元義兄、帰宅する。そして元義妹が出迎える
「お、終わったああ・・・・・・・・・」
「お疲れさま~~~。よく頑張ったねよしよし~~」
「先輩俺も俺も~~! 今日も頑張って生きて呼吸してたから撫でて撫でて~~! ついでに膝枕して耳かきして耳の穴にフーフーして~~!」
先輩に癒やされてほんわかする余裕も、いつもすぎる健にツッコむ余裕もない。
いつも以上の急がしさ&過酷な重労働に身も心もボロボロ。
「うう~~ん。鼓膜の保証できないよ?」
「全然大丈夫です! 俺Mの素養があるんで!」
一瞬の快楽のために聴力失う覚悟とか、こいつアホか。
「よしじゃあ瞬! お前早く夕飯の準備しろよ! その間に俺は先輩と、ひひひひひ!」
鬼か。
けど、暫く俺は奴隷。従うしかない。
ピロン♪
携帯が震えた。
連絡をくれた人物の名前を確認して、ほっこりと笑みが浮かぶ。
「あ、どうした瞬?」
「いや、実は――」
「早く夕食準備してくれよぉ~~。ミネストローネとカルパッチョとパエリアと茶碗蒸しがたべたいんだよ~~」
「悉く難しいメニューなのとここじゃ絶対作れねぇ料理じゃねぇかっっ! 不可能を可能にしろってか!」
「ああ~~~! 痛い痛い痛い! 誰かさんに殴られまくった傷がぶり返してきたああああ! なんだよぅ~~~~! これ古傷になんだろうなぁ~~!」
こ、こいつ・・・・・・・・・!
「わかったよ。じゃあ――」
「健くん。ちょっと付いてきてくれる? 買い出ししたいの」
「「へ?」」
急な提案に揃って目をぱちくりさせる。
「いや、それこそ瞬にやらせればいいじゃないスか?」
「お姉ちゃんと二人っきりじゃ嫌なの? 寂しい・・・・・・・・・」
「服屋!? それともブティック!? 荷物持ちでも犬にでも喜んでなりますよお姉ちゃんんんんんんん!!」
「ふふふ。じゃあ行きましょか」
「あの、先輩?」
先に部屋を出て行くとき、先輩は意味深にウインクをしてきた。そしてすぐにメッセージが来て、
〈健くんは私が引きつけておくから〉
「え?」
〈鍵はいつも通りの場所に、妹ちゃん待たせちゃだめよ? お兄ちゃん♪〉
「はは・・・・・・・・・」
どうやら先輩にはお見通しだったらしい。その上で気を遣わせてしまった。
俺もまだまだだな。
今度先輩にお菓子差し入れしよう。
〈卒業まで馬車馬のごとく人権も糞もない生活を送るんだから今のうちに英気を養っておいて♡♪」
「悪魔か!」
それは、これはこれ。
やっぱり小田先輩も先輩だった。
帰り道。夕焼けに染まった空を眺めて帰路についていると、また携帯が震えた。
〈れみ今どこにいるか知ってるスか?〉
まりあちゃんからは、偶に連絡がくる。れみのことに関したときだけど。
〈さっさと返事しろ変態〉
〈クズ〉
〈返信できないってことはやましいことあるんスか?〉
〈最低〉
〈既読ついてんぞおい〉
〈やっぱりれみは任せていられないっス〉
〈通報すました〉
「ちょ、ちょちょちょ待てって!」
怒濤の連投に、返信する暇がない。
というか、悪感情籠められすぎだろ。本当に同一人物か?
〈あの子のこと泣かせたら今度こそ承知しないっスから〉
まそれだけ友達想いな子ってことだし。なにより俺に対して悪感情をむけている理由もこっちはわかりきっているし。
「しょうがないのかな・・・・・・・・・」
苦笑いしていると、あっという間にアパートに辿りついた。部屋の前で漏れている明かりと人の気配に、うっすらとした温かさが胸で広がっていく。
「お帰りなさい」
いるであろう人物の顔を頭に浮かべていたけど、ドアを開けるとすぐに立っている子が俺に気づいて、こっちをむいた。
疲れが吹き飛んだ。
美味しそうな夕食の匂いだけじゃない。自分を待ってくれていた大切な子が出迎えてくれたから。
「ただいま」
笑顔で答えた。




