アングリーバッファロー
俺が走り去るリーフを眺めていると、ダリルたち三人がやってきた。
「よお、ナガト待たせたな。どうした? また新人をいじめていたのかよ」
リーフの背中を指さしてダリルが言った。
「ははは! まあそんなところだよ」
「ナガトのやり口はエゲつねえからな。まったく気の毒な事だぜ」
「彼、泣いてたわ。ふふふっ可哀想にねえ、よほどひどい目にあったのね」
ダリルは壁のクエストボードに目をやった。
「それで、クエストはどうだ? もう決めたのか」
「ああ、近場のザハ草原のアングリーバッファロー狩りでどうだい? ここなら日帰りで行けるからね」
「悪くねえ。あいつらとろいから試し斬りにはもってこいだぜ」
ボーラスが武器を握りしめて気勢を上げる。
「決まりだな。じゃあさっさと行くぞ! くくっ楽しみだ……こいつの切れ味が早く見てみたいぜ!」
ダリルがエクスカリバーを手にニヤリと笑う。
俺たちは受付で手続きを済ませ、アングリーバッファロー狩りに出発するのだった。
ザハ草原は、アクトゥスの街から出て少し歩けば行くことが出来る冒険者には馴染みの狩り場だ。
広々とした緑が広がり、風が草の匂いを運んでくる。
「おい、いたぜ。アングリーバッファローだ!」
さっそく獲物を見つけたダリルが声を上げた。
木の影で草を食むのは、全長5メートルはある大柄な牛のモンスター【アングリーバッファロー】。
赤黒い毛皮が特徴的で草原の緑の中でよく目立つ。
相手も俺たちに気づいたようでこちらに向き直ると姿勢を低く構え、鼻息を上げながら地面を前足で蹴りつけている。
これは奴の突進の構えだ。
アングリーバッファローは機動力のある突進攻撃を得意としている。
さらに、突進すればするほど興奮し、体が赤くなって力が増すという特性も持っているのだ。
一旦勢いに乗られると暴れ回って手が付けられなくなるやっかいな魔物である。
うかつに初心者のパーティーが手を出せば全滅の危険もあるだろう。
「いくぜ! 俺の新兵器の威力を見な!」
「うおおお! 叩き潰してやるぜ!」
ダリルとボーラスが雄叫びを上げながら駆け出した。
対するアングリーバッファローも二人めがけて突っ込んでくる。
ここは先手必勝だ! 俺はバッファローに向けて杖を構えた。
「【鈍足】! 【重力】!」
猛烈な勢いで走り出したバッファローの動きは、途端にゆっくりとしたものに変わる。
ダリルたちはバッファローの突進をひらりと躱した。
「ははは! やっぱりアングリーバッファローは図体だけで動きはとろいな。これぐらい余裕だぜ」
「ああ、まったくだな。おらおら、俺が相手だ! かかってきやがれ!」
ボーラスは手甲で鎧を叩いてガンガンと音を出し、バッファローを挑発する。
「ブモオオオオッ!!」
「がはは! どうした、牛野郎。俺の動きについて来れないか?」
バッファローは何度も突進を繰り出す。
が、ボーラスはわざとギリギリまで引き付けてすべて躱していく。
やはり【スロウ】と【グラビティ】の魔法はこいつに有効だな。
「反撃だぜ! こいつをくらいな!! ぬおおおっ!!」
ボーラスはバッファローの突進を躱しながら、バッファローのわき腹に雷槌ミョルニルの一撃を振り上げた。
ズドンという強烈な打撃音。電撃がバチバチと音を立てる。
小屋ほどの大きさがあるバッファローの巨体が空中に軽々と打ち上げられた。
「とどめは俺に任せろ! うおおおおっ!!」
ダリルが地を蹴って跳躍する。
空高く振り上げたエクスカリバーが黄金に輝き、その刀身から青白い炎が柱のように伸びる。
ザンッ!!
振り下ろされた一撃はアングリーバッファローを易々と両断した。
ダリルが聖剣を鞘に納めると同時、バッファローの体はたちまち青い炎に包まれる。
そして、骨すら残さずに焼き尽くされてしまったのだった。
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