表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血汐の群れる朝が来る前に  作者: Masa plus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/17

(第四話)遥かなる神話の時代 その1

 遥か昔。あるのは太陽だけで、他には何もなく混沌としていた世界に、『万神の始祖』オメテオトルが降り立った。


「この天地に恵みを齎す者たちよ、地の果てにて降り立てよ――」


オメテオトルがそう唱えた時、何もない世界の東西南北の果てに、小さな光が生まれた。やがてそれは大きくなり、人にも似た形になった。


「……お?」


生まれたのは、人のようで人でない者、後に人間が”神”と呼ぶ存在だった。


「――うん」


神々はオメテオトルの”音なき声”に導かれるかのように、世界の真ん中へと歩いて行った。



 集まった神々。だがそこにはオメテオトルの姿はなかった。


「生まれたのか。『原初の四柱』たちよ」


「!?」

声が聞こえ、四柱は空を見上げる。


「ん?」


天界にいるオメテオトルは目を丸くする。


「1、2、3、4……5?おかしい……東西南北に一柱ずつ生んだはずなのに、もう一柱いる……?」

 

―――


「東に生まれしは豊穣の神シペ・トテック、南に生まれしは風の神ケツァルコアトル、西に生まれしは戦の神ウィツィロポチトリ、そして北に生まれしは、闇の神テスカトリポカだ」

「それ、聞いたことある」

「それから……死者を冥界へ導く神ショロトルもお生まれになった」

「ショロ……トル……」

「ケツァルコアトルの双子の弟君だ」

「……」

テパは黙ってシンの話に耳を傾けているが、心なしかそわそわしている。

 

―――

 

「ケツァルコアトル、お前の後ろにいる者は誰だ?」

「あぁこいつかぁ?ショロトルってんだ。双子の弟ってやつ?」

「おい……」シペ・トテックが苦い表情で言う。

「ケツァルコアトル、不躾な言い方はやめろ」

「えーいいだろ?気がついたら俺、こいつと腹が繋がった状態になってたんだ。だからそこを切って、二人別々になったってわけだ」


(その後もオメテオトルと四柱の間で、自己紹介を兼ねた話が続いた――)

 

―――


「ショロトルがお生まれになったのは想定外だったそうだが、とりあえずオメテオトルは『原初の四柱』の誕生を喜ばれた。そしてこう仰った――”お前たちのうち誰かが太陽の座に就き、この世界を繁栄させよ”、と」

「ふーん……」

「それで神々は、誰が太陽となるかの話し合いをしようとしたんだ」


―――


「で、一体誰が太陽になるんだ?」

「シペ、いつの間に纏め役みたいになってんだ?」ケツァルコアトルが揶揄うように言った。

「ケツァルコアトル、ふざけないで真面目にやれ!」

「ううぅ怖いぃ……」ショロトルは兄の後ろで蹲っている。

「はあ」ウィツィロポチトリが溜息をついた。

「くだらないことでいざこざなど起こすな。早く太陽になる者を決めないと……」


(ガバッ!!)


「!!?」

「俺だ!俺が太陽になるんだ!!」


驚く三柱、そして怯える一柱の前で、闇にも似た艶めきの鏡が横切った。太陽とは真反対の色をしたそれは、瞬く間に強烈な光を放った。


「うっ……!」


シペら四柱の神々は、思わず目を手で覆った。あまりに強烈な光を直視できなかったのだ。皆わかっていた。話し合いもせず、強引に太陽の座に就いた者が誰なのかを――。


「テスカトリポカ……」


神々は不満を持ちつつも、強大な力を備えた彼に、誰一人として異を唱えることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ