スクラップヤードでの悪魔探し
ボマー作品の中点、全部傍点に変えようかな。
深夜。
変身して、部屋の窓から抜け出した。
「初めて二階から飛び降りたけど、意外と大丈夫なものなのね」
「まあな。お前がエクスポーズになってる、てことも要因の一つだけど」
「体が強化されてるってこと?」
「ああ。人間の時より遥かに頑丈だ」
「そうだったんだ」
う〜んと背伸びして頬を叩く。
よし!やる気入れた。
「それじゃ行きますか!いざ、スクラップヤードへ!」
△ △ △
歩いて40分くらいして目的地に到着した。
「うえっ。何この臭い―――」
「まあ、ここゴミ山だからな。それに、今のお前は人間の時より遥かに嗅覚が鋭い」
「変身してくるんじゃなかったぁ……」
「不意打ちされる可能性を考慮したら、変身した方がずっと安全ですよ」
「そうかもだけどさぁ」
そんな呑気なこと言ってられない。
鼻をつく臭いが強烈すぎる。
「やっぱり閉まってるよな」
ゲートは完全に封鎖されてた。
塀とゲートを繋ぐ、南京錠を開けないと入れない。
「どうやって入んの、これ」
「ちょっと待ってろよ―――」
グレッ厶が南京錠の前に屈んで、何かやり始めた。
ガチャガチャと金属同士が触れる音がする。
「あんたまさか―――」
「よし、開いた」
グレッ厶は南京錠を取り外した。
いや。今のってピッキングじゃ―――
「グレッ厶くん。驚きましたよ〜。まさかそんな特技があっただなんて」
疫病神が拍手してみせる。
「サタンの城の錠を何度も解錠してきたんだ。これくらいの錠、朝飯前だ」
今こいつ、さらりと自分は常習犯ですって自白した。
てか何度もやられてんのかよ、サタン。
「ほら。何ぼーっとしてんだよ、レミィ。行くぞ」
気づいたら二人は先に入ってた。
「ちょっ。置いてくなよー!」
走ってゴミ山へと入っていった。
△ △ △
中に入ると、すごい光景が広がってた。
足元から頭のずっと上までゴミが積み上がってる。
ゴミの種類としては、解体されかけの自動車とか、空の自動販売機とか、よく分からない金属の部品とか。
そんな物が周囲を埋め尽くしてた。
「すごい、わね」
「うおお。すごいな、ここ。機械いじりが好きな奴には、宝の山に見えるだろうな」
「あんたは好きじゃないの?」
「ん〜。得意、ではあるけど。それより魔導書読んでる方が楽しいな」
「そうなんだ」
すると、ガシャガシャと漁っている音がした。
いや、本当に疫病神が漁り始めてた。
「そこにいんの?悪魔」
「えーっと。この辺?いや、こっち?それとも―――」
最初は下の方を漁って、次は登って上を漁って、そしたら左に移動して、また下りて漁り出した。
どうやら、正確な場所が分からないみたい。
「ピンポイントで分からないの?」
「非常に魔力が少ないのですよ」
「それでも神なのぉ?」
頼りない疫病神をちょっと軽蔑した。
死の事実を取り消すなんてチート能力持ってるけど、今はとても情けなく見えた。
「そんな言い方すんなよ。神にだって得意不得意があるだろ」
グレッ厶がなだめてきた。
「あんたは探れてんの?その魔力」
「いや、全然。本当に微量らしいな」
「それでも悪魔?」
「俺は現役で魔法使いやってねぇよ。だから魔力を感じ取るのは得意じゃない」
グレッ厶は傍に落ちてたパソコンを拾った。
「でもワンチャン見つけられるかもしれない。とにかく俺らも探すぞ」
そのパソコンを、自身の背後に置こうとした。
その時。
―――ザザ、たす、た…け、たすけ、て―――
パソコンの画面に砂嵐が起きて、ノイズに混じって声が聞こえた。
あたしとグレッ厶は顔を見合わせた。
そしてパソコンの画面に注目する。
―――た、たすけ……だし、て―――ガガ…
やっぱり聞こえる。しかもそれだけじゃない。
画面を見て分かったことだけど。
砂嵐の中で一瞬だけ、人の顔みたいなものが映る。
ぼやけてるし、輪郭も曖昧でどんな顔してるかは分からない。
「この中にいる……のか?」
グレッ厶が目を見開いて呟いた。
信じられないって顔に書いてある。
「そう、みたいね」
もう一度、画面を観察してみる。
―――おねが、い……をだし、ザザァ―――
「女の子、よね?」
「そう、だな……」
グレッ厶に確認する。
声は女の子の声だった。声だけ聞くと、年齢はあたしと同じくらい。
「……どうすんのよ」
「どうするって」
なにこいつ。鈍すぎじゃない?
「出してあげるかどうかよ」
「それは―――」
グレッ厶は黙り込んで画面を見つめた。
「何迷ってんの」
「いや、そんなホイホイと出すわけにもいかないだろ。これが罠じゃないって確証がまだないし」
「あんた疑ってんの〜?」
「まあな。こいつが本当に出られないのか分からないし―――それに」
「それに?」
グレッ厶は引きつった笑みを浮かべて、あたしを見た。
「電子世界に入り込める悪魔なんて初めて聞いた。だから、出し方が分からない」
「はあ!?出し方分かんないの!?」
頼りないなこいつ!
「言っただろ、初めて聞いたって。俺は神じゃないんだ。万能なわけないだろ」
呆れたようにため息つきやがった、こいつ。
こっちがダメなら、もうあっちに頼るしか―――
あたしは振り返る。
後ろで疫病神がまだゴミ山を漁ってた。
「ちょっと疫病神〜。しゅーごー」
……来ない。遠くて気づいてないのかな。
あたしはちょっと近づいて、声を張り上げた。
「疫病神ぃ!!こっち来てぇ〜!」
瞬きをした一瞬後。
疫病神の顔がすぐ目の前にあった。
「うわっ!!」
驚いて尻もちついちゃった。
「何ですかレミィさん」
「おまっ、近すぎんだよ!あと驚かせんな!」
「それはそれは申し訳ございません」
クックックと笑いながら謝った。
悪いと思ってねぇよな、おい!
「で、何の用ですか」
もう切り替えやがった。ムカつく。
はあ。でも、ずっと怒ってても疲れるだけよね。
あたしも切り替えなくちゃ。
「このパソコンの中に悪魔がいるっぽいの。あんた、出し方分かる?」
疫病神はきょとんとした顔になった。
返事はない。いや……何か言えよ。
「そんな悪魔、初めて聞きました」
「なっ。マジか―――」
疫病神の言葉を聞いて、グレッ厶が頭を抱えた。
「これじゃ誰も出せませんね」
一番頼りにしてたグレッ厶も、悪魔のことならよく知ってそうな疫病神もダメ。
あたしは悪魔のことも魔法のこともよく知らない。
この状況は間違いなく『詰み』―――
―――たすけ、てよ、おねが……うう、うえ―――
ついに泣き始めちゃったわよ、この子。
声はか細いけど、必死に訴えてる。
やっぱりこのまま放っておくなんてできない。
(でも、どうすれば―――)
あたしはそっと、画面に手を伸ばした。
別に何も考えてなかった。ただ伸ばしただけ。
手が触れた―――だけど
「え……?」
それはいつもの硬い感触じゃなかった。
液体みたいに凪いでる。
一瞬、躊躇った。
だってパソコンの画面が液体みたいになってるんだよ!?怖くない!?
あたしは二人を見た。
二人はぽかんと呆気に取られたように見えた。
まさか画面に直接手を入れられるなんて、夢にも思わなかったでしょうね。
(やってみよう―――)
一つ、方法が浮かんだ。
それはあまりにも非科学的で、現実離れしてる。
だけど、今の状況で可能性が一番高い方法。
覚悟を決めて、あたしは手を深く入れた。
そして、何かを掴んだ。
触った感じは布。ツルツルしてる。
そのまま手を手前に引っ張っる。
なかなか重い。あたしと同年代の女子と考えれば当然か。
ゆっくり確実に。少しずつ少しずつ……。
そしてついに、頭が見えてきた。
そうしてやっと分かった。
あたしはその子の背中を掴んでたみたい。
「ちょっとグレッ厶!パソコン持って!」
「お?お、おう!」
グレッ厶にパソコンを持ってもらって、あたしは引き抜くのに専念する。
少しずつ、少しずつ、ゆっくりと……。
そしてついに、彼女の全身が出てきた。
あたしは掴んだ手をゆっくり離して、地面に寝かせた。
そうして見る彼女の姿はというと―――
髪は紫色のツインテール。
服は銀色のワンピース。スカート丈はとても短い。
黒いロングブーツを履いてる。
肝心の顔は、うつ伏せだから見えない。
「奇天烈な格好してるな、こいつ」
うん。あたしも同じこと思った。
とにかく。スクラップヤードの悪魔は見つけられた。
まさかパソコンの中にいるなんて、思わなかったけどね。




