「前世の俺」の胸ぐらを掴んだ。
「お前の計算には、一つだけ——致命的な見落としがあった」
「見落とし……?」
「世界樹は、機械じゃない」
レオンの目に、涙が浮かんでいた。
「世界樹は、生きている。命がある。心がある。お前は、それを計算に入れなかった」
「心……?」
「世界樹は、『無駄』を必要としていたんだ。人々の祈り、感謝、喜び——それらが、世界樹の『心』を支えていた」
「そんな……非効率的な——」
「非効率でも、必要だったんだ」
レオンが、「前世の俺」を突き放した。
「お前は、数字しか見ていなかった。世界樹の『心』を、見ていなかった」
「前世の俺」は——崩れ落ちた。
「俺は……世界を……殺してしまった……」
世界樹が、ゆっくりと——枯れ始めていた。




