時を越えた再開
続きです、よろしくお願いします。
━━数日前。
ドアの森に、敵が無尽蔵に現れて来る秘密が有ると睨み、アネスとラミカはその調査へと向かうのだが、当然、森の入り口には敵の見張りが居た。
「ラミカ、右の見張りを頼む私は左の敵を倒す」
「分かりました」
ラミカは木陰から飛び出し、右の兵へと短剣で斬り付ける、左側の兵が駆けつけ様とするが、アネスの弓で頭部を打ち抜かれ、敢え無く地面に倒れる。二人は見張りの死体を草むらへと隠し、森の中へと侵入していった。
この最初の見張りを倒し、不用意に森へと入ったのは失態だった。二人は、森へと入って行く姿を後ろから見られて居た事に、気が付いていない。
「やはり、森へと来たか!」
物陰に隠れて様子を見ていた者が姿を現した。
この男、七夜城から地上へと降りてきた一人、第四騎士団長カシュー。
彼の後方には、数十の兵達が控えていた。
二人を追撃する合図を振ると、死霊兵達は無言で移動を始め、森の中へと二人を追っていった。
「馬鹿者が、二人だけで来るとはな」
二人を侮蔑する台詞の後に、カシューも森の中へと入っていく。
彼は、首都制圧の指揮を急遽中断し、一団から離れて二人を追って来た。
アネス達は、森へと移動する途中で擦れ違った敵の一団に、もう少し警戒し配慮すべきだった。あっさりとやり過ごせたと安心し、森へと向かったしまった事が二人の大きな過ちと成る。その一団の中に、首都へと向かう七夜城の将が同行して居り、二人に気が付いたのも不運ではあった。
そんな事とを、露とも知らない二人は森の奥へと侵入していた。
二人は、駐屯地の様子を山の斜面から偵察している処。
「駄目だな……、駐屯地は敵に完全に制圧されている」
「ですね……、全滅の前に撤退出来たのかしら?」
「うーむ、それは……
「あっ! 、アネスさんアレを……」
ラミカは小さな動きで、駐屯地の奥を指差した。
奥からは、数千の兵団が敷地内へと移動してくる光景が見えた。
「首都へ向かう軍勢か……」
「敷地の向こう、奥から出てきましたけど……?」
ラミカはこの森へ初めて来た。駐屯地を抜けた先、そこには以前に何が在って、今はどうなっているのかを、彼女は知らない。
アネスは、簡単にラミカに説明してやった。
「あの先は、以前は魔物の巣窟で奥には旧開拓村が在った。大分前になるが、ある事件解決の為に魔物は一掃され、あの広い土地と開拓村には、駐屯兵と学者達が常駐していた。しかし……、多分全滅してるだろうな」
「敵の全軍は、その場所に集結してる?」
「多分、そうだろう……。けど、他にも何か在りそうだがな」
「何かとは、何です?」
「あの広い場所ですら、これまで襲撃してきた敵からしたら狭すぎる」
「なる程……、行きましょう。行かないと何も分かりません」
「うむ、だがこの場所から抜けるのは無理だな。別の場所から抜けよう」
アネスはラミカを連れて、中継基地の方へと移動を始めた。
二人は、自分達が後方から見張られている事に未だ気がついては居ない。
「流石にここからは、突入を避けたか」
カシューは二人が十分離れたのを確認すると、連れている兵を進めた。だが、彼自身は駐屯地へと向きを変えて歩いて行く。そこには、数名の騎士に囲まれた男が居た。カシューの足は、その男が居る場所に向かっている。将と思しき男は、彼の気配を察知して振り向いた。
「カシュー、首都制圧の指揮をしている筈ではないのか?」
その男は、カシューが自らに課せられた役割を放棄しているのでは無いかと、顔をしかめた。だがカシューの方は、そんな事には一切気もとめずに答える。
「そのつもりでしたが、途中で鼠を見つけまして追って来た処です」
「鼠だと……、何者だ?」
「異世界人の取り巻きの内、女二人がこの森の調査に来た様ですな」
「この森の……、秘密に気が付いたというのか?」
カシューと会話をしている男は、第ニ騎士団長ボルグ。
立場は、カシューより上に位置している騎士である。
「いや……、もしそうなら全員で来るでしょうな」
言葉遣いは丁寧で、表情もにこやかに笑っている。
たがこの男、腹の中ではボルグを亡き者しようと画策していた。
そんな計らい事は、表には決して悟らせない強かさを持っている。
「只の偵察に来ただけか……」
「ええ、間違いないでしょう」
「貴様……、何故私に知らせてきた?」
ボルグの方も、カシューが自分の地位を狙ってる事くらいは、当に気が付いていた。偵察を独りで始末せず、駐屯地へと戻って来た。自分にも知らせたのは、何か企んでの事では無いかと疑っている。
「手柄の独り占めは、いけませんからなぁ」
「嘘吐きめが……、本音は別に在るのではないのか?」
「いえいえ、滅相もないです」
カシューは、ボルグの詮索に全く動じる事無く、他意は無いと掌を振って返答する。その態度と言動を、ボルグが信用した筈が無いが、侵入者は早々に対処する必要が有る。
「まあ良い……、敵の隠密行動を見逃さなかった事は、評価しておこう」
ボルグは、部下の数名に命令を伝えた。
この場所に居る騎士団は、死霊兵では無い。
「向こうの死霊兵を撤退、侵入者の女を広場へ誘い込み、始末する」
「はっ!、では術者に死霊を退かせます」
部下の騎士は、命令を実行する為に術者の下へと、その場を走り去る。命令を受けた術者は、死霊を帰す為の詠唱を唱え終えると、中継基地に居た死霊兵たちの姿は、地面へと消えて行った。
その場をアネス達が、目撃できていたなら敵に気が付かれたかもと、警戒を厳にしたかもしれないが、残念ながら彼女達が来る前に死霊兵は消えていた。
「では、私は後方から侵入者を追い込みます」
「うむ、仮にも異世界人の取り巻きだ。貴様もあまり気を抜かぬことだ」
「はい、十分に心得ていますとも……」
彼は、上の相手に対して敬意を示し深々と頭を垂れた。
しかし……。
カシューの計画は、侵入してきた者を前後から挟撃する。その時、ボルグに死霊を嗾け彼の動きを封じ、彼女達に彼を倒させる。その後で、ゆっくりと侵入者のふたりを片付ければ良いと。
実際この計画は、失敗する事は無く完璧だ。
死霊兵を、操る術者もボルグも部下も全て、地上へと降り立つ前に、カシューの部下と入れ替わっている。万が一にも、失敗する可能性は無い、本来は、異世界人とも直接対決の際に実行す予定だった物が、多少早まっただけの事であった。
偽の部下を連れ、駐屯地の奥へと向かうボルグは移動して行く。
それを後方から見詰めながら、カシューは呟く。
「ふふふ、もうすぐ貴方は終りだ」
不適な笑いを残し、カシューは彼女達の後方へと急いで向かった。
そして暫しの時の後、実際この企ては成功を収めた……。
偽の部下は、挟撃を開始すると彼から離れた。死霊兵から動きを封じられたボルグはカシューの裏切りによって、アネスの矢で討ち取られた。その後は、圧倒的な死霊の数の前に彼女達二人は、奮戦するが、最期にはカシューによって包囲され、二人は殺された……。
これが、本来この地で起きた事実だ。
だが、歴史の時事が変わる事も……。
━━━ 中継基地、二人が到着直後……。
既に、二人が中継基地へと辿り着いたときには、死霊兵は消えている。
兵が消えた理由を、二人は知らない……。
「馬鹿な……、敵が一人も居ない?」
「いや待って、あそこ……、移動してます!」
ラミカが指差す方向、数名の兵が奥へと移動して行くのが見えた。
その方角には、旧開拓村が在る。
「神殿前の広場に向っているのか……」
「後を追いますか?」
「無論だ、そこに何かが在るのは間違い無さそうだ」
敷地内は、荒らされ建屋刃は跡形も無く破壊されている。伏兵が隠れている場所は、この場所には無いと思われた。それでも二人は周囲に警戒しながら、敵兵が消えた方へと移動していった。
二人が、神殿前の広場を視認する辺りに来た時。
後方から、死霊兵達が姿を姿を現し襲って来た。
敵兵に後方から襲われ、前方へと走る二人。だが、広場へと追い込まれると、石柱の影からも敵兵が飛び出してきた。
「しまった……、罠にはめられた!」
「最初から、この場所へ誘いこむつもりだったのね」
二人の前に、ボルグが姿を見せた。
「この場所に、二人だけで来たのが間違いよ!」
「貴様っ!、七夜城の者か?」
そう言うが早いか、アネスはボルグに矢を射る。
頭部へと正確な一矢は、彼の剣によって両断され地面へと落ちた。
「ほお、良い腕だ。だが惜しい……、そんな物私には止って見えたわ」
「くっ……」
ラミカは、腰から短剣を抜き身構え、アネスは二射目を構える。数体を倒す事は容易な事、だがその後は続かない事は二人にも分かっていた。前後から敵の挟撃を受けその数、あまりに多勢に無勢である、とても弓と短剣だけでどうにかなる数ではない。
勿論、解放された力が有るのなら別だが……。
ボルグが死霊兵に、二人を包囲させた。そして彼がにじり寄った時、カシューの顔が怪しい笑いを浮かべ、己の企みを実行に移そうとした……。
その時に、異変がその企てを中断させた。
空間から雷撃が走り、強烈な風の渦が周囲の物を弾き飛ばした。
それは、半包囲した死霊兵を大きく後退させた。
「な、なんだこれは! 、何が起きている?」
計画を中断させた現象を、カシューは睨みつけている。
その風の障壁は、ゆっくりと収まりを見せる。
そこに現れたのは……。
「ユキヒト! 、何処からここへ?」
神殿の近くで死霊兵に襲われた俺達は、突然異変に巻き込まれた。
強烈な目眩の後、俺達は意識を失ったのだが……。
再び、意識が戻り目の前に風景が現れたと思ったら。
「へ? 、アネス?、ラミカも……居る?」
「皆……、どうやってここへ?」
ラミカが俺達に質問しているが、それは俺達の方が言いたい。
何故二人が……、目の前に立って居るのだ?。
二人は、二日前に死んだ……。
「二人とも生きてる?、そんな筈……二人の死体を私達は確かに……」
「冗談はやめてくれ……、私達は死んでなんかいないぞ!」
この場所で起きている事に、敵味方の双方が戸惑いをみせ動きが止った。
その中で一人、冷静に言葉を投げてきた来た者が居る。
「詳しい事は、後で……。今は、この敵を排除する事が先かと」
ズグロの一言で、俺達は状況を把握しようとした。
良く理解は出来ない……。が、敵の集団が、何故か生きている二人を襲う所に俺達は現れた。この場所に居る全ての敵を蹴散らし、殲滅する必要に迫られている。
その事だけは理解できた。全員が揃っている状況では、この程度の数は何の障害にも成らない。
「とにかくだ……、この敵を全部倒してしまうか!」
「そうね……、後で頭を整理しましょ!」
「貴様ら! 、何奴だ?。何処から現れた!」
アネス達を襲っていた敵、その一団の将と思える騎士が俺達に叫んでいる。
その問いには、こっちの方が聞きたい位だ。
「俺達は、森の敵を排除して首都を取り返す為に来たんだよ!」
「き、貴様達! 、異世界人と皇女達かぁ!」
森の秘密を暴き、無尽蔵に現れる敵軍を排除する。その目的達成ために、その根源があると目される場所、忘れられた神殿へと足を運んでみた。その場所に到着すると、ハルが突然異様な行動を見せる。直後、意識を失い気が付くと、俺達の前には死んだ筈の二人の姿が在った。
「俺達にも良く理解出来ないが……」
「この場所の敵を全滅させて、首都を取り返して見せるわ!」
ロゼが一歩前に踏み出して宣言した。
ありがとうございました。




