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武器スキル



 振り下ろされた杖は地面にぶつかる寸前で止められたのだった。


 俺はリーフの腕を掴みながら言った。


「リーフ、やめておけ。杖が泣いている」


 アレクは驚いた表情で言った。


「な、何だてめえは!?」


「俺はナガトだ。アレク、君の言うことは分かるが今日はもうその辺にしておいたほうがいい。俺たちは力の上下はあるけど、一応は魔物から人々を守るために戦っている仲間ではあるじゃないか」


「ナガト? 勇者のパーティーのやろうか。だがあんたには関係ないね。これは俺たちの間の問題だぜ!」


「やれやれ……血気盛んだね。ライバル同士競い合うのは大いに結構だ。君の気持ちは良くわかるよ、俺も似たような事はよくやるからね。だけど殺しあう敵同士ってほどじゃないだろ? あんまりやりすぎると君のためにならないぞ。今日の彼みたいに追いつめられると、人間何するかわかったものじゃないからね。適度に痛めつけては放すのがいい関係づくりのコツさ、そうだろ?」


「はあ、あんたも相当だな。もういい、今日は帰るぜ。じゃあなリーフ、負け犬野郎」


 そう言うと、アレクは踵を返して去っていった。

 リーフたちを取り巻いていた野次馬も興味を失ってそれぞれ散っていく。




「ううっどうしてこんな事を?」


 リーフが涙で顔を濡らしながら震える声で言った。


「決まっているだろ? 俺はその杖がもったいないって思っただけさ」


「……!! この杖って実は結構強いって事ですか?」


 リーフの表情が少し明るくなる。


「いや全然。こんな杖ではとても実戦には耐えないだろうね。特に、今回のイベントで高レベルの武器が多数配られたようだし、火力の高さを売りにしている魔法使いでは厳しいよ。まあ武器の性能としては見るべきところはないけど、幸いレアリティだけはそこそこ高いからね。他の武器に強化素材として餌にすれば、【武器スキルレベル】上げの足しにはなるかなって思ったんだ。折ってしまうなんてもったいないよ」


 俺が答えてやるとリーフは途端に怒ったような表情だ。


「な、何なんですか、あなたは!? いきなり現れて失礼な。何が武器スキルの餌だ、ふざけないでくださいよ!」


「ふざけている、か。リーフ、ひとつ聞くが君は武器スキルがどれだけ戦闘に影響するか知ってるのかい? 見たところ武器スキルをまったく上げていないようだがそれじゃあまともに戦えないぞ。無課金でもメインの武器ぐらいは上げられるだろ。何で武器スキルレベルを上げないの?」


 武器スキルが初期値では、その武器は本来の半分の力も出せないだろう。リーフは何でこんな武器を使っているのだろうか……


「それに、うわあ……よく見ると他の装備もひどいな。着けている防具のスキル構成がぐちゃぐちゃで、これじゃ何がしたいのか分からないよ。普通、魔法使いのクラスなら【詠唱短縮】系とか、【属性ダメージアップ】系とかで防具のスキルは固めるでしょ。君の防具は【斬撃攻撃力アップ】とか付いているけど、サブ武器で剣でも使うのかな? ずいぶんと変わったスキル構成だね、あまり見ないなあ」


 それを聞いたリーフは……どうしたのだろうか、顔を真っ赤にして叫んだ。


「う、うるさいなあ!! あなたの話なんて聞きたくないよ! くそっ何なんだ一体。助けてくれたと思ったら、あなたまでボクを馬鹿にするのか! 勘弁してくれ、もう散々なんだよ」


「やれやれ……ずいぶんと嫌われたものだね。なんだか君は軽く聞き流しているみたいだけど、こういう情報にどれだけの価値があるか知っているのかい? 俺がこの情報を得るために支払ったのは金貨10枚や20枚じゃきかないんだぜ。本来ならこんなにべらべらと話したりはしないんだ。まあ君が、あの受付嬢の言うような耳当たりの良い話だけを聞いていたいというなら別にそれは止めはしないけどね」


 リーフは目を丸くして答える。


「金貨20枚!? た、確かに聞いたことがない事だったけど、そんなにするんですか!」


「そりゃあそうだよ。なあリーフ、冒険者ってのは剣や魔法を振り回すだけの職業だと思ってないか? 冒険者として成功するつもりなら少しは本も読まないと。冒険者の戦いは情報が大事さ。新しい魔物も新しい装備もどんどん増えていっているんだぜ。今どんなクラスが強いとかどんなスキル構成がいいかとか、日々俺たちを取り巻く環境は変化してるんだ。まあ、君に教えたのはそれ以前の基本だけど、それを知っているかいないかじゃ大違いさ」


「そうだったんだ……ごめんなさいナガトさん。さっきはついカッとなってしまって。ボクのためを思って厳しいことを言ってくれていたんですね!」


「ああ、構わないさ。こっちもちょっと無遠慮に言い過ぎたよ。そこでなんだが、もしリーフが今後も冒険者を続けるつもりがあるなら良い事を特別に教えてあげるよ。火力が低くても、魔法使いなら簡単に狩れる魔物が何種類かいるんだ。そいつらに狙いを絞って毎日討伐するといいよ。魔力回復ポーションも持てるだけ持って行ったほうがいい。まああの味はなかなか慣れないとキツいけどね」


 俺がそこまで言うとようやくリーフに笑顔が戻ってきた。

 どうやら冒険者を続ける覚悟はあるらしい。


「へえ、その魔物なら見たことがあるけどあいつら魔法が弱点だったんですね! それならボクでもやれそうだ」


「討伐を続けて報酬を貰ったら金貨に変えてガチャの資金として貯めておくといい。でも、焦ってすぐにガチャを引いてはいけないよ。ガチャのピックアップで杖が来るまでは待つんだ。まあ、今の杖からすれば大きくパワーアップするのは間違いないから次に杖がピックアップされたらさっさと引いてしまったほうがいいだろうね。無事入手出来たら今の杖は強化素材にしてしまえばいいさ」


「そうか! よおし、なんだかやる気が出てきたぞ。なんだか今までバタバタと無駄に失敗ばかりしていたのが馬鹿らしくなってきましたよ。どうしてナガトさんみたいな人にもっと早く会っていなかったんだろう。もったいなかったなあ!」


「ははは! その意気だよ。リーフ、想像してみてくれ。君が冒険者として成功した姿を。抱えきれないほどの素材を持って、君はギルドに凱旋するんだ。周りから向けられる羨望の眼差しはそりゃあ凄いものさ。哀れなアレクはまた簡単なクエストに失敗して今日の日銭もないらしい。君が銀貨を1枚床に投げてやると飢えた犬のようになって飛びつくのさ。君が受付嬢の立場ならどっちが男として魅力的か、わかるよね?」


「……!!」


 決意に満ちた表情で立ち上がるリーフ。

 その顔には流した涙の跡が光っていた。


 俺はリーフの目を見据えて言った。


「さあ、涙を拭けよ。君の手にある物は何だ? 聡明な女神様はいつだって一番必要な物を与えてくれるものさ」


「うううっ……!! ありがとうございますナガトさん! ボク、強くなるよ!!」


 リーフはくしゃくしゃになったティッシュで顔を拭いとる。


「あ、そうだ、最後にいい情報がある。ここだけの話なんだがガチャは週末に引くとレアな装備が出やすいって噂を聞いた。狙ってみるのもいいだろうな」

 

「す、すごい! 良いことを聞いた! よし、こうしちゃいられない! さっそく狩りに行ってくるよ。うおおっやるぞ!!」



 リーフは鼻息を荒くしながらクエストを受注し、勢いよく駆けていくのだった。

 やれやれ、調子のいいことだ。



 ちなみに週末にガチャのレアが出やすいというのは嘘だ。


 俺は曜日ごとにガチャの出現確率に変化がないか検証をしたことがあるのだが、結果はどの日に引いてもほぼ全く同一の確率だというものだった。

 

 なのでまったく根拠はないのだが、まあ自分が有利だと思い込んでいる方が彼もやる気になるだろう。




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