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第34話 偽りの戦火 5 民衆の力

 剣聖スフィーティア・エリス・クライは、再びミーシアへと向かった。


 そこは、グレゴリ要塞。


 スフィーティアが、ミーシアの地で最初にドラゴンを討伐した地だ。


 アトス・ラ・フェールからのドラゴン出現の情報を受け、スフィーティアは急いだ。


 堅牢な『グレゴリ要塞』と言えども、ドラゴンの前には、砂場の城を崩すようなものだ。ドラゴンに襲撃されれば、簡単に突破されてしまうだろう。



「間に合ってくれ」


 スフィーティアの頭の中にグレゴリ要塞司令官スティーフ・ジョコビッチの顔が浮ぶ。


 ブーレイ軍の度重なる人命を顧みない攻撃に、『こんな横暴を許してはいけない。だからこそ、我々は後には退けない。負ける訳にはいかない』と口にした彼の言葉が思い出された。


 スフィーティアは、鎧形態アーマーモードとなり、金色に輝く光の鱗粉を纏わせた透明な翼を羽ばたかせ、一足飛びにグレゴリ要塞へと急いだ。




 要衝『グレゴリ要塞』


 ここはミーシアにとって非常に重要な拠点だ。ここグレゴリ要塞と都市ポリスグレゴリが突破されれば、首都ラクスへの道が開かれてしまうからだ。



 スフィーティアが到着した時には、要衝グレゴリ要塞は、クリムゾン・ドラゴンの襲撃により城門や城砦内の施設が破壊され、その後攻撃してきたブーレイ軍精鋭により既に陥落していた。ミーシア兵の死体があちらこちらに散乱し、炎が燻っていた。


 難航不落を誇った『グレゴリ要塞』は、ブーレイ軍に突破された。

 これは、ミーシアにとって非常に困難な局面を意味する。



「くそ、私の到着が遅れたばかりに、こんな事に・・・」

 グレゴリ要塞の上空から、要塞内を見下ろしスフィーティアは後悔の言葉を口にする。



 グレゴリ要塞の先にある『都市ポリスグレゴリ』は、ブーレイ兵とガラマーン・パラサイト兵により、既に侵入されていた。一応城壁はあるものの高さも厚みや強度も十分ではなく、配置されていた守備兵も練度が低く数も十分ではなかったため、ブーレイ兵の大軍を目にすると逃げ出す者が続出し、あっけなく城門は突破されていたのだ。


 都市内では、統制の取れないブーレイ兵とガラマーン・パラサイト兵により、家々への略奪と市民への暴虐が始まった。街には火が放たれ、市民は、暴力と炎から逃れようと走り回る。女子供の奪い合いも起きていた。

 ブーレイ兵とガラマーン・パラサイトの兵が同じ若い女の手足を引っ張りあう。女は、悲鳴をあげたが、容赦のない奪い合いに手足をもがれ、流血し、絶命した。女が死ぬと、ブーレイ兵とガラマーン・パラサイト兵のいさかいが始まり、お互い剣を抜き、殺し合いが始まった。結果、ガラマーン・パラサイト兵が勝ち、敗れたブーレイ兵を怒りに任せ、罵りの言葉を発し、剣で滅多裂きにしていた。これを目撃した別のブーレイ兵がやって来て、そのガラマーン・パラサイト兵を槍で串刺しにして殺し、遠くに放り投げた。


 統制の取れない軍隊による醜い内部争いも加わり、都市グレゴリ内は、地獄絵図となり、あちこちで流血の惨状が見られた。



 スフィーティアは、この惨状が繰り広げられている都市グレゴリの中心部広場に降り立った。鎧形態アーマーモードが解除され白いロングコートの正装状態フォーマルスーツになる。

 近くでは、ガラマーン・パラサイトが女を追い回し襲いかかっている。ブーレイ兵は家々を襲い金品を強奪したり、男や老人などを容赦なく斬り殺す。



「私は、何もできないのか?この地獄のような行いを止めることも・・・」

 周囲で繰り広げられる惨禍を目の当たりにして、スフィーティアは思い悩む。



 剣聖は、人の争いに干渉してはならない。

 それは、剣聖の持つ竜力フォースへの戒めだ。



「いや、違う。これは、ドラゴンが引き起こしたものだ!だから、私は止める」

 それは、屁理屈かもしれないが、スフィーティアは、どうしてもこんな事を見過ごすことはできないと思った。

 


「やめろ!」


 スフィーティアは、悲鳴を上げている女に馬乗りになっている複数のブーレイ兵を引きはがし、放り投げる。

 しかし、略奪や襲撃に血眼になるブーレイ兵を殺すことなく止めるのは至難の業だ。向こうからスフィーティアに襲いかかって来るブーレイ兵やガラマーン・パラサイトもおり、近寄ってくる兵は、投げ飛ばしたり、脚を氷つかせて足止めするが、ブーレイ兵等は恐れることなく、スフィーティアにも襲いかかってくるのだ。


「うへへへへッ、女、女、いい女だ」

 弾き飛ばしたと思ったが、ブーレイ兵にスフィーティアは、脚や尻を掴まれた。

「クソが!」

 悪態をつき、スフィーティアは遠慮せず、顔面を蹴り飛ばし、その兵は壁に激突すると動かなくなった。


 しかし、こんなことをしていても都市内へと浸透し、制御を失った大量のブーレイ兵を止めることなど出来ないのは、明らかだった。


 個人でどうにかできることではないのだ。



換装シノーイ

 スフィーティアは、白いロングコートの正装状態フォーマルスーツから、白銀の鎧に身を包む鎧形態アーマーモードとなる。そして、その背中に透明な光り輝く大きな翼を呼び出すと、上空高く舞い上がった。その翼から光の鱗粉が飛び辺りを神々しく輝かせる。


 スフィーティアは、上空から都市グレゴリの市民へと呼びかけた。


「グレゴリの市民達よ。聞くのだ!」


 凛としたスフィーティアの美しく高い声が都市中に広がると、住民もブーレイ兵等の動きが止まった。


「おお、女神様だ、女神様が呼びかけてくださっているぞ!」

「女神様、ありがたや、ありがたや・・・」


「グレゴリ市民よ、聞いて欲しい!私は、剣聖スフィーティア・エリス・クライだ。ドラゴンを狩る者だ。理不尽な暴力に屈するな。あなた達の家族、友人、愛する人々、愛するこの都市まち、そして国を守ることができるのは、あなた達だ。理不尽な暴虐を許さないという意思を示せ。恐れてはいけない。抵抗しろ。守るのはあなた方だ。凌辱を許すな。あなた方には、それをできる力がある。それは意思を結集する力だ。結束しろ。地の利もあなた方の見方だ。襲ってくる暴虐な兵は多くない。今はあなた方の軍に頼るな。ここを守れば、必ずあなた方の、ミーシアの勝利は見えて来る。意思を示せ。さすれば、大いなる神は、あなた方の道を開くであろう」

 

「さあ、受け取るがよい」


 スフィーティア、剣聖剣カーリオンを抜くと、剣を上下左右に舞うように振るい、都市上空を美しく舞い踊りながら飛ぶ。すると、青白く光る氷の煌めきから、次々と剣や槍など氷製の武器が錬成されていき、地上へと降り注ぐ。何千本という氷製武器ひょうせいぶきが錬成され、それらの武器がグレゴリ市民の前に転がった。


「さあ、グレゴリ市民よ。武器を手に取れ。自らの犠牲無くしては、この困難を克服することはできないのだ!」


「そうだ、そうだ。女神様の言う通りだ。俺たちは闘える」

「ここを守るのは、俺達しかいない」

「ブーレイなんかにミーシアを渡してたまるか!」

「グレゴリは俺たちの土地だ!」

「小人野郎を皆殺しにしろ!」


 グレゴリ市民から、恐怖が消えた。


 スフィーティアの呼びかけに、グレゴリ市民達は応じた。


 市民等は、近くに落ちて来たスフィーティアが錬成した氷製武器ひょうせいぶきを、次々と手に取って行く。

 逃げ回るのを止め、住民等は反撃に転じた。


「ううぉーーーーーーッ!」

 ときの声を上げ、集団でブーレイ軍に襲いかかっていく。ブーレイ兵も数千はいたが、住民の数に比べたら小さいものだ。

 濃い緑色肌のガラマーン・パラサイトに襲われ、服を裂かれ、上に乗っかられていた若い女も、近くに落ちた氷の短剣掴むと、ガラマーン・パラサイトの首筋に一突きした。そこに、その子供達が、背中からガラマーン・パラサイトを滅多刺しにして女を助けた。グレゴリの市民は、男だけでなく、女も子供も立ち上がったのだ。


 ブーレイ軍は、思いがけない住民の反抗に、忽ち混乱していく。元々略奪に走り統制が取れていなかったため、武器を手にした数の力の前に逃げ出すしかなかった。




 しかし、その中に一人厄介な相手がいた。


 例のブーレイ首都ベーリンで大統領ベアーリンに面会し、ドラゴンを操る杖を渡した長身のガラマーン・パラサイトの妖術師だ。


「愚か者ども。何をやっておるか。仕事をせい。さっさと若い女をさらい連れ出すのだ」

 逃げて来た、ガラマーン・パラサイトの一人の頭を掴み持ち上げると、パラサイトの集団の中に放り投げた。


 転がったガラマーン・パラサイトは、立ち上がると奇声をあげた。

「オンナ、オンナ、イタダク、イタダク!」


 ガラマーン・パラサイトの兵は、そのどう猛さを再び発揮し、向かって来る住民に襲いかかると、次々と殺していく。ある者は、民家を襲い、住居に隠れた女を見つけては、連れ出し始めた。


「さて、儂も仕事をしようかの。あわよくば、あの美しい女剣聖も手籠めにしたいもの。楽しみじゃ。ウッヒッヒッヒ」


 ガラマーン・パラサイトの妖術師は、上空に浮遊するスフィーティアを、見てほくそ笑む。


 このガラマーン・パラサイトの妖術師は、ジャルという男だ。濃い緑色肌で赤い眼をしたやせ型の耳長で太い黒い眉毛と面長の顔をしている。白い厚手のローブに身を包み、身長ほどもある長い先に赤い宝玉のついた杖を手にしていた。長身180㎝はあろう。赤く細い眼は、鋭い眼光を奥に潜めていた。


 

 スフィーティアは、突然、視線を感じその方角に眼を向けた。

「あれは、ガラマーン・パラサイトのオギル・・・」

 スフィーティアの眦が吊り上がる。しかし、肌の色背格好は、似ているが、よく見ると、眉毛の色が黒く、オギルよりも若い。


 只雰囲気はオギルに近いものを感じ、嫌悪感を抱かざるを得ない。


(冷静になれ。あれはオギルではない。しかし、あれは、ガラマーン・パラサイトの妖術師だ。油断はできない)


 スフィーティアは、ガラマーン・パラサイトの妖術師ジャルの近くに降り立つと、白銀の鎧の鎧形態アーマーモードから白いロングコート姿に戻った。


「貴様は、ガラマーン・パラサイトの妖術師か?ここで何をしている?」

「ウッヒッヒッヒ、これはこれは、実に美しい女じゃ!どうじゃ?儂のものにならぬか?良い思いをさせてやるぞ」

「愚かなことを。貴様の考えることは承知だ。今すぐこの場から去ることだ。でなければ、斬る!」


 スフィーティアは、剣聖剣カーリオンを抜き、剣先を向ける。

「ダメかのう?何なら、お前一人でここの女全員は連れて行くのを諦めてもよいのじゃが・・・」

 ジャルは、ため息交じりに、オーバーなアクションで額に手をやる。


「私は、貴様等には嫌悪感しかない。ならば、死ね」

 スフィーティアが、クワっと眼を見開くと、一瞬でジャルに近づくや、その首を狙って一閃した。


 しかし、そこにはジャルの姿はなく、スフィーティアの剣は空を切った。

 

 次の瞬間、ジャルは離れた場所に浮かび上がった。


「残念じゃ、実に残念じゃ。仕方ない。お前の相手を呼ぶとしようかの」

 ジャルは、長い杖を上空に掲げ、一回転させる。



 すると、その上空高くの空間に亀裂が入り、割れた。



 そこから赤いドラゴンが、押し出されるように逆さになって出現し、落下する。落下してくる赤いドラゴンは大きな翼を広げると飛び立ち、宙に浮くジャルの前にズドンっと降り立った。


 グウォウォウォーーーーーーーッ!

 赤いクリムゾン・ドラゴンが威嚇の咆哮をあげた。



「ヒイッ!ドラゴンだ、ドラゴンが現れたぞ!」

「うわあーっ、は、早く、に、逃げろー!」

 突然のクリムゾン・ドラゴンの出現に住民に動揺が走り、逃げ惑う。



「どうやら、ミーシアとブーレイのドラゴン出現には、貴様が絡んでいたようだな。ガラマーン・パラサイトの妖術師」

 スフィーティアは、クリムゾン・ドラゴンの頭上付近に浮遊するジャルを射るような眼光で睨む。



 スフィーティアに焦りなどは無かった。

 剣聖は、同じ失敗はしない。

 それは、死へとつながる。

 スフィーティアは痛いほどそれを理解していた。



 クリムゾン・ドラゴンが動き出した。

 大きく大気を吸い込む。すると口元がぐつぐつと音を立てる。炎のブレスを放つ態勢だ。これが、放たれればグレゴリ市内に大きな被害が及ぶ。


「させるか!


 そのことを察知したスフィーティアは、一瞬でドラゴンの大きな口元に近づくや、剣聖剣カーリオンを一閃する。


凍れ(ケラハ)!」

 忽ち、クリムゾン・ドラゴンの大きな口元が凍りつく。


 クリムゾン・ドラゴンは、炎ブレスの熱で氷を解かそうとするが、スフィーティアが口先に剣聖剣を突き立てると、その氷撃効果により。口中の炎ブレスは消滅してしまった。


「なんと!」

 ジャルが眼を見開く。

「これはまずいかもしれん。じゃが、これならどうじゃ」


 ジャルが、赤く光る宝玉のついた杖を掲げると、赤く妖しい色を放つ球が10個ほどジャルの周囲に浮遊するように現れた。杖をそれっと振るうと、スフィーティアの方目がけて一直線に放たれた。スフィーティアは、近づいてきた赤色の球を剣聖剣で一閃した。赤玉は、全て破裂し、液状のものがクリムゾン・ドラゴンに降りかかった。


 スフィーティアは、ドラゴンから離れると、ジャルに近づき、斬りかかる。


「そんな物が私に通じると思うな!」

「ククク、それはどうかのう」


 ジャルは、スフィーティアの攻撃を避けると、笑みを浮かべまたしても、スフィーティアの目の前から消えた。


『これからじゃよ。お前の相手はわしじゃないと言ったであろうに。クククク』

 どこからともなくジャルの声が響いた。


 グルルルルル、グルルルルルル・・・・。

 クリムゾン・ドラゴンが静かに呻く。


 クリムゾン・ドラゴンの大きな口から熱いよだれが、ドロドロと零れている。

 クリムゾン・ドラゴンの赤い眼は、淀んでいた。


 ドラゴンの前にジャルが出現し、静かに地面に降り立った。


 グウォォォォーーーーーーーーッ!

 クリムゾン・ドラゴンは、一際大きな咆哮をあげる。



「こいつ、あの時のエメラルド・ドラゴンと同じか?」

 スフィーティアは、クリムゾン・ドラゴンのその言い知れぬ異様な様子に息を吞むと共に、先ほどよりもドラゴンの力が数段増したことを感じていた。


「クククク、ウワッハッハッハ、さて、ドラゴンの餌となるがよい。お主ほどの美女はちと残念ではあるが」

「愚かなことを、本気でドラゴンを制御できると思っているのか?」

「左様、儂の術とこの宝玉の杖で、こやつは儂の手の内じゃ」

「竜の意思は強いものだ。そんなもので操れるものではない」

「もう良い。死ぬがよい。やれ」

 そう言うとジャルは、杖を掲げた。赤い宝玉が妖しく輝く。



 すると、クリムゾン・ドラゴンの眼も妖しく光った。


 ズドーンッ!


 次の瞬間、ドラゴンが大きな右腕を振り下ろし、ジャルの杖を持つ右腕をその鋭い爪で斬り落としていた。


「う?な、なんじゃこれはーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

 ジャルが、肩口から無くなった右腕を見て絶叫する。


 クリムゾン・ドラゴンは、今度は、大きな口を素早く動かすや、ジャルの首から下の胴体を咥えた。


「うぎゃあ、よせーーーーッ!」

 

 ドラゴンが一噛みすると、ジャルの首が切断され胴体を飲み込んだ。


 ジャルの首が、ドラゴンの口元からボトリと落ち、地面を転がった。


「うぎゃああああああああああああああああああ!痛い、痛い、痛いーーーッ!」


 首だけとなっても、このガラマーン・パラサイトは、まだ生きていた。



 しかし。


「へ?」


 グシャリ!


 クリムゾン・ドラゴンの大きな掌が落ちて来てジャルの首は潰された。

 

 ガラマーン・パラサイト妖術師ジャルのあっけない最後だった。



 グウォォォォーーーーーーーーッ!


 再び、クリムゾン・ドラゴンは、首を揺らしながら咆哮をあげた。



「すでに正気じゃない」

 スフィーティアは、クリムゾン・ドラゴンを悲し気に見つめ、剣聖剣を構える。


 クリムゾン・ドラゴンは、スフィーティアを赤い濁った眼で見つめるが、そこにスフィーティアはぼんやりとしか映っていないのだろう。口元からは、熱いよだれが、だらだらと滴り落ちる。


 ジャルの妖術により、狂わされたドラゴン。



「一瞬だ。お前の魂を私が解放しよう」

 スフィーティアは、剣聖剣を頭の辺りでクリムゾン・ドラゴンに剣先を向けて構えた。 


 クウォォォーーーーッ!


 咆哮をあげるクリムゾン・ドラゴン。

 その咆哮は、苦しみから解放して欲しいという悲し気な声にスフィーティアには聞こえた。

 そしてクリムゾン・ドラゴンは、炎ブレスをあげながら、スフィーティアに向かい突進してきた。


疾駆刺ハートゥル・スピール


 放たれた矢の如き蒼き蜂の姿の残像は、クリムゾン・ドラゴンの炎ブレスを凍てつかせ、一瞬で接触するや、ドラゴンの心臓に突き刺さった。



 ウ、グググ・・・。


 クリムゾン・ドラゴンの赤い眼から濁りが消えていく。

 ゆっくりと眼が閉じられるとドラゴンの巨体は、地面にズドンと倒れ込んだ。



「赤き竜は、我が討ち取った!グレゴリの民よ。都市まちを取り戻すのだ!」

 スフィーティアは、クリムゾン・ドラゴンに乗っかり取り出した赤い竜石を掲げ、住民らを鼓舞する。



「おお、女神様が竜を倒したぞ」

「今度は、俺たちの番だ。グレゴリをブーレイから取り戻すのだ!」

「残忍な小人を殺せ」



 ドラゴンの出現で混乱した住民等は、再びブーレイ軍に反抗をはじめた。スフィーティアの提供した氷製武器だけでなく、武器屋の武器、農具や商売用の刃物なども手にして、ブーレイ兵に集団で襲いかかった。ブーレイ軍は、圧倒的に数に勝る市民軍に圧され徐々に、都市から退いて行く。しかしながら、残忍なガラマーン・パラサイトには、集団で容赦のない報復が加えられ、パラサイト兵は一人も逃げ出すこともなく、惨殺された。



「我らの勝利だ!」

「俺たちはグレゴリを守ったぞ!」

 ここに、都市ポリスグレゴリは、住民と剣聖スフィーティア・エリス・クライの《《介入》》により守られた。



 ドラゴンの襲撃によりミーシア軍に大きな損害が生じたものの、長引く戦争に厭戦気分も目立ち始めた市民の士気が再び盛り上がった。


 この一大危機を自分たちの力で乗り切った、やれた、という、気持ちを共有できたことが大きかったのだろう。



 剣聖スフィーティア・エリス・クライのメッセージは伝わった。


 民衆の結束した力は、大きい。だからこそ、独裁者は民衆の力を恐れ、監視、弾圧とあらやる手段を使って結集しないようにするのだ。



 そして、このグレゴリの一戦こそが、ミーシア戦争の戦局を大きく変える転機となるのだった。



                               (つづく)


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