森林で
続編です、よろしくお願いします。
俺が、ドアの森へと来たのは二度目。
前回は、邪龍討伐でこの地へと訪れた。
七名揃った処で、森の奥へと進撃……。
とは、成らなかった。
「え……、二人は来ないのか?」
「わしは、塔から出れぬと言うたろうが」
「私も、今回はパ━ス!」
ラケニスが塔から出れないというのは、以前からの事で仕方が無い気はするが、ラクテルまで同行してくれないのは誤算だ。正直、俺はかなり彼女に期待していた。前回の魔族との戦いを見ているだけに、彼女の手助けは大きな戦力アップなのだ。そう喜んでいただけに同行を拒否されたのは、痛かった。
「この前、私が手を出したのは、神魔が絡んでいたからよ、今回は……、まあ人じゃないとも言えなくは無いけど、大昔の人同士の争いの続きでしょ、私は関知しないわよ」
っと、あっさりと同行を拒否された。
それでも、俺達に力を取り戻させる事だけには、協力してくれただけマシと思うしかない。多少の代償は払わされた感は残るけど……。
「いいわ、私達だけでやりましょ」
「うーん、しかしラクテルまで来てくれないのは……」
「あぁら?、貴方……そんなに私が欲しいのぉ?」
ラクテルは妖しげなポーズで、俺を誘惑しているかの様な台詞を言った。
即、俺を後ろへと引っ張りマリネが前に出た。
「駄目です! 、もうこれ以上誘惑しないで下さい!」
「やめんかラクテル、小娘達をあまりからかうでない」
「あら、姉様だってけっこ本気だったくせに……」
「た、戯けっ! 、森までは転送してやろう小僧達も早く行け」
魔女二人が、どこまで俺を想っているのか?、考えると怖い気がして頭から切り放す事にした。なにせ二人ともとんでもない年齢だ、俺がまともに相手に出来る筈が無い。
ラケニスは森の外ではなく、森林の内側へと俺達を転送した。
御丁寧に、藪のど真ん中に俺達は姿を現した。
「ぺっぺっ……、凄いなこの藪は……」
「主殿、敵に見付からぬには、致し方ないかと」
「そうです……、我慢しましょう」
だが、藪といっても木々の間に在る、そこらじゅうに枝やらなんかが飛び出ている。彼女達の薄い服の一部はそれに引っ掛かり破れていく。軽鎧はまだ良いが、イリスはローブ姿でその破れた箇所から……。
「ちょっとユキヒト! 、変なとこ見ないの!」
「ば、馬鹿、わざとじゃない!」
「二人とも、大きな声を出さないで下さい……」
マリネから注意されてしまった。
せっかく、見付からない様な場所に居ても、大声でばれては元も子もない。
俺達が森の外側に転送された場合、森の入り口で、当然敵の見張りから発見される。そんな場所で戦闘なんか始めたら、森の中から増援が現れるだけでなく、首都へ報告が行く。民衆を人質に取られている為、盾にされると俺達はお手上げになる。
敵に察知される事なく、森の中を移動しなくてはならない。
俺達が最初に目指したのは駐屯地、幸いな事にこの森の事はマリネが詳しかった。従兄弟が駐屯地の隊長で、彼女自身もこの地へと派遣されていた。
「止って……」
先頭を行くマリネが全員を止めた。最初の地点からかなり進んできたが、どうやら目的の地の傍へと来た様だ。ここからは、更に慎重な行動が要求される。
高台から駐屯地を見下す位置に居る為に、敷地内の様子は良く分かった。 建屋は全て倒壊して延焼している、生き残っている者も居ない。
「残念だけど……」
「予想していたことです……」
「だが、予想していたより敵が少なくないか?」
「そうね……、もっと居ても不思議じゃないのに」
上から見渡しても、敵の数はせいぜい五十居るくらい。首都を襲撃してきた数からは遥かに少ない、駐屯地に居ないとしたら、敵は何処に集まっているのか?。これまでの戦闘から予想される敵の数は、最低でも五万以上はいる筈なのだ。
「絶対この森に何か秘密有るわね、なんとしても探さないと……」
俺達が首都を奪還するのは容易いが、首都の防衛機能は無いと言っても過言ではない。七日目に、天空の城へと突入した処で、留守の首都を再び押さえられるのは火を見るより明らか、それまでに森の方の軍勢を潰しておくしかないのだが、何処からやって来る?。
バキッ!
俺達の後方から、音がして全員が身構え振り向いた。
そこにいた者は……。
「やはり、皇女殿下達でしたか!」
「あなた……、隊長さん無事だったのね?」
「はい! 、私達は…
会話の途中で、マリネが隊長に抱きついた。
死んだと思われた従兄弟が生きていた。
「オイオイ、抱き付く相手が違うだろ」
「馬鹿っ! 、死んだとばかり……」
隊長は、抱き付くマリネを優しく離して、俺達を誘導し始めた。
「ここでは……、どうぞ仲間の居る場所に案内します」
「全滅していなかったのね」
「かなり……、仲間を失いましたが」
森が敵に占領された際に、避難する場所が在るらしい。俺達は隊長から案内されて、避難所へと向かう事に成った。一人で移動するなら良いのだろうが、都合七名が、敵に察知される事なく占領された森を動くのは、至難の技だった。見張りのスキを衝いて素早く移動を繰り返し、ようやくの事辿り着いた。
「おお!皇女殿下だっ! 、良くぞ御無事で!」
「貴方達こそ、よく生きていてくれたわ!」
避難所に到着するや、生き残った駐屯兵達からの歓待を受けた。
避難所は、天然の要害に邪魔された位置に在る。ちょっと見た程度では、この場所に人が隠れているのは分からない。有事の際には、何時でも使える様に整備していたと隊長から聞いた。
「ですが、本当にこの場所を使う事に成るとは……」
「そうね、こんな場所使わない方がいいに決まってるわ」
だが、使う時が来てしまった。
そして俺達は、彼等との再会を喜んでばかりも居られない、落ち着いた処でお互いの情報交換を始める。先ずは彼等からの話を聞くと、七夜城が天空に現れた日、ほぼ同時に森の奥から敵が現れ不意を衝かれ、中継基地へと撤退をせざる得なかったようだ。
その中継基地も、程なく敵から包囲され抜け道を通り、全滅だけは回避できたらしい。首都の様子が気には成るが、完全に森を制圧され迂闊に移動する事が出来なかったと言う。少人数で敵の様子を偵察し、スキを窺っていた時に、俺達を発見して接触してきた。
「首都はどうなりました?、宮殿は?陛下達は無事なのですか?」
今度は、首都の状況を隊長に伝えた。
皇王、皇后は攫われた。抵抗を続けていたが、首都も敵に占拠されたと伝えると、避難所には暗い空気が一気に流れた。皇女ロゼは無事だが、首都を落とされ皇王も敵の手に有る。事実上、国を滅ぼされたに等し。
「我々は、負けたのですか……」
「まだよ! 、必ずこの窮地を覆して見せるわ!」
「ですが皇女殿下、どうやって?」
「先ずは、この森の秘密を暴いて炊き潰す! 、何か手がかりは無い?」
俺が隊長に尋ねると、彼は襲撃の時の様子を必死に思い出そうとしていた。腕を組み、目を瞑り眉間にしわまで寄せて、暫らく沈黙した後に口を開いた。
「そう言えば、連中は忘れられた街の方からやってきました」
「どうして、外側じゃなくて内側から襲撃されたわけ?」
「そうです……、それで我々は完全に不意を衝かれました……」
邪龍討伐後は、忘れられた街にも守備兵は常駐している。駐屯地の敷地からは、やや離れてはいるが現在では、駐屯地の一部といっても良い。その場所から敵が現れた?。
「これ以上ないくらい怪しいな」
「そうね、間違い無く、何か在りそうだわ」
「ですが、ロゼ様……、敵の目を掻い潜るのは位置的に無理が……」
前回、あの街に近づいた時は、中継基地から迂回した。駐屯地から進むか、中継基地を抜けた先から迂回するか、そのどちらかのルートしかあの街の傍には行けない。
「隊長、中継基地は?」
「同じく、占拠されたままです、見付からずに通り抜けるのは不可能かと……」
「困ったわね、戦闘は現地以外では避けたいわ」
忘れられた街、旧開拓村へのルートを図っている時に、隊長が進言した。
「今回も、我々が囮になります。皇女様達は、そのスキを衝いて抜けて下さい」
「そんなの無理よ、貴方達、二十名程度しか居ないじゃない……」
「その分、動きやすいとも言えます、中継基地なら十分撹乱できます」
「だけど……」
確かに、その人数でも撹乱は可能だが、俺達が中継基地を抜けた後、隊長達が無事に退散できる確立は低い。いや、おそらくは逃げ切る事は不可能だろう、特攻隊と同じだ決死の突撃に成る。ロゼにそんな命令を出せる程の非情さは、おそらく無い。
肝心な事がもう一つ、旧開拓村が目的地とは限らない。彼等の犠牲で突破出来たとしても、そこが森の俺達が捜している場所でなかったら、彼等は全くの無駄死に成ってしまう。
「皇女殿下……、迷っている時間はあまり無いはず!」
ロゼは、思い詰めた表情で思考を巡らせていたが、隊長に返事を返した。
「分かったわ……、でも私達が抜けたら即、撤退よ!。分かった?」
「了解です、我々も出来るなら死にたくは無いですからね!」
賭けとも言える作戦が決った。
これから森に夜が訪れる。夜の暗がりの中、森を明かりを点けて移動する訳にはいかない。四日目の朝を待ち、俺達は中継基地を抜け、敵が集結していると思われる旧開拓村へと目指す。
有難うございました。




