5-52 流転ノ章 幕間 五
おれは、どうやら父上や兄上と血がつながっていないらしい。
なんとなくわかっている。
でも、そんなことどうでもいい。
本当の父上がどんな人だって、本当は母親がいるってことも、おれにはどうでもよいと思う。
だって、汐永の父上も厳しいときはあるが、普段はとても優しい。
兄上や伯母上・・・藤月御前様だって、とても優しくしてくれる。
ただ、気になるのは叔父上だ。
藤月御前様の殿。ここ、関ノ府で一番偉い人。
その方だけ、おれを見るときにとても怖い目をする。
なぜかはわからない。嫌われるようなことをしたのかな?
でも、それもどうでもいいくらい、皆可愛がってくれる。
とくに、伊佐姉様は優しいし、きれいだ。
いつも遊んでくれる。
兄上と木刀を振り回していると、「そうではありません。むやみに振り回しても相手には当たりませんよ」といって、武術のいろんなことを教えてくれた。
おかげで、少し強くなった気がする。
・・・・たぶん、気のせいだけど。
大人には勝てないから。
父上が遠くに出かけるというので、おれと兄上は藤月御前様のところへ預けられた。
・・・・とても、うれしい。
だって・・・・・・。
いや、なぜうれしいのか、よくわからない。
「岩姫は敵だ!!」
兄上が木刀を振り回しながら言った。
そんなことない。岩姫は・・・・。
・・・・なんだろう。
岩姫は二つ上の藤月御前様の娘。おれたちはいつも一緒に遊んでいる。
だが最近、岩姫を見ていると、なんか、ざわざわするようになった。
落ち着かない。一緒にいるときでも、前のように飛びついたりして遊ぶことが出来なくなってきた。無意識に、体を離してしまう。
なんだか、目が離せないのに。
「兄上、岩姫は敵ではないよ」
思わずそう言ってしまった。
「じゃあ、狛!岩姫の味方だということは、おまえも敵だな!」
そう言っておれに木刀を振ってきた。
かん!かん!!
・・・・正直に言うと、竹丸はそれほど強くない。
すぐに全部避けられるし、打ち込みもおれの方が速くて強い。
「どうだっ!!参ったと言え!」
なのに、いつもこう言われる。
「参った!!」
そう言わないと、終わってくれない。
「もう、なぜ狛丸は負けてないのに参ったというのじゃ?」
岩姫に言われる。
なんだろう、こう・・・・首の下あたりの奥の方、手で触れられないところがむずむずする。
「でも・・・・」
「もう、狛!たまには竹をやっつけるのじゃ!」
岩姫がおれの方を見る。
「へへ!狛はおれには勝てないんだ!」
竹丸が勝ち誇るように木刀を肩に担ぎ、腰に手をやる。
「狛のほうが勝っておったぞ!」
岩姫がおれの味方をする。
ぽっと、顔が熱くなる。
なぜなんだろう?これは、なんだろう?
「はい、はい!そろそろ読み書きの修練の時間ですよ!」
藤月御前様がそう言った。
女房達が呼びに来て、おれたちは他の部屋へ連れていかれる。
「次は頑張って竹をやっつけるのじゃぞ!」
こそっと岩姫がおれに耳打ちした。
「・・・・・・・」
・・・・やっぱりおかしい。
どきどきして、体中の血が顔に集まってきているような感じがしている。
言葉が出ない。
なんだろう。
病なのかな?




