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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
グリーンフィールド 魅惑の森と最悪の魔獣編
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第138話 サキュバス姉妹 ヨルとルイとの遭遇

 


「ーーーハァッ!これで最後っ!!」


 巡回していたエルフが数名、まだこの辺りを警戒していた。

 俺達はそいつらを囲う様に陣形を展開し、ミリアが魔法を飛ばしてまず1人を倒す。


 その合図を皮切りに茂みから一斉に俺達が奇襲を掛ける。そして柄頭でゴツンと最後の1人をのしたところで一息ついた。

 痛そうな音がして自分でもちょっと引いてしまったのは内緒だ。支配されたエルフの容体を見ているマリアに話を掛ける。


「ふむ、成る程。自分の魔力を他者の魔力と融合させ、意識を乗っ取るって感じですか」


「マリア、治せそうか?」


「これなら少し時間を掛けますが問題はないですよ……"解呪(ディスペル)"!」


 マリアが倒れたエルフの側にしゃがみ込み、身体に手を触れる。すると仄かな淡い光がそのエルフを包み込んで光が弾けた。

 光の粒子が消えていく中、彼は薄らと瞼を開ける。


「…………お、れは?」


「気付いたのね!ほらこれ、お水よ!ゆっくり飲んで!」


「ゲホゲホ…すまん。まさかお前に助けられる日が来るなんてな。あの小さい子がここまで立派になって……」


「それだけ元気なら大丈夫ね。これから貴方達は国に帰ってお祖父様と合流して!今、私達は魔族と戦っているの。一刻も早く戦力が欲しい状況なのよ」


 ミリアが腰に吊るしてある魔法袋から水筒を取り出して息が乱れているエルフに手渡す。

 ゆっくりと水を口に含んで飲み込んでいく同胞にミリアは安堵のため息を吐いた。


 その間も他のエルフに対して治療に当たっていたマリアは魔力のゴリ押しで彼らを支配している魔力ごと塗り替えていき、正常の状態へと戻していく事に成功した。


「大丈夫ですか、聖女様。」


「えぇ、大丈夫。ちょっと疲れただけだから。心配してくれてありがとう、ヴィーラ」


「いえ、無事ならばよろしいのです」


 続々と起き出し、国へと帰還するエルフ達を尻目にアルバルト達はもう目と鼻の先にある古城へ視線を向ける。


 もう後戻りは出来ない。

 分かり切っていた答えをもう一度口に出す。これより先は激戦区だ。少しだけ震える足で力強く地面を蹴る。


 不安や恐怖を地面に押し付ける様に大地を踏み込んで加速していく。流れる様な景色、近づく度に大きく見えて来た古城。辺りには瓦礫が散乱している事に気付いた。




「……っ、何か来ますっ!」


 レティシアの耳がこちらに近づいて来る何者かの気配を察知した。彼女の声でアルバルト達は足を止め、周囲を警戒する。


(また操られたエルフか、それとも……ッ!?)


「なんだ…瞼が急に重たくなって…」


 この異常なまでの眠気といい、敵の姿さえこの霧で見えない……霧?


 いくらなんでもこの真昼に霧だなんておかしい。先程までは快晴だったのに今じゃ、隣にいたレティシアの姿さえがよく見えない。


 その時、俺のすぐ側で何かが動いた気がした。


 始めはレティシアかと思ったが、視線を向けると目の前には長く鋭い爪で襲い掛かって来る敵の姿だった。

 ほぼ無意識に腕が顔の前まで持ち上がり、何とか顔面の直撃だけは避けたが、守りに回した腕が斬られた様に熱い。


「あっつ……!」


 俺が防いだ事で敵は身を再び霧の中へ隠すと今度はユージーン達に標的を変えた様だ。

 あいつらの戸惑いと苦痛の声が聞こえてくる。

 戦況はこちらが劣勢、このままではいい様にされて全滅だ。何か策を講じる必要がある。


(まずはこの霧を何とかしなきゃダメだ。相手の姿が見えないんじゃ、戦いようがない。この中でそれが出来る人物は……彼女だけだ!)



「レティシアァァァァ!!!」



「分かってます!風よ、我が手に宿りて我が敵を吹き飛ばせ……ウィンドブレス!!」




 大声で彼女の名前を叫ぶ。流石は俺の相棒だ。この状況の打開策を見つけていた。

 俺達もやられっぱなしではない。ここから反撃だ。


 レティシアが最大出力を出す為に詠唱し、魔力を練り上げる。そして風魔法で辺り一帯に発生した霧を吹き飛ばした。


 晴れる霧の中、ヴィーラに攻撃を仕掛けている魔族の姿がはっきり浮かび上がる。

 その事にいち早く迎撃に打って出たのは日頃の訓練の賜物か、大楯を構える彼女は魔族と自身の間に盾を滑り込ませて敵の攻撃を弾くと腰に携えていた剣を引き抜き、一閃。


 ヴィーラの剣筋は鋭く、身体を真っ二つにさせられた魔族は悲鳴を上げる事も出来ず、空気中でその身を散開させた。


「………っ、アルバルト様!腕を出してください!お早くっ!!」


「あぁ…そうか。悪い、助かる」


「何でそんなに冷静なんですか!"治療(ヒール)"!」


 俺の切り刻まれた腕を見て慌てた様に走ってきたマリアが、傷口に手を翳す。みるみるうちに治っていく腕を見て、へぇ〜やっぱり綺麗に治るのかと馬鹿みたいな事を考えてしまった。

 いつもこの程度なら鬼人族の再生力で治していたので大怪我とは認識出来なかった。慣れって怖いのね。


 若干こちらを恨めしそうに見てくるマリアから目線を逸らし、霧の向こうに立つ俺達の敵に目を向ける。


 ………そこには俺の想像すら超えた魔族がいた。思わず、声が口から漏れてしまう。




「「なっ!?」」


 ユージーンと声が重なった。それはそうだろう。俺もサキュバスを見るのは初めてだ。驚くのも無理はないだろう。

 ある程度、奴らの格好は予想はしていたよ。前世でもサキュバスっていうのは大体相場が決まっている。



 ()()()…ムチムチパツキンボンデージお姉様とその傍で何処が服?っていうほぼ網目状の紐で構成されたやっっっべぇ服を着こなす水色髪お姉さんとは想像出来ねえだろ。


 どちらもボン、キュ、ボーンの男受けするだろうスタイルに思わず目が釘付けになり、ゴクリと喉が鳴る。


「ごめん…紙持ってねぇ?鼻血が出そうだ」


「僕も持ってない。だが、どれだけ美しくても相手は魔族だ。僕の槍は君達を貫くだろう!」


 勇ましい親友を持って俺も覚悟を決める。そうだ、どんなに美しくてもやっている事は非人道的で許されるべきではーーー。


「あら、つまずいちゃった♡」


「「ブフォッ!!!」」


 躓いたと前屈みになり、弾むふくよかな胸。

 その神秘的な光景に俺達の脳は一瞬にして焼き尽くされた。


 興奮は最高潮。脳から全身へ、身体中の血がドクドクと激しく巡り合い、その負荷に耐えきれなくなった鼻の中の毛細血管が破裂する。


(まさか鼻血を出して意識が飛び掛けるとは……恐るべき魔族の攻撃っ!)


「スケベ」

「グゥルルル……」

「どうどう、レティシアさん落ち着いて…」

「敵に隙を見せるとはまだまだだな」


 背後にいる女性陣からの冷たい視線が突き刺さる。若干名、後で噛み殺すとばかりに鋭い視線と唸る獣がいるが、気にしない。気にしたら負けなのだ。


「おかしいわね。ルイが魅了を掛けているのに鼻血止まりなんて…」


「ヨル姉、私ってサキュバスとしてやっぱりダメなのかなぁ…」


「大丈夫、貴方は可愛いわ。何といってもこの私の可愛い妹なんだから」


「……ありがとう。私頑張るっ!」








 …………やりづれぇ。美しき姉妹愛とかやめてくれよ。ただでさえ、攻撃するのも躊躇してしまうのに。


「ああ、もう!肝心な時に使えないんだから!こうしている間にもお祖父様達が頑張って足止めしてくれてるのよ!」


 ミリアが腹の底から声を出す。きっと不安なのだろう。彼女の祖父であるミドルウッドが今、魔族を相手に立ち回っている。あの七英雄に数えられる歴戦の猛者が易々と倒される筈はないと思うが、相手は男を魅了するサキュバスである。


 エウロアエ王国、ヒガリヤ国でも俺達をいつも苦しめてきた存在。マリア特製のお守りがあるとはいえ、万が一にもミドルウッドが奴らに支配されてしまったらと考えると絶望しかない。


 そう、俺達は時間を掛けてはいられないのだ。


「私達がすべき事はエルフを苦しめる原因をやっつける事。だから私は躊躇なんてしてやらない。魔族はここで全部倒す!ーーロックレインッ!!」


 大地から生成された土の弾丸は真っ直ぐ魔族に向かって降り注ぐ。その後をレティシアが追尾していく。


「アルバルト殿っ!私達も行くぞ!」


「……ユージーン。女相手だが、お前は戦えるか?」


「僕にだって守りたいものはある。僕はミリアを守りたい。彼女を襲うというのなら、例え相手が女の子でも僕はこの槍を振るう」


 ユージーンの顔がくしゃりと歪む。彼は苦渋の決断をしたのだ。女の子に優しいユージーンはこの戦いは不向きだと思う。だけどそんな彼が決意を見せた。

 その瞳からは守り抜く為にはすべき事なのだと読み取れた。


 大剣を握る手に力が入った。


 これは互いの命を賭けた戦いなんだ。躊躇すれば喰われる。勝負は一瞬、隙など見せてはいけなかったのだ。


「ハァァァァァ!!!」


 土の弾丸は2人の魔族に降り注ぐが、妖艶な笑みを浮かべて回避する。

 後方へ下がる魔族の間に入り、レティシアが魔力を短剣に込め、刀身を伸ばしてその場で薙ぎ払い。


 まさか剣が伸びてくるとは予想も出来なかった魔族は先程とは打って変わり、慌ててその場を立ち退いた。


「貴殿の相手はこの私だっ!!」


「クゥ…ッ!ヨル姉ェッ!!!」


 その隙をヴィーラが逃さない。

 ルイと呼ばれた女魔族を盾を前に構えてその場から更に引き離す。


 彼女達のお陰で当初の予定通り、魔族を分断する事が出来た。3体1に持ち込めばこちらに部がある筈だ。




「ルイッ!!」


「お前の相手は俺達だっ!」


 大剣持ちのアルバルト、身のこなしが軽やかなレティシア、回復や補助のエキスパートのマリアがサキュバスの長女ヨルと対峙する。




「私の相手は君達って事ね。いいわよ、私の好みの男もいるみたいだし、丁重に相手してあげるっ!!」


 素早い槍捌きを得意とするユージーン、強固な守護を持つヴィーラに火力面では申し分のない魔法使いのミリアがサキュバスの次女ルイを相手に各々の武器を構える。


 ミドルウッドと同様、アルバルト達も魔族との戦闘を開始した。

情報によれば、古城に住む魔族は3人。


ミドルウッドは死霊使いヴァンピス。

アルバルトら一行はサキュバスのヨルとルイ。


リリィは何処……。


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