元義兄、元義妹の親友にブチ切れられる。
それから話に話しこんで。更に話しこんでいって誤解が解けた。
カラオケ店でのことは、お互いの勘違いのすれ違いがゆえにおきた悲しい事故あったと判明した。先輩は恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にしながら、だけど年上の威厳を維持しようと咳払いをするけど、無理すぎる。
「でもそっかぁ~。れみちゃんとは元兄妹だったんだぁ~。どうりでどうりで~。あ、もうキスはした?」
「元兄妹だって把握してるのにその質問する意図はなんですか!?」
「じゃあれみちゃんとはどうするの?」
「・・・・・・・・・急にトーンダウンしないでシリアスにならないでくださいよ・・・・・・・・・」
テンションのアップダウンが激しすぎる。
「どうもできないですよ。説明しましたけど、元々嫌われてたのが、最悪なくらい嫌われたってだけです」
「んん~。そうかなぁ~。どうしてそうおもうの?」
「え? だって説明しましたよね?」
「ええ。瞬くんからの一方的な観点でね」
飲み物を一口飲んで、間を空けた。
「研究だと、ある事象を調べるためにいろいろな実験をするでしょ? それで得られたデータを元に仮説をたてて最後に結論を出す。それと同じよ。だかられみちゃんが瞬くんをどうおもっているのか。その事象について瞬くんからの観点は得られているけど、私からの観点、そしてれみちゃんの観点はまだない。だから嫌われているっていうのは瞬くんの勝手なおもいこみ。それか仮説にしか過ぎないのよ」
のほほんとした喋り方だけど、的を射ている。そうだ、そもそもれみが俺のところに来るようになった理由だってちゃんと聞いたことがないじゃないか。
「もし私だったら心底嫌っている人には、二度と会いたくないよ? たとえ昔好きだった家族とはいっても。その人に頼まれたわけでもないのに自分の時間を犠牲にしてまで通い妻になるなんて。瞬くんは? どう?」
・・・・・・・たしかに。俺ももう二度と母には会いたくない。たとえあの人が命を落としそうになったとしても。
「じゃあ先輩からの観点は?」
「んん~。第三者から見てたら、れみちゃんは嫌ってなかったとおもうよ~? 演技で恋人になってたとしても、どこか嫌々やってるのもなかったし。逆に喜んでるところもあったし」
喜んでいる云々は抜きにして、先輩の言葉には説得力がある。
「それに、れみちゃんが私のところに泊まったとき話をしたからね~」
そうだ。再会したばかりの頃そんなことがあった。今までスルーしてたけど。
「ちなみになにを?」
「上杉瞬さんは大学でどんな風ですか? とか。お友達と仲良くしていますか? とか。あとちゃんとご飯食べれてますかとか成績のこととか」
おかんかあいつは。
「あと恋人はいるんですかっていう質問はグイグイしてきたっけ。たしかいないんじゃないっけ~って話してもそんなあやふやじゃ困ります、もっと的確に、仲のいい女性のお名前も教えてください、そもそもあなたとあの人は本当に先輩後輩かって」
「なんかすいません。いやほんと」
「あのときは瞬くんのこと好きになったのかなって勘違いしちゃったけど、あれは瞬くんのことが心配だったからなんだな~って」
もしそうだったらどれだけいいか。れみが俺を嫌っていない。それが事実であってほしいと。けど、たしかめに行く勇気が出ない。だってもし違ってたら? 全部希望的観測にすぎないとしたら? なんて言えばいいんだ。
「私の意見と観点で、瞬くんの一方的な仮定は崩れたよ~。あとはれみちゃんの観点を知れれば――」
「上 杉 瞬 は ど こ だ ぁ ~!!」
構内からの声が、外にいる俺たちにも伝わって揃って身を震わせる。ガラスの奥ではポニーテールをブンブン振り回してまりあちゃんがズンズンと学食スペースを闊歩しながらぎょろりぎょろりと視線を右往左往している。いつもと違ってとんでもない形相。
「私の親友を汚れ物にした上杉瞬はどこだぁ~!! この大学の生徒だってのはとっくにご存じなんだぁ~! 高校生を好き勝手弄んでゴミみたいにポイ捨てしやがったクズはどこにいるんじゃああああ!!」
「ちょ、おおおいいいい!!??」
さすがに放っておけない。このままじゃ俺の大学生活もと名誉が。それとあの子も不審者として経歴に傷をつけることになってしまう。先輩と一緒に学食エリアにダッシュで戻る。
「ああ、いやがったなこのやろう! ここで会ったが百年目っス!! あんたをここで潰してやるうう!!」
手に握っているバールのような形状のものをこっちに構えながら野営動物さながらの獰猛さで、怒りをあらわにしている。
「ちょ、まりあちゃん落ち着いて。どうしてここに?」
「うるさううるさいうるさ~い! よくも私の友達を泣かせたっスね! 絶対許さないっス! これであんたのを三つとも潰して開いてぐちょぐちょにして裂いて細切れにしたあとちょん切ってやるっス!」
なにを!? と聞きたかったけど、自然とまりあちゃんの視線が股間付近にいっているのをみてサァー・・・・・・と血の気が引いて内股になる。
「ちょ、ちょっと落ち着いて。え~っと、あなたオープンキャンパスに来てたわよね? もしかしなくてもてれみちゃんの?」
「ああ!? ああ、あんた! この泥棒猫!」
「ど、泥棒!?」
「れみから聞いてるっス! あんたとこの男が浮気してるって! 優しそうな顔して、人の男を誘惑すたぁどういう了見すか! あんたのも二つとも捥いでれみに移植してやるっス!」
バッ! と先輩が胸を手で覆い隠す。二人揃って腰が引けたまま、まりあちゃんと対峙しているけど、彼女は興奮しきっている。
まずはここから離れなければいけない。
けど、バタバタ暴れるまりあちゃんの肘やら後頭部やらがあちこちに当たって、ブチ痛い。




