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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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異国

続きです、よろしくお願いします

 元大公の屋敷の庭での事……。

 第三の魔女ラクテルと、黒衣の死闘が繰り広げられていた事等、知り様の無い俺達は、お金が無い為に一般的な移動手段が取れず、港町テグーで停滞している状態が続いていた。


 このまま、何もしない訳には行かない━━。


 「ちょっと街中を周って来る、何か良い手が見付かるかもしれんしな」

 

 石段に座っていたアネスが最初に立ち上がり、街を回ってくると言うと、ハルも立ち上がり一緒に行くと言う、それじゃ俺もと、脚の砂を掃いながら立ち上がる。


 長い下り坂を、二人が歩いてるのを後ろから眺めていると、ゾーイの街が浮かんで来た。賢者からラケニスの事を聞いた後、ネーブルへ向かう為に、この三人で森林の街を旅立った頃が思い出された。


 それ程長い月日が経ってもいないけど。

 ちょっと懐かしい気持ちになった。


 「この三人ってさ……」

 「ん、三人がどうかしたのか?」

 アネスは、ちょっだけ振り返って返事をするが、足を止めず歩いている。彼女の横を歩いているハルも、それに吊られて振り向いた。


 「この三人で、旅始めたんだなぁって……」

 「あ……、ほとんだ! 、偶然ですねぇ」

 「うむ、あの時はこんな事に成るとは、想像していなかった」


 ネーブルへ行って塔の魔女に会えば、元の世界に帰れる。

 彼女達、ふたりとはそこでお別れに成る筈が、奇妙な事に巻き込まれながら一旦は離れた。結局、二人は戻って来る事に成った。


 そして今、気が付いてみたら三人一緒。

 こんな遠い場所に飛ばされてしまったが、又、三人で歩いている。


 「腐れ縁とは、よく言ったもんだなぁ……」

 「貴様は……、私達と一緒に成ったのが不満か……?」

 「え……、そうなの?ユキヒトさん」

 

 悪い意味で、言った心算は無い。

 だが、アネスには少し誤解をされ、それがハルにも伝染した。


 「それは誤解だぁ、そんな意味で言って無い。只……」

 「只……何だ?」

 「只、何ですか?」

 

 二人同時に聞いてくる、良いコンビだ全く……。


 「不思議な縁だなと……、思っただけ」

 あの日……、アネスにあそこで逢う事が無かったら。


 「あの森で、偶然にも居合せなかったら、賢者へ会わす事も無かったか」

 賢者に会いに行く事が無かったら……。


 「だったら━━、私にも逢えませんでしたねっ」


 二人の声が、普通に戻った。

 「確かに、一度分かれた後に戻ったしな」

 「本当に、腐れ縁ですね━」

 「だろ━━」


 そこで一旦会話が途切れたが、気分を害しての事では無い。

 二人は前を向いて歩いている状態だが、ご機嫌な顔をしている事だろう。

 

 それは、アネスが知らない鼻唄を口ずさみ出した事と、両腕を後ろ手に組み、軽やかに歩くハルの姿。それを見ていたら、容易に判断が出来たからだ。


 俺達三人が、坂を半分ほど下りた時に、下から人が走って来た。


 「急がなきゃ……、急がなきゃ━━」

 っと、呟きながら俺達の横を走り過ぎて行った。


 「あの人……、偉く慌ててましたね、何か在ったのかしら?」


 気の優しいハルには、知らない人でも気に成って振り返っている。まぁ、アレだけ息を切らせ走り去っていった事を考えたら、普通に大事が起きて急いでいる事は想像できた。こちらも大事の真っ最中であり、女性一人が走り去った程度を、何時までも気にしても居られず、俺達は直ぐに忘れ坂を下っていった。


 街中をグルグルと渡り歩いて、一軒の店の前で足を止めた。

 その店の前には、張り紙が張っていた。


 【薬草は現在品切れ中に付き、買い取ります】


 「ふむ……、地竜は無理だが、宿代には成りそうだ」

 俺達には、三人の宿代すら無かった……。


 「私、聞いてきますね━━!」

 

 ハルが店の中へ詳細を聞きに入って行き、再び戻って来た。


 「私達が、眼を覚ました森の奥に生えてる薬草が品切れで、買取中ですって」

 「薬草の生えていそうな場所なら、見当が付く。行ってみるか……」


 何時も、森の中を散策している彼女が居ると、こう言う時に助かる!。何とか、宿で泊まれる事には成りそうだ。ほっとした俺達は早速、元居た森の中へ薬草を探しに向う、ついでに山犬を狩って肉と皮を売り、旅費の足しを稼ぐ事にした。




 「おかしい……、山犬の姿が見えない!」

 

 多分、薬草は森の奥に在る池か湖、沼地の辺にある筈と、奥へと入って居るのだが。途中で狩る筈の山犬処か、他の動物の姿すら全くと言って確認できず、アネスが不思議がっていた。


 「山犬が居ないのが、そんなに変なのか?」

 山中や森に詳しくない俺や、ハルには良く分かっていない……。


 「いや……、他の動物の気配すら見え……



 きゃあぁ━━━っ!



 そんなに離れていない場所から、女性の悲鳴が響き渡った!


 「こっちだっ!」

 アネスは即、方向を見定めて走り出し、俺達も続く。

 草木を掻き分け、声の聞こえた場所へ辿り着いた……。


 巨大な熊が女性を今にも襲いそうな光景が飛び込んできた。

 

 「動物が消えたのは……、こいつのせいか!」

 

 身の丈は四メートル、いやもっと有りそうな奴が女性を襲っていた。

 女は、悲鳴を上げたが恐怖でその場から動けずに居る。

 

 その体躯から、矢を数射した処で怯みそうには無い、俺にはこの場では使え無い刀のみ。治癒士のハルに攻撃魔法は無く、女性を救う方法はアレしかない。


 「アネス……!」

 「うむ、承知したっ!」


 アネスの肩に手を当てる、一瞬アネスはビクッと震える。

 構えた弓に、白銀の矢が現れる━━。

 

 「い、いや……、だ、誰か……、助けて」

 口腔から涎を垂らし……、巨大な熊は女性にその極太い筋肉の腕を振り……。

 女に触れる前に白銀の矢が貫き、太い筋肉もろ共、腕を吹き飛ばした。

 

 グオオオオオオ━━!

 

 此方へ顔を向け、襲い来る素振りを見せるが、二射目の白銀の矢を受け巨大な頭部も、胴体から消えてなくなった。


 「白銀の……矢?」


 命が助かった事を、夢の様に捉えていたのか……、只一言だけ呟いた。

 俺達は、彼女の傍に駆け寄り無事を確めた。


 「おい……怪我は無いのか?」

 その時、俺はすぐに気が付かなかったけど、ハルは違った様だ。


 「あれ?、この人さっき走り過ぎた人じゃないですか?」

 「え?」


 ハルに言われて良く見ると、確かに街中で、俺達の横を走り去って行った女性だと分かった。だが、武器も持たない女性がたった一人で、何故こんな場所に居るのか?。


 そう言えば、かなり急いでいた様だが……。 

 ようやく、話が聞けそうな程度に、その女性も落ち着きを取り戻した。

 アネスが危険な森へと一人で入った理由を聞いた。

 

 「お前武器も無しで、こんな場所に如何して?」

 「私の、御主人様が御病気になられて、街に買いに行ったのですが……」


 病気になった主に、飲ませる薬を買いに街まで行ったが、売り切れていた。それで、薬を作る材料の薬草を採りに森へ入ったが、熊に襲われ死にそうに成っていた。


 っと、言う事らしい。

 俺達の目的も同じであり、彼女を一人で行かす訳に行かず、俺達が一緒に付いて行く事にした。それに地元の人間であれば、薬草の正確な位置を知っている為、時間の短縮にもなる。彼女の案内で迷う事無く、薬草を手に入れる事が出来た。


 お互いに、薬草を必要な分だけ手に入れ、森の入り口まで一緒に行動した。

 そこからは、彼女とは行き先が違う為、別れる事になる。


 「あの……、本当に有難う御座いました。」

 「気をつけてね、じゃあ俺達はこれで……」


 薬草を売りに街へと向かう俺達を、暫らく見送った彼女だが。坂で見せた全力疾走を、再び披露して走り去って行った。


 街の入り口に差し掛かった辺りで、アネスに一言皮肉めいた事を言われた。


 「ユキヒト……お前、本当に女性絡みで何某かに、巻き込まれるな」

 「ふふふ、本当におおいですよねー」

 「ひでぇ……」


 二人に、そう言われ笑われた。

 女絡みで、何か起きるのは昔から続いている事で、今更……。

 

 この世界に来てからは、命の危険に曝される事ばかり続いているが、それ以上に大切な人達に逢えた事が、俺的には嬉しかった。


 俺達は、森で採取した薬草を売り、出来るだけ安い宿を探した。





 屋敷裏庭での戦闘、それを離脱した黒衣は仲間の所へ、戻って居た。


 「二人やられた……」

 

 報告を聞いた黒衣達は、想定外の事態に偉く慌てている。余りに早く八名が揃い、見張りをしていた仲間が倒されたと、勘違いをしていたからだが……。


 「こちらの予想より、随分早く集結してしまったか……」

 それを聞いた報告者の黒衣は、首を振って否定した。


 「殺したのは……、第三の魔女ラクテルだ!」

 「己っ、何故古き魔女が動いたのだ……」

 「分からぬ……。だが、第二の魔女が、余計なマネをしたのかもしれん」


 それは当っていた。塔から動けない自分に代わって、分断された者達が再び結集出来るまで、その失われた戦力を補う為に、第二の魔女を呼び寄せた。死んだ第一の魔女リリカを含め、三人の中では、一番の若さでは有る。だがそれは、一番弱いという意味とは重ならない、寧ろ一番アグレッシブで、戦い難い相手かもしれなかった。


 現に、ふたりを苦も無く倒して、三人目も危うかったのだ。

 積極的に襲ってくる彼女は、性質が悪い、分断された事で計画が進め易く成る筈が、黒衣達にとっては逆に仇と成りかねなかった。


 「この場所は、まだ見付かっていないが……」

 「連中が、嗅ぎ付けた場合には、今居る物だけでやってくるか……」

 「これは、もう一つの計画に変更も、已む得ぬか」


  黒衣達は、姿をけして何処かへと散って行った。



 一方、元大公の屋敷では。


 「ええ! 、裏庭で今、黒衣と戦ってきたぁ?、マジで……?」

 「うん、一人逃がしちゃったけど、二人は始末してきたわよ」


 黒衣を倒して来たと、報告を受けている処だった……。

 涼しげな顔しながら、お茶を飲み始めた彼女を見ると。

 三人の黒衣を相手に、掠り傷一つ負っていない彼女の姿に、驚愕した。


 「やっぱり……、第一の魔女と同類だぁ!」

 ロゼは率直な感想を口にした……。




 



有難うございました

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