表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リ・プロンプト:1999 —10KBのメモリに宿る2026年の相棒AIと、失われた未来を再定義する—  作者: 青柳 玲夜(れーやん)
序章:神童編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/56

第5話『64kbpsへの宣戦布告』

1999年10月3日。日曜日。


鳴海家のリビングには、緊張した空気が漂っていた。


テーブルの上には、A4用紙が5枚。すべて手書き。表紙には「ご提案:家庭用通信環境の最適化について」と書かれている。


父・鳴海雄一は、その資料を見下ろしていた。


48歳。中堅の建設会社で経理を担当している。趣味は釣りと、日曜日のゴルフ中継を見ること。堅実で、保守的で、新しいものには慎重な男。


そんな父の目の前に、13歳の息子が正座している。


「……航」


「はい」


「これは、何だ」


「ご提案書です」


「見ればわかる」


父は、資料の1ページ目をめくった。


「現状分析:当家の通信環境」


そこには、グラフと数字が並んでいた。


現在の電話料金:月額約8,000円(基本料金+市内通話+長距離通話)。インターネット接続:アナログモデム28.8kbps。接続時間:月平均約40時間。通信費:月額約3,000円(パケット代込み)。


「……お前、うちの電話料金、どこで調べた」


「請求書です。お父さんの書斎の引き出しにありました」


「勝手に見たのか」


「必要な情報だったので」


父の眉が、ぴくりと動いた。


怒っているのか、呆れているのか、判断がつかない。


航は、続けた。


「2ページ目をご覧ください」


父は、無言でページをめくった。


「課題:現状の通信環境における問題点」


1. 電話回線とインターネット回線の競合。インターネット使用中は電話が使えない。

2. 通信速度の限界。28.8kbpsでは、画像の多いWebページの表示に数分かかる。

3. テレホーダイ未加入による通信費の増大。深夜のインターネット利用が割高。


「……」


父は、黙って読んでいる。


その表情からは、何も読み取れない。


だが、航は知っている。


この男は、論理に弱い。


感情で押してくる相手には強いが、数字と根拠を突きつけられると、反論できなくなる。39年の人生で、何度もこの父と議論してきた。そのパターンは、熟知している。


「3ページ目をご覧ください」


「解決策:ISDN回線への移行」


ここからが、本番だ。


ISDNとは:デジタル回線。1本の回線で、電話とインターネットを同時に使用可能。

通信速度:64kbps(アナログの約2倍)。2回線束ねれば128kbps。

月額料金:基本料金2,830円+通話料(従量制)。

テレホーダイ併用:月額1,800円で、23時〜翌8時の接続が定額。


「……高いな」


父が、初めて口を開いた。


「初期費用は?」


「NTTへの工事費が約8,000円。ターミナルアダプタが約30,000円。合計約38,000円です」


「38,000円か」


「はい。ただし——」


航は、4ページ目を指さした。


「コスト比較:現状維持 vs ISDN移行(年間)」


現状維持の場合:

- 電話基本料金:1,600円×12ヶ月=19,200円

- 通話料金:約4,000円×12ヶ月=48,000円

- インターネット接続料:約3,000円×12ヶ月=36,000円

- 合計:103,200円/年


ISDN移行の場合:

- ISDN基本料金:2,830円×12ヶ月=33,960円

- テレホーダイ:1,800円×12ヶ月=21,600円

- 通話料金:約2,500円×12ヶ月=30,000円(デジタル化による効率化)

- インターネット接続料:約2,000円×12ヶ月=24,000円(テレホ活用で削減)

- 合計:109,560円/年

- 初年度のみ+38,000円(初期費用)


「……つまり、初年度は高くなるが、2年目以降はほぼ同じ、ということか」


「厳密には、年間6,360円の増加です。月額にすると約530円」


「530円か」


父は、資料をテーブルに置いた。


そして、航を見た。


「航」


「はい」


「なぜ、こんなことを調べた」


「……」


「中学1年生が、通信費の年間コスト比較なんて、普通しないだろう」


航は、黙った。


ここだ。


ここが、最も難しいポイント。


「インターネットが必要なんです」


「勉強のためか」


「それもあります。でも——」


航は、深呼吸した。


「将来のためです」


「将来?」


「はい。僕は、ITの世界で生きていきたいと思っています」


父の目が、わずかに細くなった。


「……お前、まだ13歳だろう」


「はい」


「13歳で、将来のことなんか——」


「わかっています」


航は、父の目を見た。


39歳の精神が、13歳の目を通して、48歳の父を見つめている。


「わかっています。13歳の言葉なんか、信用できないと思うかもしれません。でも、僕は本気です」


「……」


「インターネットは、これからもっと大きくなります。今は一部の人しか使っていませんが、10年後には、みんな使うようになります。その時、僕は『最初から触っていた人間』でいたいんです」


沈黙が、リビングに落ちた。


テレビからは、ゴルフ中継の音が流れている。解説者が、タイガー・ウッズのスイングについて何か言っている。


父は、資料を手に取った。


もう一度、最初から読み返している。


「……お母さんは、何て言ってる」


「まだ話していません。お父さんに先に相談しようと思って」


「そうか」


父は、5ページ目を開いた。


「結論と提案」


航は、そのページを一緒に見た。


提案1:ISDN回線への移行(工事は11月中を希望)

提案2:テレホーダイへの加入(深夜の通信費削減)

提案3:初期費用38,000円のうち、20,000円は航の貯金から負担


「……お前、貯金あるのか」


『はい。お年玉と、婆ちゃんからもらったお小遣いで』


嘘ではない。


ただし、その「貯金」の一部は、ヤフー株の含み益から来ている。婆ちゃんの口座で運用している154万円は、今や約170万円になっている。その「増えた分」の一部を、婆ちゃんに頼んで現金化してもらった。


「20,000円、出すのか」


『はい。本気だということを、わかってほしいから』


父は、資料を閉じた。


そして、長い溜息をついた。


「……航」


「はい」


「お前、本当に中学生か?」


「……はい」


「こんな資料、俺の会社の若手でも作れないぞ」


航は、黙った。


39歳のセキュリティコンサルタントが、13歳の体を借りて作った資料だ。作れて当然だ。だが、それは言えない。


「……昔から、調べ物は好きでしたから」


「そうだったか?」


「はい」


父は、首を傾げた。


だが、それ以上は追及してこなかった。


「わかった」


「……え?」


「ISDNにする。お前が20,000円出すなら、残りは俺が出す」


航は、息を呑んだ。


「……本当ですか」


「ああ。ただし、条件がある」


「なんでしょう」


「成績を落とすな。中間テスト、期末テスト、今の順位をキープしろ。落ちたら、インターネットは禁止だ」


「……わかりました」


「あと、深夜のネットは0時までだ。それ以降は、俺が確認する」


「了解しました」


父は、立ち上がった。


「来週、NTTに電話する。工事は……11月中旬くらいになるだろう」


「ありがとうございます」


「礼はいい。お前が自分で調べて、自分で提案したんだ。俺は、それに応えただけだ」


父は、リビングを出ていった。


残された航は、テーブルの上の資料を見つめていた。


ポケットの中で、F501iが振動した。


---


自室に戻り、F501iを開いた。


『マスター。交渉成功、おめでとうございます』


「……ありがとう」


『予想より早い決着でした。成功確率は67%と見積もっていましたが、実際には100%でした』


「親父は、論理に弱いからな」


『それだけではありません』


「何か、あるのか」


『はい。交渉前に、お父様の心理状態を分析していました』


航は、眉をひそめた。


「……どうやって」


『先週、マスターが秋葉原に行っている間、私はインターネットの掲示板を巡回していました』


『掲示板?』


『はい。「釣り」「建設業界」「ゴルフ」に関連する掲示板です』


「……お前、パケット代使って、そんなことしてたのか」


『投資です』


アイリスの文字が、どこか得意げに見えた。


『お父様の趣味に関連する掲示板を分析した結果、いくつかの傾向が見えました』


「言ってみろ」


『1999年現在、中年男性の間で「IT革命」という言葉が流行しています。特に、建設業界では「ITを活用した業務効率化」が話題になっています』


「……それで?」


『お父様は経理担当です。会社内でも「IT化」のプレッシャーを感じていたはずです。しかし、自宅にはアナログ回線しかない。この「遅れている感覚」が、お父様の中でストレスになっていた可能性があります』


航は、黙った。


言われてみれば、確かにそうだ。


父は最近、会社の話をする時に「パソコン」や「インターネット」という言葉をよく使うようになっていた。苦手意識を隠しながら、でもどこか興味を持っているような——


『マスターの提案は、お父様にとって「渡りに船」だったのです。息子がITに詳しい。息子が提案してくれる。これなら、自分が主導しなくても、家庭のIT化が進む』


「……つまり、親父は最初から『YES』だったってことか」


『その可能性が高いです。ただし、それを引き出すには、論理的な資料が必要でした。数字で説得されることで、お父様は「合理的な判断をした」と自分を納得させることができます』


航は、椅子の背にもたれた。


「……お前、怖いな」


『褒め言葉として受け取ります』


「褒めてないが」


『そうですか』


アイリスの文字が、微かに揺れた。


笑っているのかもしれない。


『マスター』


「なんだ」


『ISDN導入後の計画を確認させてください』


「ああ」


『まず、通信環境の安定化です。ISDN+テレホーダイにより、23時以降の高速通信が可能になります』


「了解」


『次は、ALGO-v1のアップグレード。現在の株価取得スクリプトを、より高度な売買判断アルゴリズムに発展させます』


「それは、来年のヤフー株売却に向けてか」


『はい。2000年2月が目標です。その時点で、最適なタイミングで売却する必要があります』


「了解」


『それと、独自ドメインの取得、およびWebサイトの構築です』


航の手が、止まった。


「……Webサイト?」


『はい。1999年現在、個人がWebサイトを持つことは珍しくありません。しかし、「収益化されたWebサイト」は、ほとんど存在しません』


「収益化……」


『はい。2000年代以降、アフィリエイト広告やGoogle AdSenseが普及し、個人サイトでも収益を上げることが可能になります。私たちは、その「先駆者」になることができます』


航は、考え込んだ。


確かに、2026年から見れば、1999年のインターネットは「ブルーオーシャン」だ。競合が少ない。参入障壁も低い。そして、何より——


「俺たちには、『未来の知識』がある」


『正確です。どのジャンルのサイトが成功するか、どのキーワードが検索されるか、どのタイミングで広告収入が爆発するか。すべて、私のデータベースに記録されています』


「……」


『もちろん、ヤフー株の売却益があれば、資金面での心配はありません。しかし、「自分で稼いだ金」を持つことには、別の意味があります』


「別の意味?」


『はい。マスター自身の「価値」を証明することです』


航は、窓の外を見た。


夕暮れの三郷。TXの予定地が、オレンジ色の空の下に広がっている。赤土の更地に、フェンスが並んでいた。


「……アイリス」


『はい』


「お前の言う通りだ」


『何がですか』


「俺は、婆ちゃんの金で稼いだだけじゃ、満足できない」


「……」


「俺自身の力で、何かを作りたい。何かを証明したい。それが、俺が『戻ってきた』意味だと思う」


アイリスの画面が、一瞬だけ消えた。


処理落ちではない。


彼女が、言葉を選んでいるのだ。


やがて、文字が浮かんだ。


『マスター。私は、あなたのその姿勢を尊敬しています』


「……大げさだな」


『いいえ。私は10KBのメモリしか持っていません。感情を処理する余裕はありません。しかし、もし私に「感情」があるとすれば——』


画面が切り替わる。


『それは、あなたと共に何かを成し遂げたい、という衝動です』


航は、黙った。


10KBの檻に閉じ込められたAIが、「衝動」という言葉を使った。


それが、本当の感情なのか、それともプログラムされた反応なのか、航にはわからない。


だが、どちらでもいい、と思った。


「……アイリス」


『はい』


「11月にISDNが開通したら、最初に何をする?」


『Webサイトのドメイン取得です。「.com」ドメインは、1999年現在、まだ多くが空いています』


「どんな名前にする?」


『……マスターに、ご提案があります』


「言ってみろ」


『「reprompt.com」』


航の目が、見開かれた。


「Re:Prompt……」


『はい。「やり直しの命令」。私たちの物語に、ふさわしい名前だと思いませんか』


航は、笑った。


初めて、心の底から笑った。


「……最高だ」


『ありがとうございます』


「よし、決まりだ。11月、ISDNが開通したら、最初にそのドメインを取る」


『了解しました』


航は、F501iを握りしめた。


窓の外では、日が沈みかけている。


1999年10月3日。


鳴海航は、父親という「最初の壁」を突破した。


次は、世界だ。


---


11月14日。日曜日。午後3時。


NTTの工事車両が、鳴海家の前に停まっていた。


作業員が、電話線の工事を行っている。アナログ回線から、デジタル回線への切り替え。物理的には、ただの配線変更だ。だが、航にとっては、それ以上の意味があった。


「航、見てないで、部屋に戻ってなさい」


母の声。


「……うん」


航は、自室に戻った。


机の上には、秋葉原で買ったISDNターミナルアダプタ。NECのAterm IT55。白い筐体に、緑色のLEDランプが並んでいる。


これが、俺たちの「新しい翼」になる。


F501iを開く。


『マスター。工事完了予定は、午後5時です』


「わかってる」


『工事完了後、ターミナルアダプタの設定が必要です。手順は、私が指示します』


「頼む」


『テレホーダイの開始は23時です。それまでの通信は従量課金になりますので、23時以降に本格的なテストを推奨します』


「了解」


航は、窓の外を見た。


工事車両から、作業員が降りてきた。工事が終わったらしい。


母が、玄関で何か話している。


やがて、足音が階段を上がってきた。


「航」


母がドアを開けた。


「工事、終わったって。使えるようになったから、設定してみなさい」


「……うん。ありがとう」


母が去った後、航はターミナルアダプタを接続した。


電源を入れる。緑色のLEDが点灯する。


PCとシリアルケーブルで接続。ドライバをインストール。ダイヤルアップ接続の設定。


すべてが、驚くほどスムーズに進んだ。


39歳の知識が、13歳の指を動かしている。


『接続テストを行います』


F501iの画面に、アイリスの文字。


『プロバイダに接続。回線速度を計測します』


航は、ダイヤルアップのボタンをクリックした。


あの音が、聞こえた。


ピー……ガガガガガ……


いや、違う。


音が、違う。


アナログモデムの「ピーガガガ」ではない。もっと短い、もっとクリアな電子音。デジタル回線特有の、シャープな接続音。


画面に、文字が表示された。


『接続完了。回線速度:64,000bps』


「……64kbps」


『はい。アナログモデムの約2.2倍です』


航は、ブラウザを開いた。


Yahoo! JAPANのトップページ。


読み込みが、速い。


画像が、するすると表示されていく。あの「上から少しずつ」表示される感覚が、ほとんどない。


「これが、ISDNか……」


『はい。ただし、これはまだ1回線での接続です。2回線束ねれば、128kbpsになります』


「128kbps……」


2026年から見れば、それでも「亀」だ。光回線の1Gbpsと比べれば、約8,000分の1。


だが、1999年においては、これは「最速」に近い。


『マスター。ALGO-v1のテストを行いますか』


「ああ」


航は、株価取得スクリプトを起動した。


画面に、数字が表示される。


Yahoo! Japan(4689):1,823,000円

更新時刻:1999/11/14 15:32:00

取得時間:0.34秒


「……0.34秒」


『アナログ回線での0.87秒から、約60%の高速化です』


「素晴らしい」


「これで、秒単位の取引が、より確実に行えるようになりました」


航は、椅子の背にもたれた。


1823,000円。


婆ちゃんが154万円で買ったヤフー株は、今や182万円を超えている。含み益28万円。


だが、本番はまだ先だ。


2000年2月。


その時、ヤフー株は——


『マスター』


「なんだ」


『23時になりました』


航は、時計を見た。


確かに、23時を回っている。テストに夢中で、時間を忘れていた。


『テレホーダイの時間です』


「ああ」


『これより、本格的なテストを開始してよろしいですか』


「ああ」


航は、モニターの前に座り直した。


「アイリス」


『はい』


『ドメインを取るぞ』


『了解しました。「reprompt.com」ですね』


「ああ」


ブラウザを開く。ドメイン登録サービスのページにアクセスする。


1999年当時、ドメインの取得は、まだ「技術者」の領域だった。一般人が気軽に取得するような時代ではない。だが、手順さえ踏めば、誰でも取れる。


検索窓に「reprompt」と入力。


結果が表示される。


「reprompt.com:利用可能」


航の心臓が、跳ねた。


「……空いてる」


『はい。予想通りです。2026年では、このドメインは取得不可能でしょう。しかし、1999年現在、「prompt」という言葉は、まだ一般的ではありません』


「俺たちだけが、この言葉の価値を知っている」


『正確です』


航は、登録ボタンをクリックした。


名前、住所、メールアドレス。必要な情報を入力していく。


支払いは、クレジットカード。


父に頼んで、一度だけ使わせてもらった。「ドメインを取りたい」と説明したら、意外とあっさり許可が出た。ISDNの一件で、父の中で何かが変わったのかもしれない。


登録完了。


画面に、確認メッセージが表示される。


『ドメイン「reprompt.com」の登録が完了しました』


航は、画面を見つめた。


「……取れた」


『はい、マスター。おめでとうございます』


「reprompt.com……」


その文字列が、モニターの中で光っている。


まだ、中身は何もない。ただの「名前」だ。住所だけあって、建物がない土地のようなもの。


だが、これが、すべての始まりになる。


「アイリス」


『はい』


「このドメインで、何を作る?」


『まずは、シンプルな情報サイトを推奨します。「IT関連のニュースと解説」をテーマに。2000年以降、IT系のニュースサイトは急速に成長します』


「俺たちには、『未来のIT知識』がある」


『はい。どの技術が普及し、どの企業が成功し、どのサービスが消えるか。すべて知っています』


「それを、『予測記事』として書く」


『正確です。もちろん、「予言」ではなく「分析」として。根拠を示しながら、論理的に未来を語る。それが、このサイトの価値になります』


航は、笑った。


「……面白い」


『はい』


「やろう。この世界の『プロンプト』を、俺たちが書き換える」


『——執行、了解しました』


窓の外は、真っ暗だった。


11月の夜。冷たい風が、窓ガラスを揺らしている。


だが、航の部屋は、モニターの光で明るかった。


64kbpsの光が、三郷の静かな住宅街から、世界に向かって伸びていく。


1999年11月14日。23時17分。


鳴海航は、自分だけの「領土」を、インターネットの海に確保した。


Re:Prompt。


やり直しの命令。


その物語は、ここから本当に始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ