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俺が魔法を使えた頃  作者: 於田縫紀
第18話 課外活動

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102 最初の昼食会

 予想外だったのは、翌日から昼食会が始まってしまったことだ。

 4時限目が終わった後、愛美さんが迎えに来た。


「早速カナ姉が昼食を作ってきたので、一緒に食べませんか?」


 まずはそう衣緖菜に言って、それから衣緖菜と2人で俺の方へ。

 まずい、とっさにそう判断して、いつも一緒に食堂に行く香取と長柄に先に言い訳。


「悪い。今日はサークルの話し合いがあるから、行ってくる」


「衣緖菜さんの関係か?」


 思い切りバレている。

 ただクラスで仲がいい連中には、

 ① 衣緖菜が俺の姉で

 ② 姉に頼まれて、同じサークルに人数あわせの為に入っている

と説明していたが、

 ③ 何のサークルかは言っていない

という状態だ。


 だから今回も、その路線でごまかさせて貰おう。


「わかった。でも都築のサークル、何なんだ。女子が多いなら紹介してくれれば人数あわせに加わるぞ」


「そうそう、大田南畝も言っている。どうか敵にめぐりあいたい」


 香取も長柄も、飽多の中学にいた三浦と違い、別に本気で言っているわけではないと思う。

 単なる挨拶みたいなものだ、多分。


 そういえば三浦、ちゃんと高校に通えているだろうか。

 定員割れのゴ校にも落ちて、通信制高校の二次募集で何とか拾ってもらったと聞いたけれど。

 まああいつがどうなろうと自業自得だし、心配する必要はない。

 というのはまあ、今は関係ないから忘れて。


「いや、今は人数は大丈夫だ。じゃ行ってくる」


 それだけで片付けて、衣緖菜や愛美さんの方へ向かう。

 あ、でも待てよ。

 メイも異世界魔法部の部員だから、誘った方がいいだろうか。

 衣緖菜にそれとなく聞いてみよう、そう思ったところで。


「メイは誘わなくていい。本人に確認済み。あくまで異世界魔法部には名前を貸しているだけ。その立場でいいって」


 衣緖菜が先に気づいた様だ。

 なら問題はない。

 あの部はメイが作ったようなものだから、微妙に割り切れない感じはするけれど。


 ということで、課外活動棟へ。

 渡り廊下を渡って人通りが少なくなったところで。


「時間が勿体ないので、魔法で移動します」


 愛美さんの言葉とともに、風景がふっと揺らぐ。

 足の感触も変だ。

 そう思った次の瞬間、周囲が違う景色になった。

 異世界魔法部の部室にはもう4人、テーブルについている。


 愛美さんは衣緖菜と違って、日本でも転移魔法を使う様だ。

 空間操作特化型の魔法使いだから、衣緖菜以上に転移魔法が得意なのだろうか。

 それとも衣緖菜が、俺と会った後、使わない様にしていたのだろうか。

 なんて考えたところで。


「遅いよ、さっさと食べよ!」


 これは結菜さんだな。

 そう思いつつ空いている席に俺たち3人がついたところで。


「それでは今日の昼食です。お昼ということで、つけ麺とチャーハンにしてみました」


 えっ!?

 そう思ったところで、目の前に麺が入ったどんぶりと焼き豚、ネギ、茶色いゆで卵が浮いた汁入りのどんぶり、平皿入りチャーハン、おそらく麦茶だろう茶色い液体入りのコップが出現する。

 それぞれ1人ずつ、7人分。


 てっきり作ってきたお昼だから、弁当だと無意識的に思っていた。

 でも魔法収納を使えるなら、時間経過も入れ物の大きさも、汁がこぼれるかどうかも気にしなくていい。

 そしてつけ麺もチャーハンも、なかなか美味しそうだ。


 衣緖菜と生活するようになってから、俺はラーメンを食べていない。

 飽多を出るまで、菓子パンとカップラーメンの日々が続いた結果、この2種は食べたくなかったというのもある。

 

 ただ目の前にある様な、ちゃんとした麺のラーメンなら話は別だ。

 つけ麺だから麺が別盛りなので、麺が安いカップラーメンのものと違うのは一目瞭然。

 スープも分厚い豚とゆで卵が浮かんでいて、いかにも美味しそうだ。


 チャーハンもいかにも中華料理店で出てきそうな感じで、惣菜で売っているものより美味しそうに見える。

 でもそれ以上に、食べ慣れない感じのラーメンが美味しそうだ。


 でも衣緖菜は汁物が苦手だったはずだ。

 大丈夫だろうか。

 今のところ、普通に食べるのを待っているような感じだけれど。


 食べられなくても、チャーハンの方は大丈夫だろう。

 なら、もし食べられない場合は、俺が衣緖菜のつけ麺を食べれば問題はない。

 理由は花音さんたちに説明するとして。

 

「それでは、いただきます」


「いただきます」


 ここではこんな感じで、皆でいただきますを言うんだな。

 そう思いつつ麺を箸でつまんで汁に浸し、そして口へ。


 まず感じるのは、つけ汁の甘さ。

 ただ砂糖で甘いとは違う気がするけれど、感覚的には甘いとしか言えない。

 勿論それだけでなく、酸味や塩味、更には旨味としか俺には表現できない味を感じる。


 麺もカップ麺とは全然違う。

 ラーメンとしてはかなり太めで、それなりのコシと麺としての存在感を感じる。

 これが汁とあわさって、とんでもなく美味しい。

 

 食べながら横目で衣緖菜のようすを見てみる。

 衣緖菜はチャーハンの方ではなく、まずはつけ麺に挑戦する様だ。

 1本だけ麺を箸で取って、汁をくぐらせて口に運ぶ。

 そして少し考えてから、次は麺をがばっと箸でつまんで汁に入れ、思い切り食べて頷いた。


 うん、問題なさそうだ。

 ということで、俺は汁の中に入った肉の塊を口へ。

 勿論美味しい。

 

「美味しい。こんな店で出るようなちゃんとした味のラーメンも、自分で作れるんだ」


「レシピは、ネットにあったものを少しだけ自分流にしたものです。具体的には『東池袋大勝軒 もりそば レシピ 簡単』で出た汁のレシピと、『つけ麺 製麺 レシピ』で出た麺のレシピ。豚も煮卵もやっぱりネットで見たレシピを使っています。材料も分量まで出ていますから、真似するだけですね」


 いや、それでも難しいと思うのだ。

 俺は前に香取やメイに聞いて、知っている。


「でも寮の自室にあるキッチンは狭くて使えないって聞いたけれど。それでもここまでのが作れるんだ」


「カナ姉は、混ぜたり切ったり熱を通したりが魔法で思い通りに出来るから。ネットなんかの情報も高速取り込みが出来るし。だから言ったじゃない。学校の食堂で食べるより、カナ姉に作って貰った方が美味しいって」


『確かにこれは美味しい』


 衣緖菜が声でなく魔法で言っているのは、思い切り麺をかっ込んでいるからだ。

 あ、でも、つけ麺が美味しいならチャーハンも、きっと。

 

 卵や焼豚、ネギが具材のやや茶色いチャーハンを口に運ぶ。

 うん、間違いなく美味しい。

 米がパラパラなんだけれど堅すぎず、脂っぽすぎることもなく、味も塩胡椒と他に何かわからないけれど、ちょうどいい。


「確かにこれは、学校の昼食が食べられなくなっても仕方ないな」


「でしょ。朝食と夕食は寮で出るのを食べなきゃだから、昼だけなんだよね、自由に選べるのは。でも今まではみんなで食べる場所がなかったから、仕方なく学食で美味しくないの食べてたんだよ。だから部屋を確保出来ると思ったとき、まっさきにここでお昼を食べるのを思いついたんだ」


 なるほど、理解した。

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