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第33話 偽りの戦火 4 謎の竜石

間が空いてしまいましたが、偽りの戦火の4を公開します。今話はスフィーティアは登場しません。


 ここは、どこか想像しがたい場所ところにある剣聖団本部の薄暗い広い部屋だ。


 白いぶかぶかのローブに身を包む一人の青白いショートヘアの12歳位の美少年のような容姿の男がデスクに座っていた。


「うーん」


 剣聖団軍師(リニアル)であるレオナルド・ラインハルトは、珍しくその聡明な頭脳を悩ませていた。

                                                                                                                                                                                                                  

 彼の眼の前の机上には、二つの宝石のような石が置かれていた。


 一つは、『黒竜石こくりゅうせき※』。妖しく黒光りする石で、ガラマーン・パラサイトのオギルにより操られていた異形ドラゴンから取り出したものだ。


 (※第27話「アトス・ラ・フェールという男(1)」参照)


 もう一つは、人を喰らうエメラルド・ドラゴンから取り出した濁った緑色の妖しい鈍い光を奥に宿す竜石だ。先日、剣聖スフィーティア・エリス・クライから送られてきたものだ。




 ここで、『竜石』について、簡単に触れておこう。


 竜石は、剣聖の胸に埋め込まれる宝石のようにひかる石で、ドラゴンの力とエネルギーを宿しており、剣聖の胸に埋め込まれ剣聖の力の源となるものだ。材料はドラゴンの心臓である。竜石の色は、材料であるドラゴンの種類による。炎竜であるクリムゾン・ドラゴンは赤色、氷竜サファイア・ドラゴンは青色、雷竜ヘリオドール・ドラゴンは黄色などである。ちなみにスフィーティアの胸には、青の竜石が埋め込まれている。


 『竜石』と一括りに説明したが、段階により呼び方が異なる。

『竜の心臓の欠片』⇒竜の心臓の一部で竜石のもとになるもの。取り出した直後までの状態なので、まだ生々しい状態。

『竜石』⇒空気に触れて結晶化した状態のもの。時に美しい輝きを放つ。

輝石きせき』⇒加工され、剣聖の胸に埋め込まれた状態のもの。淡い光を宿し、非常に美しい。



 話を戻そう。


「うーん、うーん」 

 腕を組み、レオナルドは、二つの竜石を見つめ思案していたが、諦めて顔を上げた。

 

「アレクセイ、君はこれをどう見る?」


 そこには、もう一人、赤毛の背の高い柔和で端正な顔立ちの男が、レオナルドの目の前に、直立不動で立っていた。


 剣聖アレクセイ・スミナロフだ。


「この二つの石からは。我々の使用する竜力フォースをあまり感じません。しかし。もっと気味の悪い力を感じます。腐食したとでも言えばよいのでしょうか?そのような得体の知れない力が覆っているように思います」

「うむ、そうだ。しかし、この元は、竜力であることは間違いない。奥底にチラリとそれが見える」

 レオナルドは、緑色の石を金色の眼に近づけ、覗いている。

「しかし、それは極々小さいものだ」

 腕を組み、二つの石を交互に眼を移す。そして、口を開いた。



「問題は、ブーレイがどうやってドラゴンを操作し、戦闘に投入しているのかだ」


 そして、レオナルドは、赤い宝玉を取り出した。

「これは、君が、持ち帰ったガラマーン・パラサイトのオギルが、使用していたという宝玉だ」

 ガラマーン・パラサイトのオギルルは、大杖にこの宝玉を仕込み、使用し、剣聖スフィーティア・エリス・クライを苦しめたのは記憶に新しいことだ。


「この宝玉は、妖術ケーセムに用いられるものだ。妖術は、ヴェストリ大陸中央部に住む辺境異民族の間で発展したスキルだ。魔術(魔導)とは根本的に性質が異なる。妖術は、技の対象に異常を付加する術が多く、対象を操作する術もある。この宝玉は、その触媒だろう。これと同じようなものが、ブーレイにもあるのだろう」

 レオナルドは、後頭部に両手をあて、椅子を後ろに反ら、天井を見た。天井には、星のような淡い点々が光っている。


「いずれにしても、この竜石のドラゴンがどこで産み出されているのかということでしょう」

「そうだ。その調査をスフィーティアに命じているが、彼女は脱線するからね。また、人間ひとの争いに介入しないかどうか危惧される。スフィーティア(あのこ)は、剣聖としては、情にもろすぎるのさ」

「否定はしませんが、そこが彼女の良いところかと」

「君もスフィーティアに感化され過ぎていないか?」

「そうかもしれません」

 アレクセイが、クスリと微笑をもらす。

「やめてくれよ。僕の心配の種を増やさないでくれ」 

 レオナルドが、机を叩き、釘を指すように言う。

 アレクセイは、まだ笑っていた。




 時間を少し巻き戻そう。スフィーティアがミーシアのグレゴリ要塞に出現したドラゴンを討伐した頃。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ここは、ブーレイ首都ベーリン近郊にある絢爛豪華けんらんごうかな宮殿クラスニー・パレスだ。


 ブーレイ国民は、ミーシアの戦争に大量動員され莫大な戦費を賄うため、税金の徴収や物価の高騰に苦しんでおり、首都のベーリンでさえ、貧困化し荒れているというのに、赤い装飾を基調としたこの宮殿の豪華さには疑問を禁じ得ない


 ここの豪華な大広間にブーレイン・フェデラル・シュタットの大統領プレジデントであるボロディミール・ベアーリンがいた。


 熊のように大柄で頭の毛の薄い男だ。緑色の軍服風の装いで胸にたくさんの勲章をつけていた。白い肌つやの良いのっぺりとした顔を撫でている。広間の奥にある一つだけ飛び切り豪華で大きな金色の椅子に座り巨躯きょくをもてあそんでいる。

 部屋には大きな扉の入口から赤い絨毯が敷かれ、天井には大きなシャンデリア、壁には赤や金を基調とした装飾と大きな絵画などが飾られていた。貧困で苦しんでいる市民の血税が、無謀な戦争やこんな無駄な装飾に使われれていると思うと悲しくなるところだ。

 この部屋には、やせ型で背の高い大臣とも僧侶とも思われる黒いゆったりしたローブを着た男が傍らに侍し、また、ベアーリンの背後には警護役の剣とライフル銃のような武器で武装した屈強な男二人が屹立していた。他にも20人位だろうか、側近が壁際に屹立していた。


 そして、ベアーリンの前には、濃い緑色肌で赤い眼をしたやせ型の耳長の人間族とは異なる異民族の男がいた。白い厚手のローブに身を包んでいた。特徴からみてガラマーン・パラサイトの一族のようだ。ただ、小柄なガラマーン・パラサイトにしては、長身で180㎝はあろうか。赤い細い眼は、鋭い眼光を奥に潜めていた。


「ミーシアの戦線で貴様の自慢のドラゴンが殺られたという。剣聖が、侵入したというが、大丈夫なのだろうな?」

「心配めされるな。それよりも、こちらを」

 ガラマーン・パラサイトの男は、緑色の宝玉のついた杖を差し出した。壁際に立っていた執事と思われる男が、それを取り、ベアーリンに渡す。


「ほう、これが、ドラゴンを意のままに操れるというものか」

 ベアーリンは、手に取り、ニヤリと笑う。


「左様。それがあれば、竜は持ち主の指示どおりに操ることが可能。して我らの対価の方は?」

「好きにするがよい。これでミーシアの領土獲得も進もうというもの。占領した土地のミーシアの女など好きなだけ連れ出すがよかろう」

「それは、何より。クククク。では、失礼いたすとしよう」

 ガラマーン・パラサイトの妖術師は、部屋から足音も立てずに出て行った。


 バタリッ!

 入口の大きな扉が閉じる。


「ふん、我が国に竜の力をもたらしたのは良いが、薄気味の悪い蛮族だわ」

「よろしいのですか?あのような妖しい輩をのさばらせておいても?」

 傍らに侍していた僧侶風の服を着た大臣が声をかける。

「今だけだ。竜の力を得られさえすれば、よい。その後は・・・わかっているな?辺境の蛮族などが栄光あるこのブーレイに足を踏み入れるなど、いつまでも許しておくものか。クッククッククク・・・。ミーシアの女もくれてやるものか。あそこの女は美女が多いからな」

 ベアーリンは、細眼で大臣に目配せする。

「はい、占領の暁には、選りすぐりの女を閣下のもとへ」

「ウッフッフッフッフ、ウッハッハッハ・・・」

 ベアーリンは、満足そうに大きな腹を揺らし高笑いをした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ここは、ミーシアの要衝『グレゴリ要塞』。

 

 早朝の時間だ。


 要衝『グレゴリ要塞』は、難航不落の要塞として、ブーレイ軍の前に立ちはだかっていた。

 ブーレイ軍は、碌な後方支援も無く兵士を送り込んでくるようになった。その中には、治療もされず再び送り込まれ杖などをついた負傷兵、どう見ても足元がおぼつかない高年齢兵、体の良い言葉で他国から騙して連れて来られた肌色の濃い異国人兵など、使い捨てと思われる兵士が多くいた。これら兵による無謀な突撃が繰り返され、鉄壁をほこるグレゴリ要塞を突破できず玉砕していた。

 しかし、現場の指揮官は、気にすることなく兵士を使い捨ての駒のように扱い、死んだ兵士も生きているとして上部へ報告し給金を懐に入れているという。こうした、嘘の報告も横行しており、中央部は戦局を見て正しい判断ができているようには到底思えないところだ。


 こうした、無意味とも思える攻撃が、毎日のように繰り返されていた。


 嘘によって始まったこのミーシアの戦争は、虚飾によりさらに嘘で塗り固められていく。



 グレゴリ要塞の城壁を守る兵士達の会話だ。

「ふう、今日も大量に兵士を送って来やがった。無駄だって言うのによ」

「ああ、全くだな」

「死体の山がまた増えたぜ。へっへっへっへ、ざまあみろってんだ」

「だが、こう絶え間ないとこっちも持たないぞ。正直、疲労が抜けない」

「ああ、そうだな。みんな疲弊している」

 周囲をみると、城壁上の兵士は、多くがへたり込んでいた。

「いつまで、こんなことが繰り返されるんだろう・・・」

 グレゴリ要塞の兵も、交替ローテーションはあるものの、間隔が空きがちで疲労が色濃く見える。



 早朝のブーレイ軍の歩兵による突撃攻撃が止み、グレゴリ要塞の兵士は、暫し安堵の雰囲気に包まれていた。



 しかし、それは突然破られることになった。


 そこに正面から飛んで来るものが目に入ったのだ。


「おい、何だ?あれは?」

 グレゴリ要塞の見張りの兵士が、寝ぼけ眼をこする。

「おい、あれは・・・」

「ドラゴンだ!赤いドラゴンがこっちに突っ込んで来るぞ!」


 突然、飛来してくる赤いドラゴンは、炎を吐き始めた。そして、炎で地上を焼き尽くしながら、グレゴリ要塞の城壁にどんどん接近してくる。赤いドラゴンの進路上には、再び攻撃を開始しようと動き始めたブーレイ軍の突撃兵がいた。ドラゴンは、それら兵士等も炎で焼き尽くしながら、グレゴリ要塞に突っ込んできたのだ。


「うわあ、逃げろーっ!」

「退避!退避!」

 城壁上の兵士が逃げながら、大声を発した。

 

 カーン、カーン、カーンッ!

 危険を察知した鐘楼の鐘も城壁内に鳴り響く。


 ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーッ!

 ドガシャーーーーーーーーーーーンッ! 


 炎竜クリムゾン・ドラゴンのこの攻撃により、要塞の城壁は、あっという間に炎と衝撃で脆く崩れ落ちていく。


 さらに、この城壁を撃ち破ったクリムゾン・ドラゴンは、要塞内に侵入するとゆっくりと降下してきて、炎ブレスを地上に向けてその大きな口から吐き出すと、円を描くように回転し始めた。要塞内の陣地や建物が、炎に包まれ、焼き尽くす。要塞中に炎が伝播し、燃え広がって行った。


 要塞内の兵士は、逃げ惑いながら、ほとんどの兵がこの炎で焼かれていった。

 わずかに、炎の災禍を逃れた兵等は、都市グレゴリ方面へと落ちのびて行く。


 この襲撃を終えたクリムゾン・ドラゴンは、上空でしばらく旋回していたが、何かを感知したのか、突然ブーレイ方面へと飛び去り、見えなくなった。



 グレゴリ要塞が炎に包まれ、煙が立ち上ると、そこを狙って、ブーレイ軍は、今度は、使い捨ての突撃兵ではなく、精鋭部隊を投入してきた。


 ブーレイ兵は、崩れ落ちた城壁からグレゴリ要塞に侵入すると、炎を避けながら生き残ったミーシア兵を見つけ出し、排除していく。


「誰か・・、助け・・」

 瓦礫に押しつぶされたミーシア兵が、助けを求め手を伸ばした。


 グサッ!

「ケッ、ケッ、ケッ!」

 ブスッ、ブスッ、ブスッ・・・。

 ブーレイ兵は、助けを求めるミーシア兵に容赦なく槍を突き立て止めをさした。

 

 侵入してきたのは、ブーレイ兵だけでは無かった。

 背は低く濃緑色で耳長の異人種も含まれていた。短めの剣で武装している。とても俊敏で残忍なガラマーン・パラサイトの連中だ。500人位はいるだろう。パラサイトは、男は容赦なく殺し、女は凌辱する性質を持つ嫌悪すべき輩だ。そんな連中もブーレイ軍に混じっていた。


 グレゴリ要塞を覆った炎は、燻っているものほとんど鎮火された。


 クリムゾン・ドラゴンの襲撃とブーレイ軍精鋭による攻撃により、グレゴリ要塞は、あっけなくも陥落した。


 そして、ドラゴンは去ったものの、ブーレイ兵とガラマーン・パラサイトの兵士等は、次の目標である都市ポリスグレゴリへと攻め上がるのだった。


                                (つづく)



え?剣聖団本部はどこにあるのでしょうね?そう言えば、まだ本編でも場所はわからないですね。序章では出て来ないでしょう。本編で、わかるでしょう。読んでいただきましてありがとうございます。

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