カジノより次の場所へ
「我が主に勝利を献上致します……ところであの、何故他者に擬態した上で、″双影″をお使いになられていらっしゃるのですか?」
…………はい?なんで本体の方に来るの?選手の出入口からしても『賭博』オーナーと分身体が居る方が近いはずなんですけど??
「向こうに、行こうか」
「はい」
うん、素直でいいんだけど、これから突き放さないといけないんだよネ。
心が痛い……我はニャル、私はナイ神父。
「『賭博』オーナー、賭けは引き分けみたいです」
「……みたいですね」
「契約通りに一週間分差し出しましょう」
「カードを差し出していただけますか?」
「どうぞ」
「…………処理が完了しましたので裏VIPルームへの入場が可能となります」
さて、残酷なる辞令を伝達するか。
「クロエ」
「我が主、何なりと御命令を」
「こちらの時間で一週間、この『賭博』オーナーに仕え、カジノに奉仕するように」
「かしこまりました。『賭博』様、一週間だけになりますがよろしくお願いいたします」
「……素直過ぎて怖いのだけど」
「こっちで会えない事なんて日常茶飯事だからね。裏VIPには場所だけ確認して、また今度行かせて貰うよ」
「こちらです」
案内されるがままに『賭博』オーナーに付いていく。
どこまでも続く黄金回廊。
これまでの派手派手しい道と異なり、そこは鏡のように透き通った金色の道だった。
「この先ですね?」
「ええ、ですが観ていただきたい物がありますのでもう少し付いてきていただきますよ」
「構いませんよ」
この道、リアルの金額で言うと大国における一年分の予算を丸々使用したところで遠く及ばぬ黄金の使い方とも言える。
「…………大きい扉だな」
「我が主?」
「そう、貴女は大きく見えるのね」
「まあ、調べて判ったのでいいますけど、心当たりはあります。ですが、ソレを行うにはまだ組織としての地力が足りていない。だから強化してる最中なんですよ」
「そうなんですか」
「体を動かしたくなったので『極拳』さんの領域へ行ってきますね」
「またのご来場、お待ちしております」
『賭博』オーナーは天敵ともいえる能力をしてるはず……詳しい能力までは暴けなかった。
賭けの勝敗で権能が譲渡されるタイプの『超越者』。敵対は他の『超越者』からの報復等の可能性を踏まえてナシで。
『賭博』オーナーが見せたかったのは『選別の扉』という名前の神代魔道具。
招かれた客人によって、その大きさを変えるその扉は、その存在の重要性が大きければ大きいほど、扉が大きく見える。
ほどほどに大きく見えると答えておくのが、今後の取引などを考えるとアリな話となる。




