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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第3話 連れて帰って

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18 明日の予定

 布団のシーツを替えて敷き、さらに少し離してエアマットと寝袋、空気枕をセットした後。

 タブレットで明日以降のための調べ物をしていたら、衣緖菜が風呂から戻ってきた。

 ちゃんとTシャツとハーフパンツを着ていて、少しほっとする。


 ただやっぱり、サイズが合っていない。

 男子としては小柄で細めの俺の服でも、やっぱり大きめ。

 微妙に見えるような見えないような……服の上から胸の先端はわかってしまう。


 やはり明日は、服を買いに行ったほうがよさそうだ。

 俺の最後の資金2万円のうち、1万円くらい使って一揃い買ってしまうのが正解だろう。

 その後のことがあるから、もう1万円はとっておきたいけれど。

 でもその前に、まずは俺も風呂に行ってこよう。


「それじゃ俺も風呂に入ってくる。この部屋のものは全部使っていいし、寝ていてもいい。寝るならそこの布団を使ってくれ」


「わかった」


 彼女が頷いたので、着替えとタオルを持って風呂へ。

 ついでに風呂場の洗濯乾燥機も回しておこう。

 父も母もそういったことをまるでしないから、俺がやるしかないのだ。


 ◇◇◇


 自分が風呂に入るほか、洗濯、風呂と洗面所の掃除もひととおり済ませる。

 洗濯機だけは乾燥が終わった後、仕分けその他をしなければならない。

 しかしそれ以外は終わらせてから部屋へ戻る。


 衣緖菜はタブレットを操作していた。

 何かをネットで調べているようだ。


「問題なく使えるか?」


「大丈夫。今は明日の予定が可能なのか、何か必要になるかを確認していた」


 衣緖菜は、さっきまでの俺の知識と記憶を持っている。

 だから俺が何をしようとしていたのかも、当然理解している。


 俺が考えていた予定は、概ね以下の通りだ。

 ① 郵便局で、俺の貯金を全額下ろす

 ② 電車に乗って、県庁所在地のある付近で最も大きな街へ行く

 ③ 全国チェーンのお安い洋服店で、彼女の服を購入

 ④ 競輪の場外車券売場で、衣緖菜の魔法を使ってお金を稼ぐ

 ⑤ 稼いだお金で、服と食料、その他必要なものを購入する


 これで当座の衣食住をなんとか確保して、それから衣緖菜の戸籍作成などについて考えるつもりだった。

 競馬その他ではなく競輪なのは、俺が行ける範囲にある場外売場が競輪しかないから。


 俺の知識や記憶がある衣緖菜は、当然この計画を知っている。

 だから俺が風呂に入っている間に、先回りして調べておいてくれたようだ。


「服を買うまでは気づかれない魔法で、服を買ってからは基本そのままで、場外車券売場では私と陽翔の外見を魔法で偽装。どれも大丈夫。ただ陽翔に、そこまで手間をかけさせるのが申し訳ない」


 そのくらいは全然かまわない。

 どうせ衣緖菜がいない場合でも、小学校併設の図書室で勉強したり本を読んだりするしかできないから。


 まあそのことも、衣緖菜は俺の知識で知っているだろう。

 だから別の返答をすることにする。


「いや、俺自身も楽しみだから。久しぶりにいつもと違うことをするのが」


 これは本心だ。

 先がどんどん塞がって、落ちていく一方の俺の人生。

 その中で彼女の存在は、久しぶりの清涼剤というか、いい意味での予想外。


 勉強も少しくらいは休んでいいだろう。

 なにせここへ来てから、ほぼ毎日勉強ばかりしていたのだ。

 理由はもちろん、他にすることがないから。

 おかげでネットで調べられる限りの部分は、高校1年半ばくらいまで学習済みで、難関校の過去問もほぼ制覇済み。


「ありがとう。それじゃ私が調べて考えた計画を、陽翔に送る」


 衣緖菜が出した右手を、俺は握る。

 彼女の知識が伝わってくるのを感じた。

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