元義兄、なんとかギリギリ耐える
「俺の・・・・・・・・・妹は・・・・・・・・・れみだけなんで・・・・・・・・・!!」
危なかった・・・・・・・・・。
なんとか耐えられた!
俺がれみの兄貴だったから耐えられたけどもし違ったらダメだった・・・・・・!
偽妹には勝てなかったよ・・・・・・・・・と途中で心が折れかけたけど。
「もう我が儘なんだから~。でもそのお兄ちゃんぷりは嫌いじゃないぞ? えらいえらい」
いや、さっきの妹Verととんでもない違いだな。完全にいつもの先輩で、姉モード全開だ。ガチで幻覚だったんじゃないかってくらい。
妹になりきっているときは悪魔の誘惑みたいな可愛らしさがあって、今はすっかりあらゆる不浄も包みこむ慈愛に満ちた女神、いや神みたいになでなでしてきて癒やされるし。
もう、甘えたいっっっ。
「だってお姉ちゃんは神にも悪魔にもなれるのよ?」
「先輩ってマジンガーZだったの!?」
「私が鉄の城に見える?」
だって兜甲児のおじいちゃん兜十蔵が言ってたもん!
マジンガーゼットは神にも悪魔にもなれるって!
だったら神にも悪魔にもなれる先輩こそマジンガーZじゃないか!
「残念だけど私は光子力で動いていないしロケットパンチもブレストファイヤーも使えないわ」
「でもおっぱいミサイル(性的な)使えるでしょ? きっと」
「・・・・・・・・・」
「ご、ごめんなさい冗談でしゅ・・・・・・」
先輩の笑顔が、こわくなった。安易な下ネタは時にセクハラになってしまうんだな。ダメ。絶対。
「なるほど、そういうことね・・・・・・・・・わかった。お姉ちゃん頑張る」
「え?」
「おっぱいミサイル(物理)使えば泊めてくれるんでしょう?」
「そんなこと一言も言ってないですよ!? というか無理でしょ! やめておきましょって!」
グ! と胸の前で意気込んでおっぱいを引っ張ったりぐぐぐ、と強調したりしている。男としては非常に非常に眼福で、これはこれは結構なお点前で大変よろしゅうございますって感想しかない。
頑張ればこのままおっぱいミサイル(性的な)も使えるようになるんじゃ?
「ふん、ぬぬぬぬぬ・・・・・・・・・」
いや、おっぱいミサイル(性的な)ってなんだよ。馬鹿じゃねぇの? 俺。
急激に自分に冷めてしまったせいで今更だけど、どうしてここまで先輩は泊まりたがる?
こんなことしていたら電車もバスもなくなって本当に帰れなくなってしまう。
いい加減先輩が諦めるか。それか理由を聞きたいところだけど。
「うう~~ん。ダメだわ。飛ばない・・・・・・・・・」
「そりゃあ飛ばないでしょ」
というか先輩もしかして物理的におっぱいミサイルしようとしてたの?
世界丸見えか世界仰天ニュースに出れるわ。
そこまでして泊まりたいなんて・・・・・・・・・。
いや待てよ?
とんでもない無茶振りすれば先輩も諦めるんじゃ?
「じゃあわかりました。ボディーペイントしたまま俺と夜の公園までデートしてください」
「わかったわ」
「嘘ぉ!? マジで!?」
こいつ正気か!?
ドン引きするわ!
そこまでして男の家に泊まりたいの?!
まだけっこう暑いんだぞ!? そんなんで外出たら速攻いやんまいっちんぐ~~になること請け合いだ! 昨今の女騎士みたいに二コマで堕とされてるに決まってる!
誰とも知らない人に裸を見られることになるんだぞ!? ガン見されるんだぞ!?
恥ずかしい、こんな姿で今行ったら余計見られちゃう、よしよしじゃあとりあえず人気のないほうへ行こうかぐへへへって自然な流れで外でおっぱじめることになんだぞ!?
それがボディーペイント物の醍醐味の一つだけど、まさかそれを先輩がしてくれるのか!?
そんな、俺達の先輩が。
いつも優しくて誰に対しても平等に接して明るいお姉ちゃんが。羞恥に悶えながら全裸の公園で「うう、恥ずかしい・・・・・・あ、もうこんなところまで色が落ちてきてる!?」とか「だめ、絶対今通り過ぎた人達ガン見してた!」とかやってくれんの!?
見たい!!
「ってそうじゃない! いやごめんなさい頼むからやめてください嘘ですそんなことしたのが誰かにバレたら俺が殺されます!」
「えっと、ペンキでいいかしら?」
「ペンキは体と肌に悪いし道具もないんで――ってそうじゃなああああい! 今日はやめましょう後日後日後日ううううう!」
先輩を説得して落ち着かせること数分。
なんか変になってたけど、それもこれも先輩が突拍子もないおかしなことをするからだと目的を思い出す。
「先輩。理由を教えてください。どうしてそこまで泊まりたいんですか?」
流石にもう聞かざるをえない。先輩はおもむろに俯いて押し黙ってしまった。
「そ、それは――・・・・・・・・・」
言い淀む先輩に、やはりといつもとは違うんだと
もしかして、泊まらなくちゃいけない理由があるんじゃないか?
例えばそう。さっき言ってた家のゴタゴタ。考えてみれば先輩がこうも強引に押し通そうとするなんて・・・・・・・・・・・・。
『瞬くん、このデータをエクセルに入れ直す作業してくれる? え、眠い? じゃあいい裏技教えるわね? アイマスクにタバスコを染みこませて一分くらい瞼に――』
まぁ大学ではよく手伝いを強制的にさせられているけど。
それを抜きにしてもだ。先輩は誰とも仲がいい。わざわざ異性の家を選ばなくっても女友達の家にも行けたはず。
わざわざ俺のところに来るしかない事情があるってことじゃないか?
他の誰かに知られたくはない事情が。
「先輩・・・・・・・・・」
「ごめんね、瞬くん・・・・・・」
「っ」
胸を衝かれた。
どこか寂しげで、困ったような、先輩を見たら事情を聞きだそうとする意志も、これ以上拒むこともできなくなった。
ダメだ。
ここで先輩のこんな顔を見たら、男として後輩として。
いや、その前に。人としてできない。どれだけれみのことで助けられたか。
事情を問いただそうとする気も失せ、ふぅ、と息をつく。
「先輩にはいつもお世話になっていますしね。れみのことも含めて」
そして、覚悟を決めた。
「瞬くん・・・・・・・・・」
「それに前約束したでしょ?」
れみに合コンをしていることがバレて着拒&ブロックされたとき。助けてくれた。その見返りに一つ言うことをきく。そんな約束だ。
れみには土下座で許してもらおう。
健達には・・・・・・・・・・・・今度秘蔵エロDVDを贈呈して見逃してもらおう。それか焼き肉屋か寿司屋で奢ろう。
「瞬くん・・・・・・・・・ありがとう。ごめんね? 瞬くんも大変なのに」
「なに言ってるんですか。俺と先輩の仲でしょ? これくらいで先輩の役にたてるんなら本望です。例え 火の中 水の中草の中森の中土の中雲の中あなたのスカートの中ですよ。ははっ☆」
「・・・・・・・・・ちょうどポケモンしたかったのよね~~」
あれ? ジョークのつもりだったけどおかしいな。先輩の笑顔が遠く感じるぞ?
「じゃあ対戦しましょうか。俺のミュウツー×六体パーティーか旅ポケパーティーのどっちがいいですか?」
「懐古厨とミュウツー信者には私のベビーポケモンパーティーで充分。リージョンフォームパーティーにも隙はないわよ? でもその前に汗搔いちゃったからシャワー浴びてもいいかな?」
「ええ。勿論。タオルと着替えは――――」
そこでフリーズしてしまった。
ちょっと待て。
シャワー? ということは風呂に入るってことだよな・・・・・・・・・。俺がいつも使ってる風呂を使うと・・・・・・・・・。
マジで?




