遙かなる望郷の地へ-48◆「閲兵式2」
■ジョフ大公国/宮殿/廊下→大手門
ジョフの公都、ゴルナ市の大手門前には、騎兵と歩兵の集団が集結していた。大手門から向かって右側にジョフ軍、そしてその隣にコーランド北遣軍が整列している。ざわざわとしていたその場の雰囲気は、グランがジャン・バルトとトリアノン・レスコーを伴って大手門より現れた時点でぴたりと止まった。ジョフの戦士達は既に見慣れているが、コーランド軍はグランのその巨大な軍馬“黒王”に多少驚いている様子が見受けられた。
グランの背後に、それぞれの軍馬で付いてきているジャン・バルトは傍らを進むトリアノン・レスコーと互いに一つ頷き合うと、一気に前に出た。
「ジョフの戦士達、並びに同盟国コーランドの戦士達よっ! ジョフ救国の大戦士、アルフレッド・グランツェフ殿であるっ!!」
ばっと手を振って後ろに立つグランを指し示すと、更に大音声で続ける。
「我らを率いる者の声を、心して聞けぃ!!」
「おぉぉっ!!」
ジョフ軍から盛大な、そしてコーランド軍からも控えめなどよめきが聞こえる中、ジャン・バルトはグランの斜め後方に下がり、自分が主と仰ぐ大戦士に道を譲った。
「先触れ、ご苦労様です」
「いや、何。これも小職の勤めですわ」
昂然と顔を上げたまま、ジャン・バルトは隣に立つトリアノン・レスコーに囁いた。
「ジョフ軍の正面に立っているのがLAGですね」
「左様。ジョフ最強の騎士達にして、大戦士殿の信頼も厚い親衛部隊です」
「コーランドで言えばギャルド(近衛騎士団)の立場にある騎士の方々ということね」
「いかにも。」
思わず誇らしげに胸を張ってしまうジャン・バルトに、トリアノン・レスコーは微笑んだ。そう言う彼女も、コーランド王朝で24騎にしか与えられていない、ジューヌ・ギャルド・シュヴァリエ(近衛騎士)の位を女王から拝命している逸材だった。ギャルドの白い正装に身を固めたトリアノンは、まこと凛々しく見えた。