遙かなる望郷の地へ-69◎「深まる懸念9」
■ジョフ大公国/宮殿/大広間
私は倒れそうになるレムリアの身体をささえながら、彼女の様子を見てとる。肉体的に傷を負っているようには見えなかったが、いわゆる“精神的な痛手”は少なからず受けているように感じられた。そっと、彼女の額に手を翳す。
――“癒しの手”
聖戦士(Paladhin)なら誰もが使える“癒しの技”だが、普通はいわゆる“肉体的なの負傷”を癒す技であり、“精神的な痛手”を癒す技ではけしてない。
しかし、“炎の鎧”や“雷電”、“震電”といった魔導武具を得て、自らの中に眠る“力”を引き出せるようになるために、“心磨技練体斉”──すなわち、“心”を磨き、“技”を練り、“体”を鍛えること──が必要であると知り、そうした鍛錬を日常的に行うようになって以来、私にはずっと感じていることがあった。
“心”“技”“体”。その一つ一つは、けして別々の存在ではないということだ。それらは不可分であり、互いに繋がっている。
“ならば・・・。そして、それゆえに・・・”
私は、彼女との“心の絆”を確めるかのように、自らの中に湧き上がる“力”を彼女の“心”に投射する。
あるいは、それは私の単なる思い込みに過ぎないのかもしれないが、同時に確信にも似た“何か”が感じられることも事実だった。
「・・・レムリア。大丈夫か?」
私は、静かに声をかける。その声に多少不安げな音色が残ったとしても、それは無理からぬところだろう。