5-2:木曜日2
「――それでは、これだ」
「何ですか、これは?」
100本くらいの缶ジュースが海のように広がっていた。
「缶ジュースだ。108本」
「煩悩の数かよ」
「目には目を、歯に歯を、恋愛には煩悩を」
なにことわざみたいに言っているの?
「それで、なんで煩悩の数だけ缶ジュースを?」
「間接キス、って知っているか?」
「知っているけど。誰かがキスをしたところにキスをすることだろ?主にジュースを飲む時に起き……おい、まさか?」
「そのまさかだ」
悪そうな顔で笑いながら缶ジュースを持ち、口を開けた彼女はこちらを見ていた。
「まさか、あれをするのか?」
そして、彼女はそのまま一気飲みした。
「くはぁー。間接キスだ」
いい笑顔で空き缶を握りつぶしていた。
「……って、全部飲んだら意味ないだろ!」
俺の言葉を聞いて、彼女は握りつぶした空き缶を静かに眺めた。それはそれは静かに眺めていた。
そして、おもむろにその空き缶を下に置いた。
そした、新たな缶を手に持った。
「……さて、はじめるか」
「なかったことにするな!」
彼女は少し頬を赤く染めていた。
「――さて」
彼女は一口つけた。今度は本当に一口。
静かに口づけをする姿は、先ほどとは印象が違うかった。
「……きれい」
「ん?なんか言ったか?」
俺の発言に興味なさげに缶を顔面近くに差し出した。
「いや……ここに口をつけたらいいんだな」
俺は間の飲み口を彼女に向けた。
「あったりまえじゃねえか。そうじゃねぇと意味ないだろ?」
そう話す彼女の唇は水分で潤っていた。
「じゃあ、飲むぞ」
「勝手に飲めよ。だから童貞は」
「うるさいな」
俺は口をつけた。
「どうだった?俺の唾液は?」
「よくわかんない」
「んだとこら!」
缶がドラム缶のように大きく目の前に現れて、そのまま俺の顔を叩きつけた。俺の口からは振った炭酸水のように泡が勢いよく吹き出した。
「何するんだ!」
「お前が悪いんだよ!」
「俺が悪いのか?」
鼻からオイルのように血がドバドバ出てきた。
「ひゃーははは。なんだその鼻血?」
「うっさいなー」
「まぁまぁ、これでも使え」
彼女はポケットからハンカチを取り出した。
それは、酸いといおうかすごい匂いがした茶色いドロドロとしたものに緑色の何かが付随しているものだった。
「何ですか、これは?」
「ハンカチだ。見たらわかるだろ」
彼女は何かが垂れているものを指さしたが……
「いや、俺の知っているハンカチと違うのだが」
「お前、女性からハンカチもらったことないだろ?女性のハンカチはこういうものだぜ」
「そんなわけないだろ!なんだよこれ、特に緑色のはなんだよ!」
「知らねぇよ。食えばわかるだろ?」
「わからねぇよ。わかりたくねぇよ。食えってどういうことだよ?」
「いいから食えよ」
「食いたくねぇよ」
断固拒否。




