代理
続きです、よろしくお願いします。
首都ハインを占領され、俺達は抜け道を通り辛くも脱出に成功した。
そして、抜け道の出口の海岸では、第二の魔女ラクテルが俺達を待っていた。彼女の話を聞くと、ラケニスにこの苦境を脱する手立てが有るらしい。俺達六人は、ラクテルに連れられ急ぎ塔へと行く。
塔へは入ると、何時もの皮肉めいた言葉を聞かされた。
「五千年の間に、この場所に主等ほど来た者は居らぬわ……」
「ごめんなさい……」
「別に謝らんでも良い、一人で居るよりはマシじゃ」
「しかし、あれほど守れと言われていたのに、俺は……」
「まぁ、今の主に何を言うても慰めにもならん……」
俺達の間を抜けて、ラクテルが前に出てラケニスの横に並んだ。
「姉様、本題に入った方が良くないかしら?」
「そうじゃの……」
本題とは、いま圧倒的な不利な状態を覆す手立ての事か?。この状態を脱しきれない、限り七日目に夜叉姫が結界を破る刀を携えてきても、俺達には動きようが無いのだ。最低でも首都を奪還していないと、七夜城の皇王と、首都の民衆を人質にされることになる。
まずは、首都を奪還した後に七夜城へ乗り込み、救出する。
その手立てが有るなら、早く聞かせて欲しかった。
「要するに、主らに力を取り戻させる」
「え……、どうやって?」
力を取り戻すと言う事は、新しく二人の女性から俺が愛されなければ成らない。そんな相手を今から捜して、更に愛される等、それこそ時間が足りないではないか?。女なら誰でも良いという訳にはいかない、ラケニスは何を考えているのか?。
「待ってラケニス、七人揃わないとダメというのは、私達も理解しているけど、誰でも良い訳じゃないでしょ?、今から捜すと成ると……とても間に合うとは思えないんだけど?」
ロゼの問いかけに、ラケニスは薄ら笑いを浮かべ答えた。
「無論じゃ、誰でも良い筈が無かろう」
「ですが、ラケニス様……、そんな女性をどこで捜せば?」
今度は、マリネがラケニスに聞いている。
その横で、ズグロが片手で顔を抑えた、彼女は思い当たるのか?。
「捜す必要なんて無いわよ」
「うむ、ここに二人揃って居るじゃろうが!」
「なっ! 、ちょっと待て……まさか」
魔女二人の返事を聞いた途端に悪寒が走った。
ラケニスが何時もの戯れをやるときの顔付が、顕になった。
「わしら二人が、七名に入るという簡単な話じゃ」
「ちょっ……、マジデ?」
「嘘だろ……、本気かよ?」
「ふふ、やはり……、想った通りでしたわ」
「はぁ……やはりそれですか」
どうやらズグロは確信していたらしく、大きく息を吐いた。イリスも、この状況を覆す手立てとして、二人が加わると言う事を、予想していた様だが、それ以外の者は、全く予想だにしていなかった。
特に本人である俺としては、どちらの魔女も、通常の人間とは思えない年齢である。五千歳の魔女に愛されるだと?、正直、凄い抵抗感が生まれた。それは、俺だけじゃなくズグロとイリスを覗いた三人の女性が、露骨に顔を歪めていた。
「小僧……なんぞ不服でも有るのか?」
「い……、いや不服はないけどですね……」
「あらぁ、私等では恋人に不満かしら?」
ラクテルの恋人という台詞にマリネが反応した。
「ちょっとお待ち下さい……、こ、恋人って、御歳をお考え下さい……」
「あらぁ?、恋に年齢は関係無いわよ?」
「うぐっ、それは……、そうですけどぉ」
「流石に、お二人の年齢では、ユキヒさんと年齢差有り過ぎです」
なんと、ハルまでが露骨に嫌悪を示した。
彼女達の頭の中からは、今措かれている状況が飛んでいるらしい。最初の七名で交わされた暗黙の了解は、例えこれまで助けてくれてきた女性でさえ、排除しようとしている。
この時に、別の悪寒が俺を襲ってきた。
それは、太古の昔にニクスを愛した男が、それまでに愛されていた女性から殺された事を思い出したせいだった。欠員を埋める為に、二人が手を上げた位で露骨に嫌悪を示している。
もしこれが、俺から近付いて行っていたとしたら?、やはり俺も裏切り者と言われ、殺されるのか?。実際には、そんな事には成らないと想うが、一瞬それを想像して寒気がしたのだ。
「黙れ小娘共っ! 、他に手立てが有ると言うのか?」
「それはっ、無いけど……」
「有りません……」
「…………」
流石で有る、迫力で彼女達が太刀打ち出来る筈が無い、簡単に一蹴されて、言葉を続ける事が出来なくなっている。三人が黙ってしまうと、ラケニスの口が大きくつり上がり、再びあの顔付になっている。その顔を確認した時に、三度目の悪寒が走った。
「皆、不服は無いな?」
「止む得ないわね……」
「では、小僧、こっちへ来るが良い」
しぶしぶ納得した彼女達を余所目に、ラケニスは俺に傍に来るように指示した。
確かに、いまの状況を覆すには二人の魔女を受容れるしか無いのが事実であった。俺は、彼女の指示通りに二人の間に立った。
「わしらが七名に加わる儀式じゃ……」
「なぁぁっ!、私等の前でぇ!」
「いやっ!」
「嘘っ!」
「あらあら……」
ラケニスの女性とは思えぬ力で、顔を引かれ…た。
次の瞬間に、俺はラケニスと唇を重ねていた……。
唇から、全てを吸い取られるような感覚に襲われ、地に足が着かなくなった。すると今度は、ラクテルが口を開いた。
「姉様、次は私の番ですわよ?」
「ふむ、そうじゃったな、ほれ……」
ラケニスは唇を離すと、俺の身体を今度はラクテルへと預けた。全身から力の抜けた俺は、二人の魔女に弄ばれるかの様に、自由にされていた。
ラクテルの顔を近付き、唇が重なった。
口の中に柔らかな感覚が広がり、俺の意識は朦朧としている。
只、二人との行為は不快ではなかった。寧ろ、此の世のものとは思えぬ快楽が、おれの全身を突き抜けて行った。ラクテルが唇を離した時に、俺はその場にしゃがみこんで、立ち上がれなかった。
「ちょっと! 、ユキヒトに何をしたの?」
「しっかり、ユキヒト様っ!」
座り込んだ俺を、ロゼとマリネが抱え上げた。
「心配しなくても、何も悪い事はしていないわ」
ラクテルが笑いながらに答えると、ハルが口を開き訪ねていてる。
「でも……、こんなにグッタリして……」
「ふっ、小僧には、ちっと刺激が強すぎたかのぉ?」
「姉様、本気で唇を重ねたでしょ?、そりゃぁこの子には強すぎますわ」
「よく言うわ……、お主の方が余程強く吸っていたではないか」
「あら?、そうでしたか?」
「もう……、これ以上はさせないわよ!」
「戯けが、そんな事はするつもりはないわ」
二人に抱えられた俺は、椅子へと腰を下ろしようやく落ち着きが戻って来た。
顔を覗き込み、俺の様子を窺っているマリネ。
「ユキヒト様、本当になんともありませんか?
「ああ、ちょっとびっくりして気が動転しただけだから……」
まさか、快楽で力が入らなくなったなんて事を、口が裂けても言うわけに行かなかった。恐るべきは、伝説の魔女のキス。これ本当にその気に成ったら、男を虜にして、操れるのではないか?。いや、過去にそんな目に遭った男が居ても、何ら不思議ではない。
それ程の快楽が全身を駆け抜けていた……。
だが、これで七名が揃った事になるのか?、アノ行為で俺が二人に愛されたと成るものなのか?。
「ってか、……あんな事をする必要有ったの?」
「ないな!」
「ありませんわねぇ」
「なぁああっにぃ?」
ロゼの行為をやる必要が有ったのか?、その追求にアッサリと答えた。
「只の余興じゃ、久々に若い男を味合わせて貰ったわい」
「ふふふ、本当……、何時以来かしら?」
「あんたらぁ……!」
「小娘……そう怒るでない、二度とはせぬ」
「そうよぉ、貴女達みたいに気軽に出来ないんだから、偶には良いでしょ?」
二人の魔女の台詞を、顰め面で聞いていたロゼは、訪ねた。
「これで本当に力が戻っているんでしょうね?、嘘だったら……」
「それは信用して良い、主でも感じているじゃろ?」
ラケニスの言った事は、事実だ。それは、本気で気分を害していたロゼの体が、攻撃色の水晶の色をした姿に変わっている事で証明されていた。これで、首都に居座っている連中を排除する事は、容易になった訳だが、それだけでは事は収まらない。
「アネス達が遣り残した事を、俺達が代わって終らせよう!」
「そうです……、ドアの森の異変を解明して……」
「二人の無念を晴らさないとね!」
「今なら、首都を陥落させて森は手薄じゃろう」
ラケニスの言葉に、皆が納得したようだ。
「ドアの森へ行きましょ!」
力を取り戻した俺達の反撃は、ドアの森から始まる事に成った。
そこでは、思いもしない事が起きる事を、俺達はまだ知らない。
有難うこざいましたー




