5-51 流転ノ章 幕間 四
「どうして誰もいなくなってるのっ!?」
藤月は大きなお腹を抱えながら叫んだ。
岩姫と竹丸と狛丸。
子供たちが藤月のところへ集められた。
「こらっ!竹丸!!枝でお尻をぶつのはやめるのじゃ!!」
「岩姫がおれの方が強いと言わないからだぞ!!」
「おい、竹丸!それくらいにしてあげなよ・・・・」
「狛丸もおれの味方になれ!岩姫が敵だーっ!」
・・・・・・・。
どうして淡影が連れてきた娘たちは誰もいなくなっているのっ!?
子供たちが放し飼いじゃないっ!!
「あなたたち、いい加減して!そろそろ読み書きの稽古する時間でしょう!?」
「「「・・・・はーい」」」
・・・・三人とも、聞き分けはいいのだけれど。
藤月が女房を呼んで、三人を別室に連れて行かせる。
しばらくキャッキャと騒ぐ声が聞こえていたが、やがて静かになる。
・・・・義陽、早く帰ってきてくれないかしら。
無事でいるといいけど・・・・。
・・・・狛丸、さっきも、心なしか元気がない気がしたけど。
狛丸に詳しい出自のことは話していない。
もっと大きくなったらちゃんと話そうと、義陽と話し合った。
それに、自分の本当の父親を、育ての父親が倒しに行っているなんて言えるはずもない。
でも、なんとなく感じている気はする。
義陽たちが関ノ府を出てから、なんとなく元気がない気がする。
というか、竹丸が元気過ぎる。
誰に似たのだろう?
妙珠殿もおとなしい性格だったし、義陽にいたってはわたしと喧嘩もしたことがないというのに。
・・・・まあ、わたしが義陽にべったりだったのもあるけど。
いつも兄様に怒られていたっけ。
懐かしいな。
いや、狛丸のことに考えを戻そう。
もしかしたら、狛丸は自分が違うことに気付き始めているのかも。
「おれの本当の親は誰ですか?」
そう聞かれたらどうしよう?
義陽たちが宗影を倒して帰ってきたら、わたしたちは狛丸の父親の敵ということになる。そうなれば、狛丸はどう思うだろうか。
宗近・・・・殿に対して、刃を向けようとするだろうか?
そうなる前に、関ノ府からどこかへ預けたほうがよいのかもしれない。
・・・・駄目駄目!狛丸は、わたしと義陽で育てる!そう決めたのだから!
わたしたちの子!
・・・・わたしと、義陽の子・・・・。
それはそれでまた、微妙だな。
もちろん義陽のことは好きだ。昔のように、ふたりだけで静かに過ごせたらどれだけ幸せだろう。だが、若い頃のような情熱的な想いではない。
今は、ただ子供たちの父親として、生きて戦から戻ってきて欲しい。
義陽・・・・・。
お願い、帰ってきて・・・・・。
う・・・・・・義陽・・・・・・・。
早く・・・・・・。
う・・・・・・・・う・・・・・・・・・。
「だ、誰かーっ!!」
藤月は叫び声をあげた。
「御前様っ!!どうなさいましたっ!?」
藤月の叫びを聞きつけて、女房達が駆け込んでくる。
そこには青い顔で必死に手を伸ばす藤月の姿が・・・・。
「う・・・・・、生まれるぅっ!!!」




