第二十一話
今度は八階にある、遺書制作現場に来た。ここでは広々とした空間に、机と椅子が学校みたいに並べられていて、外の景色が一望できる窓がついていた。壁の一面は真っ白でシミ一つ、ついてない、僕の他に数人の男女が机に向かい合い遺書を書いてるみたいだ。
僕の隣にいる案内の白い女が、僕に何かを渡してきた。
「大事な物ですよね?忘れてましたよ、」
渡されたのは、お腹からビー玉が出るロボットだった、すっかり忘れていた、最初の首吊りフロアーの部屋のテーブルに置いたままだった。
「ありがとうございます。忘れるところでした。僕の中で唯一、捨てられないものでした。こんな子供みたいなオモチャにしがみついてて、恥ずかしいです。」
三十五歳にもなったおじさんが、こんなものを大事にしていて本当に恥ずかしい、しかもそれを僕よりも、はるか下の女に見られてたなんて、
案内をずっとしてくれた白い女は、ふふっと笑って、椅子を出し、優しい笑みを浮かべて、僕の目の前に座り、話をしてきた。
「聞かせて下さい、そのオモチャの事を、時間はたっぷりあります。ゆっくりしましょう。さぁ貴方のの言葉を下さい。」
飢えていた。僕の心が叫びだした射精がしたい、もう誰かのオカズや誰かの餌になるのは、嫌だ!
僕だって、1人の人間として!誰かに何かをぶちまけえたい!我慢なんてしたくない!!
僕は無我夢中で話をしだした。これまでの事、お母さんの話、お父さんの話、クレイジーマートの話、田中オーナーの話、魚下店長の話、そして美雪の事を、僕の持っている、全部!全部を!を白い女にぶつけた。白い女は、それを受け止めて。差し出す何かを優しく腰をふり射精に導く。気持ちいい、気持ちいい、僕は射精をする。美雪と過ごしたラブホテルの猥褻な夜よりも気持ちいい清潔な心地よさが脳を刺激し休ませた。
僕はさんざん話をして、疲れてきたのか、眠くなってきた。気が付けば外は暗くなっていた。
「大丈夫ですか?眠くなってきましたか?」
白い女は静かに言ってきた。その声が心地よく更に眠気を誘う。
「すいません。ここの所、ずっと寝ているのに、また眠いみたいで、」
「ここには仮眠室もございます。寝ていかれますか?時間はまだありますよ。」
僕はもう帰宅してもやることが、なかったので、少し仮眠をとって帰ろうと思った。家に帰れば、後は実行するだけだった。
白い女の案内で仮眠室に向かった、それにしてもここのレジャーランドのスタッフの人たちは、どの人も優しく、教育が行き届いてる、こんなオジサンの僕でも、嫌な顔一つせず話を聞いてくれる。エレベータに乗り九階の仮眠室にむかう、外は暗くて景色はもう見えなかった。
「外、すっかり暗いですね、でも暗くなったばかりで、まだ暗さに深みがないですね」
突然白い女が話をかけてきた。
僕はそうですねと、頷くと続けて話をしてきた。
「知ってましたか?闇が深いほど暁は近いんですよ、まだ夜は始まったばかりです。ゆっくりしましょう、まだ時間はあります。」
ここに来てからずっと言われてる気がする。時間はたっぷりある、ゆっくりしましょうと、ここの施設は本当に、レジャーランドなのだろうか?
仮眠室は、さながら、病室だった、、六個のベットが並んでいて、一つ一つのベットの間にカーテンがあり、プライベート空間は一応守れているみたいだった、白い女が案内したのは、窓際のベット、遠くで電車が走るのが見えた、耳をすますと、子守歌のゆりかごのオルゴールが流れている。僕はベッドに横になった、白い女が、隣のベットの敷居カーテンを閉めながら、静かに喋る、
「では相原竜也さん、ゆっくり寝てくださいね、時間は気にせず、お時間になったら起こしに来ますね、いい夢を見てください。」
そう言って白い女は静かに去っていった。なぜ僕の名前を知っていたのだろう、予約チケットで確認したのかもしれない。もうそんな事はどうでもいい、窓から、煌びやかな電車が走るのが見えた。あの乗客の中に僕はいない、この世界に僕はきっとどこにも、いなかった。街ですれちがう人も僕じゃなかった、テレビに映る芸能人も、ネットニュースにのる犯罪者もぼくじゃなかった。ただ欲の餌にされた僕の身体は静かに眠りについた
「相原さん・・・相原さん・・起きてください・・」
気が付くと、長時間眠ってしまったみたいだ、窓から見える外はすっかり明るかった。身体を起こすと隣に白衣を身に着けた。中年の女性が立っていた。さながら医者みたいな、雰囲気だ、さらにその隣には、僕をこれまでここの施設を案内してくれいた、白い女がナースの服を身につけ、立っていた。僕は分も分からず、ここはどこですか?と訪ねてみた。
「相原竜也さん、安心してください、ここは精神病棟です。うなされていたので、少し安定剤を打たせていただきました。」
まだ頭が混乱をしている。安定剤を打たれたせいもあるのか、まだ眠気の中にいる。
「これまでよく頑張りましたね、もう大丈夫ですよ、貴方の情報はこちらの看護師さんから聞かせてもらいました。ここは心療内科です。本当に死にたい人のために作った。仮のレジャー施設なんですよ、相原さんはこのまま入院していただきます。もちろんもう一度、社会復帰するまでお手伝いさせて頂きます。」
白い女、、いや、看護師さんが今度は話す。
「自殺したい方には必ず、前段階があります。それは、決して声に出せれないSOSです。そのSOSの役割がこの施設なんです。相原さん、これからは私が毎晩、いやずっとお話を聞いてあげますから安心してお過ごしくださいませ」
僕は全てを理解して、また目をつぶった。まどろむ耳の中で、白い看護師の声がしてきた。
「相原竜也さん人生は長いです。ゆっくり生きていきましょう」
(チャラララーン★ようこそ夢の国へ、あなたの待っていた世界が!今ここに!驚愕な体験!胸躍るアトラクション!そしてまだ見ぬ出会い!あなたは今、人生が充実してますか?キラキラした新しい世界に行って見ませんか?きっと素敵なことが起こるはず、
さぁ扉の向こうへ、チャララララーーン☆東京デスキラーランド!いよいよ開園です。
ここでは様々な疑似自殺アトラクションが楽しめます。遺書の作成指導も行います。ぜひご来場おまちしております。)
ここまで読んでくださりありがとうございました。
この話は実際、私が死のうしたときに、死ぬ練習ができたらいいな、と思ったことがきっかけで作りました。
今でも希死念慮は消えてはくれませんが、心療内科で治療して、今は本当に死のうなんて思いません。
この話は誰にも見られずパソコンの中で封印してましたが、私の生きていた証としてここに記します。
2026年10月11日 百合香




