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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
グリーンフィールド 魅惑の森と最悪の魔獣編
142/148

第142話 事態は着々と終幕へ

 敵になってしまったアルバルトによって、撤退を余儀なくされたレティシア達は一旦グリーンフィールドへ引き返し、目覚めたミドルウッドと共に作戦を練っていた。


「勇者が敵の手に渡ってしまったこの状況、現状は最悪と言ってもいい。もし勇者が魔王の手に落ちてしまえば、我々…いや、このミストリア大陸に住む全ての種族が滅びるだろう」


「魔王は勇者にしか倒せない。それは聖典にも記されています。勇者様を早急に取り戻さなくてはなりません」


「アルバルトだけじゃない。他のエルフも戻って来ていない人もいる。まだあの古城に囚われていると思う」


 魔王の脅威を知っているミドルウッドやマリアが言う様に早く勇者であるアルバルトを取り戻さなくてはならない。もしも、魔王の手に渡れば、彼の者を倒せなくなり、この世の全てが闇に覆われて終わる。


 それだけは何としても避けなくては、まだ囚われのエルフ族もいるというのに難易度は更に跳ね上がってしまった。


 そんな中、マリアの治療によって復活したレティシアは大きく息を吸って胸に溜まった苛立ちを吐き出した。


(こうしている間にもアルバルトさんの身が危ないのは分かってますが、冷静になりなさい私)


 大切な人を奪われて頭がカッとなってしまい、冷静さを失いかけている。


 でも大丈夫。落ち着いて、あのアルバルトさんがやられっぱなしな訳がない事ぐらい分かりきっている。


 何度でも困難な場面に遭遇しながらもしぶとく生き残る彼の姿は今でも目に焼き付いている。


 だから今回も大丈夫…の筈だ。


 彼を信じて私は私に出来る事をしなくちゃいけないのだ。

 冷静になって現状を振り返ってみる。


(いまこの場にはいないミリアさんとヴィーラさんがミドルウッドさんの指示に従って部隊を編成しています。古城にはまだ敵の手勢も大勢残っている筈…)


「作戦なのですが、4部隊に別れて同時に攻め込みませんか?」


「うむ…四手か。古城の東と西、南側に配置するのは分かるが北側は崖に面しているぞ?」


「まずは南側、つまり古城の門がある方ですがそこにはミドルウッドさんが率いる部隊で敵の炙り出しをお願いします。東側にはユージーンさん、西にはヴィーラさんとミリアさんを配置して出て来た敵を横から叩きます」


 例え、もし魔族やアルバルトさんが出て来ても3方向からの同時攻撃に対処は難しい筈。

 ユージーンさんとミリアさんを分けたのは2人ともある程度の遠距離からの攻撃が可能だからだ。


 防御が上手いヴィーラさんをミリアさんの側に置き、他のエルフ族の皆さんで固めれば、なかなか攻め込むには困難な要塞が出来上がる。

 近中距離が得意なユージーンさんならば、魔法に長けているエルフ達と相性もいい。

 ミドルウッドさんは私達より遥かに強いから安心して負担の大きい城の正面を任せられる。


「私とマリアさんは崖を登って城へ侵入します」


「えっ……えぇ!?崖なんて登れないのですが…!?」


「大丈夫です。私が背負っていきますから」


「本当ですよ。絶対に落とさないでくださいね!」


「ええ…貴方の治療魔法で洗脳が解ける。ならば私達はエルフ族、そしてアルバルトさんの洗脳を解いて内から攻めればいい」


 嘘だろおいと、崖を登る事を想像してしまったマリアはぶるぶると震える。狼獣人としては腕力が高いレティシアが運ぶ事を聞いて少しは落ち着いた様だ。


 とはいえ、敵陣地に少数で乗り込むのだ。危険と分かっている所に突っ込むというのはやはり怖いものはある。通常ならマリアの様に身震いしても不思議ではないが、レティシアにとっては屈辱以外の何者でもない事。


 大切な人をこの手で取り戻したい。

 目の前で連れて行かれた後ろ姿はこの目に焼き付いて離れなかった。震えている暇があるなら震える足を大地に突き刺し、自らの手で強く引っ張りあげてやる。


 彼女の瞳はアルバルトを連れ攫われてからというもの、ずっと眼光は鋭いままだった。


「あいわかった。私は正面を押さえよう。2人とも、危険な賭けではあるがよろしく頼むぞ」


「はい。ではこれより古城奪還作戦を開始します!」


 レティシアの声で彼らに力が漲る。

 慌ただしく動く動くユージーン達を眺め、レティシアもまた爪が食い込むぐらいその手に力を込めた。


 腰に付けている魔法袋の中を探り、()()()()()()()を取り出す。これはリリィが去り際に置いていった物だった。


(あの子について、私はもっと知らなければいけない……そんな気がします)





 ◆





 アルバルトが敵の手に渡ってから1時間あまりが経過した頃、ヴァンピスら魔族が支配する古城では上機嫌な鼻歌が聴こえて来る。


「ふふふーんふん、今日は最高の日よ〜!私の手に勇者が堕ちるなんて…!見た目は厳つくてあまり美しくはないけど、及第点って事ね。でも勇者を手中に収めた今、魔王様も大層お喜びになられるというもの!」


(……どうしてコイツに勇者が手に入れた事がバレたのかしら。監視の目もなかったというのに…)


 帰って早々、リリィ達を集めたヴァンピスが上機嫌であった事にリリィは首を傾げる。彼女の後ろには無言のまま佇んでいるアルバルトの姿が見える。


 その事にヴァンピスは満面の笑みを浮かべ上がらせた。


「……そして私はその手柄から魔王様直々に寵愛を賜われるぅ〜、ぁぁ…想像するだけでゾクゾクしちゃうわ」


 うっとりという表情になったヴァンピスを見て気色悪いと吐き気を催したリリィだが、喉元まで来たそれを飲み込んで顔を伏せる。

 リリィと同じ様にヨルとルイも視線を下へ、跪いたまま黙ってヴァンピスの動向を探っていた。


 勇者を捕らえた立役者であるリリィにヴァンピスが語りかける。


「よくやってくれたわ。男を惑わす事しか取り柄がないって分かっていたけど、流石よねぇ…?」


「………ありがたいお言葉ありがとうございます。これも全てヴァンピス様とお姉様方の力添えがあったからというものです」


 このヤロウ…!嫌味ったらし過ぎる。こうもあからさまに突っかかってくるとは予想外だ。


 その醜い面をぶん殴りたくて仕方ないけど、今は我慢する。


 せっかく手に入れた勇者だ。お姉様達がアイツから離れる頃合いを見て消し掛けてやる。


 私が虎視眈々と狙っているとは知らずにヴァンピスはお世辞を言われて気をよくしたみたい。ピカピカに磨かれたワイングラスを片手に踊り出しそうな雰囲気だった。


「さてと、早速勇者だけどぅ……少しは味見しても大丈夫よねぇ。勇者ちゃんはどんな味なのかしら?」


 チロリと赤い舌で口元を舐めたヴァンピスがアルバルトへ接近していく。最早リリィ達は見慣れた光景だったが、いつ見てもこの食事シーンは慣れるものではない。


「……………っ」


「ぢゅるぢゅるぢゅる〜………!!?」


「ヴァンピス様、どうなされましたか…?」


 ヴァンピスは突然大きく目を見開き、アルバルトの首元から口を勢いよく離したと思えば、顔を手で覆ってその場から数歩、後ろへ下がる。

 リリィは初めて見た行動に警戒と不安の入り混じった声色でヴァンピスへと話し掛けた。


「フルルルル、フルルルルゥティィィィィィィィィイイイイッム!!!!何よ、これぇ。生命の鼓動を感じるこのプリップリの舌触りと飲めば飲む程、身体が火照る程に暑くなる濃厚で奥深い魔力の塊!これが唯の人族!?おかしいわよ、こんな美味しい物なんて食べた事がない。これが勇者!でもこれはダメ。少し薄めないと…私が気絶しちゃう程、危険な代物だわ」



「…………きっも」

「シッ、聞かれたらどうするの」

「リリィ、気持ちは分かるけど落ち着きなさい。ルイも顔に出てるから引き締めなさい」



 ヴァンピスは奇声を上げ、ブリッヂしながらビクンビクンと身体を震えさせていた。顔を覆う手の隙間から見える目は血走り、口もだらしなく開かれている。

 その異様な姿を見てリリィはたまらず、思った事が声に出てしまった。その時の後悔はないという。


「ハァハァ……リリィ、私の準備が整い次第、魔王様の元へ行くわよ。それまではご褒美に貴方のお姉様と好きな様に過ごす事を許可するわ」


「あ、ありがとうございます!」


「それからヨル、貴方は勇者を牢へ繋いだ後、このグラスに彼の血を集めなさい。その後は私のお手伝いよ、()()()()()()()?」


「…………かしこまりました」


 パチンとヴァンピスが手を鳴らす。


「そうと決まれば、時間が惜しいわ!グズグズしてたら取り返しに来るだろうし、急ぐとしましょう。ほら行くわよ、ヨル」


 そう言い残し、足早にヴァンピスがヨルとアルバルトを引き連れて部屋から出ていった。取り残されたリリィとルイ、それから配置されたエルフ族の男達。


 ヴァンピスがいなくなった瞬間、リリィはルイの胸元へ抱きついた。


「ルイ姉様っ!」


「はいはい、リリィは甘えん坊なんだから。で、どうするの?魔王様の元へ飛ばれちゃったら……」


「その話は私の部屋でしましょ。アイツが何処で情報を仕入れているのか謎だし…」


 ヴァンピスは私が勇者を手に入れた事を事前に知っていた。奴より少し早く城へ帰還した私達は魅了で手に入れた勇者を隠す為に私の部屋へ向かっている最中、走って来た見張りのエルフ族から伝言を聞いた。


 渋々、隠すのを諦めて勇者を引き連れて行ったが、離れ離れになるなんて…隙を見て奴を倒す計画を練り直さなくてはいけない。

 そこまで時間もない筈だ。慎重にだけど素早く動く必要がある。


「それもそうだけど…ヨル姉、大丈夫かな?」


「急がなくちゃね、ヨルお姉様とルイ姉様の為に……」


「リリィ………ごめんね、ごめんね…!」


 おいおいと涙を流すルイ姉様を抱き締める。姉様が私の為に泣く必要なんてないのだ。


 ヴァンピスに一度殺され、操り人形となってしまったお姉様達を救うには私しかいない。


 今まで迷惑ばかり掛けてきたんだ。


(私の手で解放しなくちゃ、例えそれでお姉様達と離れ離れになったとしても…)

レティシア達が戦力を整え、ヴァンピス達が根城にしている古城へと向かう。


次回『俺の行くべき道は……』


アルバルト視点からお送りします。



最後まで読んでくださりありがとうございます。

久しぶりの評価頂きありがとうございました。

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