1.誕生日に向けて
ちょー短いです。ごめんなさい…
「ほんっとに、ありがとね!!」
「いやいや〜、私らは何もしてないからね?」
「そんなわけないよ! あーちゃんには、いっつも助けてもらってるといいますか! ついでに颯にも! ホントに毎度毎度申し訳ない……」
「気にしないでー」
平謝りする白藤 姫乃に井上 綾菜は朗らかに笑う。その様子を、見ている人物が二人いた。
「いやぁ、綾菜から聞いたけどビックリだよね」
「そうだよねぇ。傍から見てれば、姫乃ちゃんと伊織ってかなりウブだけど、ラブラブにしか見えないもん」
驚いた様子で話す蒼井 菜那。それに同意したのは椎葉 心蕗だ。
今日はいつものメンバーでの集まりである。現在、五月。姫乃たちは高校二年生に進級した。
「あの、さ。またまた相談なんだけどいいかな?」
「うん、メッセで言ってたやつだよね? どしたの?」
「また伊織関係?」
首をゆったりと傾げた心蕗に、姫乃は「そうっちゃそうかな」と、少し歯切れの悪い返事を返す。
「あのね、もうちょっとでさ、伊織くんの誕生日なんよ」
「おー、それで?」
「その、メイクやってみたくて! だから、ちょっと付き合ってほしいなーって、感じで!」
実は姫乃はこれまで、メイクなど全く興味がなかった。これまで、中学生時代でも休日、やってる人は学校のある平日でもメイクをやっている人が多かった。
だが、姫乃は面倒くさい、とこれまで全くやってこなかったのだ。最低限のスキンケアくらいはしていたが。
「まじ!? えっ、行こ! 今すぐ行こ!」
「うんうん、姫乃ちゃんのメイク道具、選びたい!」
菜那が興奮し、心蕗も目をキラキラさせている。
(心蕗ちゃん可愛い……)
「じゃあ、行こっか!」
そうして、姫乃はノリノリの女子三人に振り回され、何とかメイク道具を買った。出費がすごい。先に誕生日プレゼントを買っておいて良かった。この一か月は節約しなければ、無一文まっしぐらだ。
そして、数時間後。姫乃は菜那の家で、女子三人に顔を弄られている。ずっと目を瞑っているのも、それなりに大変だ。ついでに、身体を動かしたら駄目なのも大変だ。
(メイクって大変だぁ……)
世の中の女性方はすごすぎやしないだろうか。
それから、数十分後。女子三人の手が止まった。
「姫乃ちゃん、姫乃ちゃん、目開けてみて」
心蕗の声が聞こえ、姫乃はゆったりと目を開ける。
「わ、わぁ……」
鏡には可愛らしい顔立ちの女性がいた。
ナチュラルメイクなので、別人みたいだ、とはいかないものの、かなり可愛く見える。何より、隈が見えず、肌が綺麗に見えるのだ。
「すごいね、ありがとう……!」
「全然! 楽しかったし」
「それな」
「ね。じゃあ、伊織の誕生日まで、姫乃ちゃんにメイクの特訓だね!」
「ご、ご教授お願いいたします、先生!」
敬礼をした姫乃に全員が吹き出す。
「それ、絶対ポーズ間違ってるよ」
綾菜のツッコミが聞こえた気がしたが、まぁ、気のせいだろう。
こういうのは気合が大事なのだ。多分だけど。
◇◆◇
「うぅ~、緊張してきた!!」
『大丈夫だって~。ひなのんはめっちゃ一生懸命練習してたしね』
スマホ越しに聞こえるのは、綾菜の声だ。
現在、伊織の誕生日当日!!
綾菜とビデオ通話をしつつ、メイクに勤しんでいた。
「……んー、これで変じゃないかな」
『グッジョブグッジョブ。イイ感じじゃん。可愛い』
そうして、準備時間はあっという間に過ぎて行った。
今日は、水族館に行く予定だ。
「い、行ってくるね、あーちゃん」
『うん、頑張れっ。またのろけ話聞かせてな』
そう言って、綾菜との通話をきった。
家を出て、十数分。待ち合わせ場所にはすでに伊織がいた。
(……これでも、私二十分前に来たんだけどなぁ)
そう思いつつも、姫乃は伊織のところに駆け寄った。
「伊織くん、お待たせしましたっ」
「あ、ううん、ぜん、ぜ……」
伊織が固まって、姫乃が首を傾げた。




