遙かなる望郷の地へ-68◇「公都攻防戦3」
■ジョフ大公国/宮殿/大手門
「えぇ! 要塞線は囮ですか!」
素っ頓狂な声を上げたのは、軽歩兵第六連隊を率いるフィリップ・コルベール。上背がないことを何時も気にしている伊達男である。
「聞き違いじゃないよ」
何と言われても何処吹く風。涼しげな表情の儘、ツィーテンは説明を続けた。
「要塞線を築いても、取り憑かれたら早晩必ず数で圧倒されちゃうよ。トリアノンさんたちの攻撃が効果を発揮するまで、少なくとも二回は相手を撃退しなきゃね」
「しかし、予備戦力も無い状況で、どの様にしてそれを実現するのでしょうか?」
恐る恐るトゥーロンが聞いた。
「簡単さ。その為の“要塞線”なんだから」
事無げに言うツィーテンの計画は仰天モノだった。トラップ満載の要塞線を公都正面に構築するが、これは相手を呼び込む為のもの。要塞線の援護で、そこに張り付かせる戦力を最低限まで落とし、主力の重歩兵で相手方の後方を攻撃する、と言うモノだった。
「フィリップの猟兵には、一番旨いルートを捜して貰うのが仕事さ。あくまで、奇襲効果を期待するからね」
「・・・なるほど。私は、公都前面の要塞線に籠もり、相手を可能な限り引きつけろと」
「そのとーり。但し、重歩兵が攻撃を開始したら、一拍置いてカレンも打って出てね」
「了解です、司令官代理殿」
三隊長の口調が微妙に変わった。へろへろした外見+言動ながら、若き戦略家の誉れが高いこの近衛騎士はやっぱり頼りになる、と思ったからだ。
「感服しました、ツィーテン殿」
実直なジャン・バルトも感嘆したように言う。
「いやだな〜バルトさん。単なる思い付きですと、お・も・い・つ・き」
「市民の協力、早速取り付けましょう。ところで、カイファートさまが民兵の組織を進めていますが、これはどの様に協力させましょうか?」
「弓を射る事が出来る人は、カレンの軽歩兵と一緒に射て貰いましょう。後の人たちは、要塞線の構築の手伝いに回ってください」
「わかりました」
「オッケイです。では、直ぐに取りかかりましょう!」
「「「「「了解っ!」」」」」
三隊長にバルト、そしてあれよあれよという間に決まってので口を出す暇の無かったゴーター卿も和して言った。その声は、高らかに空に響いた。




