焦燥
退院して、初の投稿です、よろしくお願いします。
二日目の早朝から続いていた襲撃は、一端は収まったかに見えた。だが、二人が森へと偵察に向かった後、又も首都は襲撃を受け始めていた。やはり三箇所を攻めて来られ、残り少ない戦力を三方向に振り分け対処していくしかない。
「本当にこいつらどこから湧いて来るのよ……」
ロゼは草原方面からやって来る敵軍を門の上に立ち、そこから大規模範囲の火焔で焼き払いながら、押し寄せる軍勢が収まらない事にイラ立ちを見せ始めている。
「やはりドアの森から来てるのでしょうか?」
マリネは大きな範囲攻撃の代わりに、敵軍の進撃を遅らせる魔法でロゼが攻撃をやりやすくサポートをしているが、やはり敵軍の多さに辟易としている様子だ。これまで戦ってきた来た相手は、強力な敵一体がほとんどだ。
いや……、つい最近雑魚の大群で全滅しかけていたか。
圧倒的な戦力を持っていても、果てし無く続く雑魚の大群にの数の前には、体力の限界が有る生身の身体では、何時かは押しつぶされる時が来る。
それは、前回の戦いで明らかになっている。
「偵察に向かった二人の、報告を待つしかないのか……」
海上からの敵には、ズグロ一人で対処できている、龍波で巨大な波を起こし敵勢力を港に近寄らせない。今は押し返すだけで良い、荒地方面からの敵には正規軍が当っている。負傷者はハルがすぐさま回復を掛け、少ない戦力が絶え間無く戦える様にサポートを行い、なんとか持ちこたえている。
しかし……、いずれは終わりが来る。
その前に森で起きている事を一刻も早く見つけ出し、止めるしかない。
夕暮れが来ても敵の襲撃が終る事は無く、それは真夜中近くになりようやくその姿を消した。首都で暮らす民衆は、敵兵が街中へと雪崩れ込んで来る事を頭に描き、おびえ恐怖していた。正規兵も俺達も、もう何日も耐えれそうにない事が眼に見えて明らかになっている。
敵の襲来が来なくなって、一人、又一人と、俺とロゼに元に五人が集まって来た。流石にズグロは平気な顔をしているが、他の四人は焦燥しきっているのは明らかだった。
「アネスさん達、大丈夫でしょうか?」
「森に為れている二人だから、ヘマはしないと想うけど……」
「しかし、既に森全体が敵の陣地と成っている可能性もあります」
「そんなぁ……、幾ら為れていると言っても、そんな場所に二人きりでは、まさか捕まってるなんて事にでも遭っていたら……」
焚き火を囲み、偵察に行った二人の安否を気遣っていたが、捕虜に成っている可能性は薄いかと想える。もしなっていたら、とっくに盾にされているのではないか?。
二人が森へと向かった後に、敵の襲来は何度も起きている。無事で居てくれるなら何かを掴んでいる事だろう、明日にでも首都へと戻って来る筈で、その報告を聞いて森へと向かう事になるだろう。
疲れも有った、俺達はあまり会話を交わす事も無く、街の見張りは衛兵達に任せ、何時の間にか眠りに落ちていた。
早朝、一人の衛兵がロゼを起こしにきた。
半分眠気顔で聞いていたロゼが、急に血相を変え衛兵と走り去って行ったのが見えるが、俺も疲れのせいで再び目を閉じ眠りに着いた。
起きて……、ユキヒト!!
弐度寝しているところを、ロゼに起こされる。
衛兵と一緒に走って行った彼女が戻って来たのだ。
「ロゼ……、どうかしたのか?」
寝起き直後で、ぼっとしている顔にロゼの顔が映る。
その顔には、真っ赤になった瞳が見えた。
「何があった!」
彼女は無言で指を指した。そこには毛布に包まれた二つの物体が見える。
俺は立ち上がり、嫌な予感とと共に毛布を捲った……。
そこには、変わり果てた二人の亡骸が横たわっていたのだ。
「なっ、なんだこれ……、誰だよこれは?」
「アネスと……、ラミ……うぅ……」
「いや……、アネスさん、起きて……」
異変に気が付いたハルとイリス、ズグロも傍に掛け付け二人の亡骸を前に絶句した。俺を含め全員が、悪い夢を見て居ると感じていた。それも、時間の経過と共に現実の物として認識し始め、動く事の無くなった二人に皆が涙を堪える事が出来なかった。
「わああああああああ!! 、嘘だ! 、これは夢だ!」
「ユキヒト……、落ち着いて!」
「落ち付けだ?、これが落ち着けるかぁぁああああ!」
二人の死が現実の物と認識出来た時、俺の中で再び闇が生まれた。
どす黒い瘴気にね似た霧が俺から発散し、辺りを包み始める。
「コロス……、アイツラミナゴロシダ……」
「いけない主殿!」
「ズグロさん、ユキヒトさんを!」
「承知!、主殿……、御免!」
ドズッ!
ズグロから龍気を叩き込まれ、俺は気絶した。
「ロゼ様……、私達どうすればいんですか?」
「私だって……、どうしたら良いのか聞きたいわよ……」
それからどのくらいの時間が過ぎたのか……。
俺が目を覚ました時に、イリスが傍に居た。
「イリス……俺はどうなったんだ?」
「あ……、目を覚ましましたね……、ズグロさんに眠らせて貰ったんです」
眠らせたとは、柔らかい言い方だ、俺はズグロから気絶するほどの気を叩き込まれたのは、直ぐに分かった。おそらくは、二人の死を認識した時に我を忘れ、暴走したのだろう。
「二人は……
「私が、お二人の亡骸を魔法で元の姿に戻して封印しています」
「そうか……、元の綺麗な姿に戻してくれたのか、有難う……」
「あんな魔法……、使いたくありま……」
彼女は、最期迄言葉を続けることが出来ずに、声を立てず泣いていた。
俺の涙は気絶していた間に、彼果てたのか?、彼女の様には流れる事が無かった。只、悲しみだけは重たく圧し掛かっているのは実感していた。
もう二度と、傍に居てくれる女性を喪う事はしないと誓った筈なのに、二人も同時に喪ってしまった。首都が襲われようと、全員で行くべきだったと今更後悔した。しかし、もう遅い二人が戻って来ることは無くなってしまった。馬鹿者と呼ばれる事も無い、翼で飛翔する事も出来なくなった。
「ユキヒト……、大丈夫?」
「この俺が……、大丈夫に見えるか?、二人も死なせてしまった」
「しっかりしなさい! 、貴方がそんな事でどうすんのよ!」
「魔法で、二人を生き返らせる事は出来ないのか?」
小説や創作物の中に良く出てくる、蘇生魔法が有るんじゃないのか?。
前にハルが言っていた、赤龍に殺されても蘇生してあげると。
「なぁ、蘇生の魔法が有るんだろ?、それで二人を生き返らせてくれよ」
俺の悲痛な願いを聞いていたロゼは、首を振りながら答えた。
「これだけ時間が経っていては……、。禁呪の反魂法は、ただ生き返るだけで別人だし、その方法を知っている者は今は居ない……、二人を生き返らすのは無理なのよ、残った私達でどうするのか考えましょ!」
ロゼだって両親を奴等に攫われ、心が弱って居ない筈は無い。仲間を喪って哀しくない筈は無いのに、俺を立て直そうとしてくれている。頭では分かっている、理屈ではしっかりしろと理解はしている。
傍に居たなら、絶対守れた自信はある。
力の解放が切れる距離に、二人だけで行かせてしまった事を、悔やんでも悔やみきれないのだ。出来るなら時を戻し、やり直したい。
バシッ━!
「ロゼ……」
「何よ……、私の惚れた男はこんな弱い男だったの?、前にも言ったよね私達はゲームをしているんじゃないと。誰かがね、志半ばで倒れる事も覚悟してたはずじゃない?、しっかりしろユキヒト!」
涙を浮かべながら叩かれた痛みは、心まで響いた。
何時の間にか、全員が俺の周りに来ていた。
「主殿、ここで心折れたら、それこそ敵の思う壺です」
「アネスさん達の分も、私達が力を合わせないと……」
「ユキヒト様、私達がこれまで以上に、頑張りますから、元気を出して下さい、そうでないと御二人にも恥かしいですよ!」
確かにその通りで、二人を喪った事でくじけてしまえば、俺達には勝利は無い。たが、又も俺達は力の解放を失ったのだ、敵の襲来を昨日のように圧倒して撃退する事はもう不可能だ。
「皆もう、薄々は気がついて居ると想うけど……」
「ええ、あの力は七人居て初めて使えるのよね?」
「そう……言う事だ」
「そんな事、今までの何倍も頑張れば良いだけですよ?」
イリスがあっけらかんと答えた。
俺の想っていた以上に、彼女達は強い様だ。いや、哀しさを強さに転換しようとしているのか、どっちにしても女性が立ち上がったのに、俺が何時までも不甲斐無い姿を晒すわけにも行かない。
「はは……まいったなぁ……、女ってこんな強いのか」
「当然! 、二人分穴埋めしなきゃいけないしね」
「うん、二人の死を悼むのは、あいつ等をけちらしてからにしよう」
「良かったぁ、ヨキヒト様いつもの調子に戻りましたね!」
正直、空元気というのが正解だ。
喪ったものは、簡単に埋まる様な物では無い。
寧ろ俺達は、いやこの首都を守りきる事が出来ない確立のが高い。
敵襲━━!
各方面から、敵の襲来を告げる伝令が走ってきた。
七夜城が現れて三日目の敵襲が始まった。
森の状況も把握する事は出来ずに二人を喪った。
圧倒する事が出来ない俺達が、果たして何時まで持つのか?。
三日目の死闘は、確実なものになった。
有難うございました。




