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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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三番目の魔女

続きです宜しくおねがいします


 俺達が飛ばされた国はルベール。

 丘から見えていた街の名は、テグーだと分かった。


 帝国領から更に二つの国を越えた先にある、小さな国家の街。アネスが街の売店で買った地図を見ても、本当に小さな狭い領地だった。しかしだ、ハイデリアから見たら三つの国を越えた先がこの国な訳で、足の早い地竜で帰ったとしても、二週間は掛かる距離らしい。


 「地竜の代金は……、とても払えない」

 「私も……、もってませんよぉ」

 アネスとハルはほんの少し、お金を持っていたが地竜を買うには程遠い。

 

 「遠距離の連絡便の竜車も、一応は有る様なんだが……」

 「でも、国境までの連絡便て確か……」

 

 数も少なく、完全に予約制でその日に行っても、先ず断られるらしい。帝国領まで行けば、何とか帰れるがそこまで三度乗り換える事に成る。


 これもやっぱり……、お金が無いっ!。

 

 考えてみたら……、此れまで料金を払った記憶が無い……。何度か野宿しているが、それ以外は何処かの屋敷が拠点になっていた。お金持ちの女性と居たせいで、此れまではお金の心配なんかする必要も無かった。


 とんだ処で、その付が廻ってきた━━。


 「食料は山犬が居るのが見えたから、困る事は無いが問題は……」

 「距離と、国境を越える時に如何するかですよねぇー」

 

 ハルの困惑した顔から、越境が簡単に出来ない事が見て取れた。

 街が見えた時には、これで帰れると安心したのが甘かった。


 有る意味黒衣より手強い━━!。

 お金という絶対的な物の前に、俺達は道を阻まれていた……。

 

 

 

 ━━元大公の屋敷。


 ユキヒト達三人はルベール国に居た。

 彼等が、想定外の物……、お金が無い事で立往生している時━━。



 「さて……、敵は何処に居るのかしら?」

 

 第一の魔女リリカと同じく、ラクテルも攻撃的な性格をしてる?。

 なんか……、ラケニスが物凄くまともな魔女に思えてきたっ!。


 「私達は、書庫で調べたい事が有るので、ラクテルは……

 「あっ! 、まだ居ない訳ね、じゃ屋敷の周り散歩してくるね」

 「くっ……」


 攻撃モードから、瞬時に散歩モードに転換して、さっさと庭を散策……。

 三魔女って……、伝説ではかなり怖い感じに語られているけど、実際に会って見たら、イメージと全然違う。

 

 取り合えず、ラクテルは放置して、私等は執事に話を通して書庫へと行く。

 だけど、その前に寄り道しないといけない。


 「皆は先に屋敷に入って頂戴、私はちょっと寄り道してから行くわ」

 私は、皆の返事を待たずにその場を走り去った。


 「ロゼ様は、何処へ……?」

 「そっか……、ラミカは知らないよね、ロゼ様は多分……伯母の墓へ」


 庭の隅に作られた伯母様の墓……。

 「伯母様……、ごめんね書庫を荒らさせて貰います……」 


 墓の傍に立った私は、一言だけ話してその場を去った。屋敷に入ると、執事が私が来るのを待っていた様で、皆は先に広間へ通して、休憩をしている事を告げられた。


 「私も広間で皆と一緒に居るから、書庫の鍵を取って来て貰える?」

 「はい、皇女殿下は皆様と御一緒にお待ち下さい」

 

 私と会話していた執事は、若い頃からもう何十年も、ずっとこの屋敷で働いている。書庫の鍵と言っただけで、一番古い場所の事だとあの執事は、気付いてくれる筈。


 執事と別れ皆の居る広間に入ると、丸いテーブルを囲んでいた。

 

 「ロゼ様、このお茶凄く美味しいです」


 逸早く、私に気が付いたマリネが声を掛けてきた。

 空いた席に座ると、メイドがお茶を運んでカップに注いでくれる。

 ハーブの良い香りが、鼻を擽った。


 私達が、呑気にお茶を飲んでいる時━━。

 屋敷の庭では、ラクテルと黒衣の者が戦闘状態に突入していたが、私達はそれに気が付きもしなかった。


 「ふふ、やっぱり居たわね……ゴキブリが!」

 「チッ、誰だ貴様っ!」

 

 ラクテルは腰から武器を取り出して、軽く空へと振った。

 空中でうねりながら鋭い風斬音を聞かせた。


  ヒュン、ヒュン、ビシィッ━!


 最後は地面を叩く音、彼女の持つ武器は魔法鞭だ。

 黒一色の服装に、漆黒の鞭……、そして臨戦態勢に成った途端……。

 綺麗な青色の瞳は、紅玉へと変わった。

 

 「私はラクテル、第三の魔女って言う方が分かるかしら?」

 「第三の……、魔女だと、その魔女が鞭とは笑止なっ!」

 「あら……、本当に?でもこれね……笑えないわよ!」


 そう言った瞬間、彼女の手首が動き鞭が黒衣へと走る、瞬時にそれを避ける。だが鞭は勢いを殺さぬまま、切っ先を転換し黒衣を裂く、呻く黒衣を更に針の様に狙っていく。


 掌から障壁を放ち、何とか凌いだ。


 「まだ……、笑えるのかしら?」

 「ふんっ、今度は此方から行かせてもらう!」

 

 黒衣は両手掌を前へ突き出すと、その周囲に計十個の黒球が浮かび上り、高速で弾け飛んで彼女を狙い来る。ラクテルは横へとステップを踏み、一部を鞭の切っ先で弾くが九個の黒球は、彼女の鞭を振るいながらの、地を蹴り跳ねる動きに追い付いて来る。弓の様に柔軟に仰け反る、華麗な回避運動にも追従して狙ってくる。


 「魔法使いを辞めて、曲芸士にでも成ったらどうだ?」

 ラクテルの素早い縦横無人の回避を見て、黒衣が感想らしき言葉を吐いた。

 それに対して、彼女の方は笑いを浮かべ返答した。


 「あら嬉しいわ……、転生する時はそうしようかしら」

 「是非も無い、お勧めするぞ!」

  

 高速で彼女を狙い付き纏う黒球に、一度も身体に触れさせてはいない。見事な回避運動、そして未だに息を切らせても居ない。此処に黒衣が居るから、彼女は攻撃を受けて見えるが、居なかったら彼女は黒い球で、遊んで居る様にも見える。


 「素晴らしい動きだが、そろそろ見飽きたぞ、終わりにさせて貰う」

 「あらぁ……、もう終るの?残念ねぇ」

 

 何処までも余裕を見せるラクテル……。

 その彼女に、不適な笑みをフードの下に浮かべ。

 

 黒衣は先の黒球を回避している彼女へ向けて、更に両手掌を彼女に伸ばした。両腕に二重の黒球のリングが新たに浮かび上がる。黒衣はその計二十個の黒球を、回避運動中の彼女へと弾いた!。


 幾つかの黒球を鞭で消失させていたが、それでも残り五つは彼女の周囲を舞っている。そこへ追加の二十の黒球が、彼女目掛けて超高速で一斉に襲い掛かった。


 超高速の黒い散弾は、無残にも美しい身体を貫き崩した……筈だった。

 黒い散弾は一つ残らず、黒い塵と成って消えて行った。


 「なにぃぃ! 、アレを全部防いだのかぁっ!」


 彼女の握る鞭の切っ先は、数え切れない程の針と成って増えていた。

 その細い無数の針の一本でも、一撃必殺に値する魔力の針であった。

 

 「私……、しつこいの嫌いなのよね」

 

 彼女の台詞が終ると、無数の針は一本の棘と成り黒衣へと伸び貫いた。身体を抜けた切っ先は、再び無数の針と成り反転して、背中から貫き返って来た……。


 「がはあああっ……!」

 

 勝利を確信した黒衣は一瞬で、その反対の立場と成り黒い霧と成って果てた。

 その一部始終を見ている者が、森の木々の枝に居た。


 仲間が滅し去られるのを確認した後、反転しその場を去ろうとする……。

 

 「愚か者、相手は第三の魔女だ。侮りすぎだっ、報告せねば…成らぬな」

 「あらっ、誰に報告するのかしら?」

 

 黒衣すら気が付かぬ瞬速の移動で、背後へと現れたラクテル……。

 その手には、十分に威力見せられた鞭がその黒衣の目に映った。


 「ぬおっ! 、何時の間にっ!」

 

 今の自分のやるべき事は、仲間への報告だ。即座に判断したその黒衣の者は、瞬間移動を決め遥か上空へと、飛んで逃げた。鞭の射程はどんなに、長くても高々十数メートル、この上空には及ばない。


 その黒衣は、そう思って跳躍し逃げたのだが。

 彼は、考え違いをしている、彼女の武器は魔法鞭であり通常とは違う。


 上空へ飛んだ直後に、次元の狭間へと逃げ込めば逃げれた筈だが……。

 

 既に遅かった……。

 地上より黒い棘が超速で迫り、足に巻き付き地上へ引き摺り下ろされた。

 黒衣は、上空から地面へと叩き伏せられた。

 

 「ぐはあっ!……」

 「さっきの奴には聞きそびれたけど、さぁしゃべって貰うわ。ニクスは森の何処に居るのかしら?」


 「それを正直に答えると思うのか?古き魔女よ……」

 

 黒衣の言葉には、例え滅される脅迫を受けても、秘密を守る。

 そういう意味が込められている、当然それは彼女も承知だ。


 「そうよね……、彼方達は口を割らないわよね」

 「我等の大儀は、誰にも……があぁぁぁ」

 「知ってるわ……、だからこうするのよ、嬉しいでしょ?」

 

 黒衣の言葉を遮った物は、ラクテルが伸ばした掌がこめかみに当てられ、その指が食い込んだせい。通常の握力なら、造作も無く耐えれた。彼女がやったのは、指先から魔力を伸ばし脳へと食い込ませる事、脳から直接記憶を奪う事であった。


 勿論、痛みを伴わない方法が普通だが、彼女は黒衣にはそうはしなかった。

 残酷であるが、強烈な痛みを直接感じる手法にした。


 人間であったら既に発狂している。

 黒衣の大儀への強い忠誠が、発狂を抑え痛みのみ感じさせる。


 「別に彼方に口を割らす心算なんて、微塵もないのよ、直接脳に聞くから」

 

 その時の彼女の静かな物言いと、黒衣の目に映っていた顔は別物に見えた。後ほんの少しで、脳からニクスの居場所を引き出せる、が、彼女は飛び退いた。


 直後、その黒衣の身体は破裂して霧と成って消滅した。

 ラクテルは即座に、その犯人目掛け針を伸ばしたが、一瞬の差で逃がした。


 「あら……、上手に逃げ切ったわね」

 「伝説の古き魔女よ……、我等が皆そいつ等の様に、弱いと思わぬ事だ」

 「まぁ、面倒なのが出てきたら、異界人に任せるわ」

 「ふっ成る程……、では又そのうちに……」


 「あー惜しかったなぁ、もう少しだったのに……」


 ラクテルは今の黒衣が完全にこの場から消え去ったのを確認したら。

 鞭を腰に戻して、屋敷の方へと歩き出した。


 「暴れたら……、お腹すいたなぁ屋敷で何か食べなきゃ!」


 



有難うございます

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