遙かなる望郷の地へ-38◆「心の迷路」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
一通りの役目を終え、室内が喧騒に包まれ始めたころグランはどっか椅子に腰を落とした。
「やれやれ第一段階は無事終了と言ったとこか・・・」
天井を眺めながら独り言を呟くと、隣でレムリア姫と話をするレアラン姫を眺める。
“エリアドはレムリアと行くんだろうな・・・
まぁいい、他の連中にも自分の思うところで戦ってくれればいい・・・
此処まで巻き込んでしまった俺が言うのも何だがな”
グランは、苦戦が予想される戦闘を前に僅かながら気を抜ける一瞬を楽しんでいた。
そして、一つ深呼吸すると、会話を終えたレアラン姫に話し掛けた。
「私は既に1年分の勤勉と言うものを使ってしまったよ。
・・・この戦いが終わったら・・・」
「・・・終わったら?」
大きな瞳を見開くと、グランの言葉を繰り返すようにレアランは聞き返した。それを見たレムリアは小さく笑みを浮かべるとその場を離れ、エリアドの元へと歩いていった。
“邪魔をしては、馬にでも蹴られそうね”
でも、そんな温かい心があるからこそ、そんな想いを守ろうと思うからこそ戦える──そう強く思うレムリアだった。
グランは、レムリア姫の態度を見て改めて自分が何を言ったのかに気がついた。
気が抜けていたからなのか、半ば独り言のつもりだったのか、今まで何度と無く胸の内でのみ繰り返していた想い。それに自分勝手な屁理屈を重ねて今に至っていた。
“一年分の勤勉を使ったんだ、今度は一生分の勇気を示せ、この大馬鹿者が!”
自分になけなしの気合いを入れると。
「そう、この戦いが終わったら・・・」
命のやり取りに於いて、百戦錬磨のグランをして心臓が口からせり出しそうな緊張感が全身を包む。喧騒に包まれ、大勢が居合わせている筈の室内であったが、全てが止まって見える。 目の前にはただ一人レアラン姫がいる。
「戦いが終わったら、正式に結婚して欲しい。」