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5-3:木曜日3


「――なんだよ。使わねぇのかよ」

鼻にティッシュを詰め込んだ俺を恨めしそうに見てきた。

「そもそも、そんなハンカチどこで使うのだよ?」

「あぁ?そんなの落とすために決まっているだろ?」

凄んでくるが、何言っているんだ?

「その決まっていることがわからない。落とすとはどういうことだ?」

「よくあるだろ、落としたハンカチを拾うところから始まる恋愛が。そのために日夜落としているんだよ」

当たり前のように言うが。

「そんなの見たことないぞ」

「はー?それはお前が女性から無視されているからだろ?」

「勝手に無視されていることにするな!」

怒ったよ、俺は。

「ムキになるところが怪しいぞー」

「うるさいな。ムキになってない」

「ムキになってるー」

「なってない」

「なってるー」

「なってない!」

ぷにぷにと俺の頬を小悪魔のようにつついてくる。まるで子どもが木の枝で何かをつつくかのように。

「かわいいやつめ」

「バカにしないでください」

「照れない照れない」

「照れてません」

「なにか困ったことがあったら、お姉さんに相談するんだぞ?」

そう谷間を強調してきた。

「さっきから思っていたのですか」

「なんだ?」

「もしかして、女性らしさに憧れていません?」

「な、なんだと?」

意表をつかれた顔。

「いや、なんか見た目はそんなのだけど、意外とピュアというか」

「ぴ、ピュアってなんだよ。俺はアバズレだ」

「処女って言っていただろ」

汗が出ている。

「ど、どこがだよ」

「まず、さっきからの女性らしい言動がステレオタイプすぎるというか、どっかの漫画家ドラマでみたことがある」

「そんなのが理由になるのか?むしろピュアじゃないだろ?」

「いや、本当に女性らしい人間というのは、僕の勝手なイメージですが、そういうステレオタイプとは違うはずなのです」

「どういうことだ?」

 彼女は眉をひそめた。

「ステレオタイプではこうだけど自分はこうする、という自分なりのやりかたがあるはずなのです。別に女性らしいに限った話ではなく、その道のスペシャリストなら誰もが持っているはずなのです」

「スペシャリスト?」

「それなのに、あなたの恋愛関係の言動はどれもがステレオタイプから来ている」

「どこがだよ?」

 彼女は否定的な目だ。

「例えば、先ほどの小悪魔的な所業、胸を強調したり頬をつついたりしましたね」

「ああ、そうだ」

「その割には似合ってなかったですよ」

「んだとこらっ!」

拳を上げてきた。

「暴力はやめてください。ここで問題なのは、似合っていたかどうかではなく、それがステレオタイプすぎることです」

「ステレオタイプステレオタイプうるさいな」

 拳を上げたまま止まった。木のように止まった。

「ええ。でも、本当に教科書的すぎるのです。胸を強調する、頬をつついてからかう、というのは恋に憧れる乙女がしてしまうことだと思います」

「お、乙女?」

頬が赤くなっていた。


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