遙かなる望郷の地へ-36◆「開戦前夜11」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
「はぁ?」
グランは、思わず言葉が零れるのを僅かの差で堪えた。流石にこればかりは本人も読んでいなかったのである。
バルト・レスコー・カイファートと優秀な幕僚や友軍に恵まれてはいたが、それぞれの持ち場があり、また戦線正面はジョフとコーランドの混成部隊になるために、悩んだ結果、指揮官の推挙を正したのだが・・・。
暫くの沈黙の後。
「レオン・“ロック”・ジャン・バルト、卿を我がもとより離すのは百騎の精鋭を失うに等しい。だが大公女を守る任は、それに変えられないものであろう。頼むぞ!」
「有り難き幸せ。我が命に代えましても、大公女殿下はお守り申し上げます」
立ち上がると、深々と頭を下げるジャン・バルト。
次にグランはレアランの視線を正面に受け止めると、
「一瞬でいい、チャンスを作ってくれれば必ず私が敵を粉砕する、信じてくれますね」
「ジャン・バルトが来てくれるので有れば、心強い限りです。大戦士さまとレスコーさまが相手の後方を断って下さるまで、精一杯戦線を支えましょう」
微かな笑みを浮かべて、レアランは静かに言った。気負いも迷いもなく、ただ自分が為すべき事柄を理解している──そんな表情だった。
「私からも、出来得る限りの後方支援に努力しましょう」
その場をカイファートが引き取った。
「では、大戦士殿。作戦開始の下知を頂けますかな?」
「うむ」
グランは厳粛にカイファートの言葉に続ける。
「私の求めるものは勝利か死ではない」
周囲を見渡した後。
「勝利か・・・より完全なる勝利である!」
甚だ大げさだと思いつつ、士気を鼓舞するのも責任者の役目と思って恥ずかしいものを我慢して、グランは思いっきり言ってのける。
「一時の準備の後、全軍城外にて集結。閲兵の後にそれぞれの持ち場についてもらう。
以上、解散!!」
踵を鳴らすと、満座に対して敬礼をした。