表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/161

勇者ダリルの誤算③



 ダンジョンで、リザードマン・キングを打ち倒した俺たち【紺碧の輪】。

 そのリーダーである俺、ダリルは頭を悩ませていた。


「くそっ、松明が消えちまった」


 俺は足もとの水路に落とした松明を拾い上げるが、濡れていてもう使えそうになかった。

 洞窟の壁に生えた苔がうすく光っているのでなんとかまわりは見えるが、松明無しだとずいぶん暗い。


「どうする、ダリル。一度引き返すか?」


「でも、あまり時間をかけると他のパーティーに先を越されてしまうかもしれないわよ」


 どうする? ここまで来て引き返すのか?

 何か手はないか……何か光るものは……


 そうだ、あれだ。

 俺たちには、あいつがいるじゃないか。


「そうだ、あれがあった。ミカヤ、召喚魔法だ。あの光る羽の奴を出してくれ」


「ああ、ルシファーのことね。そうか、その手があったわ! よし、いくわよ。はああっ……!」


 よし、我ながらすばらしいアイデアだ。

 これで灯りの問題は解決だな。


 ミカヤが召喚石を手に詠唱を開始する。

 魔力が風を切って集まっていく……


「……我が名をもって命ず……黄昏に落ちたるもの、今ここに来たれ……」


 静まり返った洞窟の中に召喚の詠唱が朗々と響く。

 風の音がごうごうと唸っていた。


「……我が敵をその火をもって滅せよ……汝の名はルシファー……」


 10秒……20秒……

 俺はそれを黙って見ていた。


「なあ、ダリル。思うんだが……」


 ボーラスが耳元でぼそりと言った。


「なんか詠唱が長くないか?」


「た、たしかに……」


 もはや勘違いじゃないんだろう。

 明らかに詠唱がいつもより長い……なぜだ?


「……舞い降りよ。輝けるものよ……はああっ! 【堕天使召喚(サモン・ルシファー)】!!」


 召喚石がカッっと輝き、現れたのは堕天使ルシファーだ。

 光る翼が洞窟を照らしていく。


「待たせたねレディ。さあ、敵はどこかな? なにをすればいい?」


「なにもしなくていいわ。とりあえずそこにいてちょうだい」


「わ、わかったよ。レディ」


 たっぷりと30秒ほど詠唱して呼び出された堕天使は、ふわふわと空中に浮かんでいた。

 だがその光は相当なもので、あたりは昼間のように明るかった。


「おう、ずいぶん明るいじゃねえか!」


「これは良いアイデアね。さすがダリルだわ」


「お、おう、そうだろう? はっはっはっはっは!」


 仲間たちの賞賛の声に俺はまんざらでもなかった。


 まあ細かいことは別にいいか。

 要はサファイアクラーケンを倒せればそれでいいのだからな。


 

「よし、光は確保できた。じゃあリザードマン・キングの素材を回収するぜ!」


 俺たちは、倒したリザードマン・キングの解体にかかる。


「なあ、こいつはどこを持ち帰ればいいんだ?」


「うーん、私はこういうのわからないわ」


 おいおい、頼りにならないな。


 そういえば、前に誰かが言っていた気がする。

 リザードマン・キングの肝は、病に効く希少な薬の材料になるとか。 


 あれは確か、誰が言ってたんだったか……駄目だ、思い出せねえ。

 だがまあ肝を持ち帰ればいいのは間違いないだろうな。


「お前ら知らないのか? リザードマン・キングの肝は希少な薬になるんだぜ」


「なに? そうだったのか!」


「へえ、全然知らなかったわ。すごいわね」


 俺はリザードマン・キングの腹を切って、肝を取り出す。

 灰色の生温かい臓器が不気味に脈打ってやがる。


 よくわからんがこいつに薬としての価値があるのか。

 俺はリザードマン・キングの肝を、腰のアイテムポーチに突っ込んだ。


 こいつをギルドに持っていけばかなりの金になるだろう。

 思わぬ強敵だったがいい臨時収入になりそうだぜ。



「さて、先に進むとするか……うっ!?」


 い、痛てェ……!

 先に進もうと歩き出した時、俺の胸に鋭い痛みがはしった。 


 見るとリザードマン・キングに切り裂かれた鎧の間から、血がだらだらと流れてやがる。

 さっきまで戦闘で興奮していて気づかなかったが、結構なダメージを貰っちまっていたらしい。


 ちっ、最近はこんなダメージを受けることはなかったんだがな。


「おい、ナガ……」


 急に襲ってきた痛みに、俺は思わず声に出しかけた言葉を引っ込める。

 おっと、そうだった。あいつはもういないんだった。



 やれやれ、念のためポーションを買っておいてよかったぜ。

 俺はアイテムポーチから体力(HP)回復ポーションの瓶を取り出した。




この小説を読んで


「面白い」

「続きが気になる!」

「この先どうなるの!?」


と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

ブックマークもぜひお願いします。


あなたの応援が、更新の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ